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不思議なダンジョンの奥には

よん。『地中の湿気が滲み出る苔生した岩肌、カビ臭い淀んだ空気』──ダンジョンだなーって感じになってきました

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     🐿

 それまでは不思議な魔法生物とか閉じられた空間とか、隠れていると思われる錬金術師の手札がいっぱいだったけど、ベヒモスを斃して以降は、普通のダンジョンだった。

 地中の湿気が滲み出る苔生した岩肌、カビ臭い淀んだ空気。
 呼吸に悪そうだけど、ロックストーヴ山の時と同じようにチットちゃんがカビやよくないものが私達の鼻や口に入らないよう、防護領域セイフティエリアの防御幕を張り、チルちゃんがカビやよくないものを浄化しているらしい。

 階段を下りたすぐはカビ臭かったけど、今では感じない。

「毒ガスマスクが要らなくて助かるよ」
〈いつでも任せるにゃ〉

 防護領域セイフティエリアの範囲内に居る時だけ、チルちゃん達が仲間と認識しているメンバーには、ニャーニャー鳴き声がちゃんと言葉に聞こえるらしい。

 出て来る魔物も、普通に巨大な蟲や獣、妖魔なんかで、むしろフィルタさんにはつまらないくらい。

「私も、メイスとかで応戦した方がいいかな」
「コハクちゃんはそのままでいいのよ。ちゃんと、カーバンクルちゃん達がやってくれてるでしょ?」

 そう。おチビちゃん達は、私のまわりをチョロチョロしながら、火を放ったり風を起こしたりして、フィルタさんの心を動かさない雑魚モンスター達を斃して遊んでいるヽヽヽヽヽ

 生まれたばかりのおチビちゃん達にまで、レベルを抜かれていた。
 ランクにいたっては、生まれつき、幻獣で生物の頂点に近い存在だ。


 この階層に降りてからは、袋を抱えた魔族や人や生き物を閉じ込める生きた瓶や坪は、ひとつも出て来ない。

「追い越したってことはないよね?」
「相手もベヒモスを斃せなくて、あそこに閉じ込められてて、今は出て行ったって事?」
〈でも、瓶の中の魔導の糸は、この先に繋がってるにゃん〉
〈さっきより気配は強くなってるニャ〉

 なら、ちゃんと近づいてるのかな。

「ダンジョンのレベル自体は大したことないみたいだし、サクサク行きましょう」

 私でも斃せるかもしれないような弱々っちいものは、チルちゃんの【威嚇】で出て来ないし、そこそこのものは、おチビちゃん達がやっつけてくれてるので、早々とフロアボスの元に着いた。




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