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チーム再び!!──コハクちゃんを中心に
じゅうさん。『石畳を進み、橋を渡ると、ほぼまばらに木が生えているだけの草原となる』
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🏞️
石畳を進み、橋を渡ると、ほぼまばらに木が生えているだけの草原となる。
「この先は、本当に伯爵家のマターハウスの範囲なんだ。今進んでるこの道も、もう、伯爵家の私有地だよ」
カイルロッドの案内に、周りを見る。広い。山や街は遠く、のどかな草原を進むのは、私達の馬車と、空をゆく鳥、時折姿を見せるジリスや野ねずみくらいだった。
「秋になれば、狐狩りや穴熊狩りなどが、ここでよく行われるんだよ」
カイルロッドが目を細め、林の方を見て、そう言った。
王都の天領での狩りより、獲物も豊富で広さもあり、ここの方が盛り上がるらしい。
「天領だと、魔法を使って、獲物を追ったり仕留めたりするのも遠慮がちになるしね。思いっきり猟ができる方が盛り上がるのは仕方ないね」
確かに。天領で派手に魔法を放つのは躊躇われるだろうな。
「今はシーズンオフだから、森の管理人や使用人も含め、伯爵家の人間しか居ないはずだよ」
風致林の陰に、屋敷が見え隠れするようになった頃、馬車は石畳の道を外れる。
「どうやら、この先の林に行くようだね。探索や戦闘の準備をし直さなくても、このまま進んで大丈夫かい?」
「はい。私は、持ち物や消耗品はすべてこのポーチの中に入ってるので、足りない物は都度補填してますから大丈夫ですよ。恐らく、みなさんも同じですよね?」
「まあね。私も、コハクちゃんのおかげで空間拡張収納袋には困らないから、常に必需品は揃えてあるよ」
「コハクちゃんのおかげ?」
「まあね、前回のクエストの報酬が、クエストの役に立つものばかりだったから」
「コハクちゃんが居なかったら、全員生きて帰れなかっただろうしね。コハクちゃんのおかげだよ」
「⋯⋯そんなに?」
「もお、みなさん、言い過ぎですよ。チルちゃんチットちゃんが頑張ってくれたからですよ。私じゃありません」
「前にも言ったかな、妖精達を有効かつ効果的に使うのも、コハクちゃんの冒険者としての力なんだから、誇っていいんだよ」
「そうそう、さすがに冥府の王なんて出て来た時にはもう帰れないと思っちゃったわよ」
「ィ⋯⋯冥府の王?」
「おかげでこの先、保管場所も盗難も心配はないからな」
「⋯⋯⋯⋯」
カイルロッドが口を挟めずに困惑している。
あまり吹聴してまわることでもないが、コハクの功績として非公開ってわけでもないから、口止めや解説はあえてせず、返答だけしながら、カイルロッドの前でペラッと喋ったアネッタにキツめの視線を送っておいた。
彼女は肩を竦めただけだった。
馬車は、足を止めることなく林へ向かっていた。
石畳を進み、橋を渡ると、ほぼまばらに木が生えているだけの草原となる。
「この先は、本当に伯爵家のマターハウスの範囲なんだ。今進んでるこの道も、もう、伯爵家の私有地だよ」
カイルロッドの案内に、周りを見る。広い。山や街は遠く、のどかな草原を進むのは、私達の馬車と、空をゆく鳥、時折姿を見せるジリスや野ねずみくらいだった。
「秋になれば、狐狩りや穴熊狩りなどが、ここでよく行われるんだよ」
カイルロッドが目を細め、林の方を見て、そう言った。
王都の天領での狩りより、獲物も豊富で広さもあり、ここの方が盛り上がるらしい。
「天領だと、魔法を使って、獲物を追ったり仕留めたりするのも遠慮がちになるしね。思いっきり猟ができる方が盛り上がるのは仕方ないね」
確かに。天領で派手に魔法を放つのは躊躇われるだろうな。
「今はシーズンオフだから、森の管理人や使用人も含め、伯爵家の人間しか居ないはずだよ」
風致林の陰に、屋敷が見え隠れするようになった頃、馬車は石畳の道を外れる。
「どうやら、この先の林に行くようだね。探索や戦闘の準備をし直さなくても、このまま進んで大丈夫かい?」
「はい。私は、持ち物や消耗品はすべてこのポーチの中に入ってるので、足りない物は都度補填してますから大丈夫ですよ。恐らく、みなさんも同じですよね?」
「まあね。私も、コハクちゃんのおかげで空間拡張収納袋には困らないから、常に必需品は揃えてあるよ」
「コハクちゃんのおかげ?」
「まあね、前回のクエストの報酬が、クエストの役に立つものばかりだったから」
「コハクちゃんが居なかったら、全員生きて帰れなかっただろうしね。コハクちゃんのおかげだよ」
「⋯⋯そんなに?」
「もお、みなさん、言い過ぎですよ。チルちゃんチットちゃんが頑張ってくれたからですよ。私じゃありません」
「前にも言ったかな、妖精達を有効かつ効果的に使うのも、コハクちゃんの冒険者としての力なんだから、誇っていいんだよ」
「そうそう、さすがに冥府の王なんて出て来た時にはもう帰れないと思っちゃったわよ」
「ィ⋯⋯冥府の王?」
「おかげでこの先、保管場所も盗難も心配はないからな」
「⋯⋯⋯⋯」
カイルロッドが口を挟めずに困惑している。
あまり吹聴してまわることでもないが、コハクの功績として非公開ってわけでもないから、口止めや解説はあえてせず、返答だけしながら、カイルロッドの前でペラッと喋ったアネッタにキツめの視線を送っておいた。
彼女は肩を竦めただけだった。
馬車は、足を止めることなく林へ向かっていた。
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