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システィアーナの婚約者

14.誰を指名する?

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 フレキシヴァルトも勿論アレクサンドルも、それぞれの学友側近候補としてつけられたエルネストとユーヴェルフィオも、忙しい身だ。
 特にユーヴェルフィオは、アレクサンドルの執務に付き合った後は、領主代行として自領での管理業務が待っている。

 当然、いつものようにシスティアーナは固辞しようとした。

 が⋯⋯ アレクサンドルは引かなかった。

「ダメだよ、顔色が悪いのは確かなんだ。どこかで倒れていたらと思うと、この後の公務にも身が入らなくなってしまうよ。
 こうして見てしまったからには、なかったことには出来ないね。
 お姫様は、手を取られて付き添われるのと、抱き上げられるのと、どちらがお好みかな?」

 声を大にして言いたい。どちらも御免です、と。

「ここには、4人、それなりに力のある男性がいる。誰を指名するのかな?」

「ですから、わたくしは大丈夫ですと⋯⋯」

「お勧めは、既に妃のいるフレックか、ユーヴェ、次点でだけど」
「なんで僕なの? 妃がいたらダメなんじゃ?」

 フレックの抗議へにっこり答えるアレクサンドル。

「妃がいるからこそ、人目についても婿候補として見られない。公爵を継ぐユーヴェもね」

 そういう見方もあるのか。当然、王太子であるアレクサンドルも、婿の候補に入るはずがない。

 納得しかけたフレックだったが、エルネストの言葉に考え直す。

「妻君のある男性と親しくして、不貞を疑われたらどうするんですか」

 それもそうかもしれない。アナだって、自分が他の女性を抱きかかえたと聞かされたら、嫌な思いをするだろう。

アナが聞いたら、傷つくかもしれないな」
「相手がシスティアーナ嬢で、体調不良であったと、当然一人ではなくエルネストも一緒だったと言えば、解ってくれるとは思うけれど、確かに聞いていい気はしないだろうね?」

 当然だ、第一自分の目の前で、他の男性に触れさせるものか。という心の声が透けて見えそうなエルネストに視線をやりながら、アレクサンドルは続ける。

「なら、やはりここは、わたしヽヽヽの出番だね」

 言うが早いか、すっと横に立ち、緊張に冷えた手を取り、震えそうになる腰に腕を回し、まるで夜会でダンスを踊るように寄り添った。





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