243 / 276
チーム再び!!──コハクちゃんを中心に
じゅうに。『カイルロッドの手配した騎士は、ギルドの周りを固め、査問会が来るまで誰も出さないよう見張るのだと言っていた』
しおりを挟む
♞
カイルロッドの手配した騎士は、ギルドの周りを固め、査問会が来るまで誰も出さないよう見張るのだと言っていた。
空間魔法や風魔法を使える魔道騎士も居たので、魔法を使って逃亡したり、証拠品を隠滅したりしないよう、監視役も中に配置するらしいので任せた。
私達の仕事は、違法魔術を行ったギルドの摘発でもなく、カイルロッド(と共にいたコハクを狙った)襲撃犯を捕まえる事でもない。
魔族瓶の中の少女を助け出すことだ。
まぁ、コハクは、この胸糞悪い錬金術のレシピを破棄し、錬金術によって瓶と融合させられた魔族や妖精たちを解放したいと言っていたが、それは二の次である。
チル殿はふるふると揺れながら、探知魔法を使って、ギルドから消えた、使用済の魔族瓶の痕跡を追っている。
チル殿が探知、情報を共有しているチット殿が先導しての移動である。
〈割と歩くヨ。ボク達はいいケド、みんなとカイまで一緒に妖精の通り道は使えないカナ⋯⋯ 馬車がある方がいいカモ〉
チット殿の言葉で、カイルロッドは素早く大型キャビンの2頭立て馬車を手配してきた。
駅馬車や乗合馬車ほど大きいものではないが、カバードワゴンとかプレイリースクーナーとか呼ばれる、いわゆる幌馬車で、左右の縁に設けられた板棚を座席代わりに座り、詰めて荷台にも座れば10人は乗れる。
てっきり、4~6人乗りの華美な装飾のついた貴族らしいワゴネットやクーペを持ち出してくるのかと思ったが、その辺の配慮は出来るらしい。
馭者席に、先導係のスニャイムを膝に乗せたコハクとフィルタが、私とアネッタとカイルロッドはキャビンに乗った。
わりと歩くと言うだけあって、テュバリス領内の大通りを、王都とは反対方向に馬車の脚で数時間、遂には領内から出てしまった。
この辺りの貴族の治める領地は城壁で分けられておらず、街道上の境界に、⬅ヒッコリス領➡テュバリス領という標識が立っているだけだった。検問もない。
「ヒッコリス伯爵領に入ってしまったね。戦闘になる可能性は心配だが、領軍騎士を連れてこなくて良かった」
とはカイルロッドの言。全くだ。軍を引き連れて来たら、侵犯行為と思われかねない。
「いや、たぶん、他ならともかく、ヒッコリスなら大丈夫かな?」
「どうしてですか?」
「上の弟の婚約者の家が治めてる領地なんだ。いきなり喧嘩にはならないだろう、と、思う。いや、だからこそ、険悪になりかねないのかな?」
それはあるだろう。両家の婚姻で結ばれるはずの上位貴族が、先触れなく軍を率いて進行してきたら、何事かと思うに決まっている。
しばらく進むと、大通りを外れ、賑わう地域から草原へと外れていく。
「この先は荘園地で、伯爵のマナーハウスと風致林から森へと広がるだけで、施設や住人はあまりいないはずなんだが⋯⋯」
不安そうなカイルロッドの声を聴いて、私は嫌な予感がした。
カイルロッドの手配した騎士は、ギルドの周りを固め、査問会が来るまで誰も出さないよう見張るのだと言っていた。
空間魔法や風魔法を使える魔道騎士も居たので、魔法を使って逃亡したり、証拠品を隠滅したりしないよう、監視役も中に配置するらしいので任せた。
私達の仕事は、違法魔術を行ったギルドの摘発でもなく、カイルロッド(と共にいたコハクを狙った)襲撃犯を捕まえる事でもない。
魔族瓶の中の少女を助け出すことだ。
まぁ、コハクは、この胸糞悪い錬金術のレシピを破棄し、錬金術によって瓶と融合させられた魔族や妖精たちを解放したいと言っていたが、それは二の次である。
チル殿はふるふると揺れながら、探知魔法を使って、ギルドから消えた、使用済の魔族瓶の痕跡を追っている。
チル殿が探知、情報を共有しているチット殿が先導しての移動である。
〈割と歩くヨ。ボク達はいいケド、みんなとカイまで一緒に妖精の通り道は使えないカナ⋯⋯ 馬車がある方がいいカモ〉
チット殿の言葉で、カイルロッドは素早く大型キャビンの2頭立て馬車を手配してきた。
駅馬車や乗合馬車ほど大きいものではないが、カバードワゴンとかプレイリースクーナーとか呼ばれる、いわゆる幌馬車で、左右の縁に設けられた板棚を座席代わりに座り、詰めて荷台にも座れば10人は乗れる。
てっきり、4~6人乗りの華美な装飾のついた貴族らしいワゴネットやクーペを持ち出してくるのかと思ったが、その辺の配慮は出来るらしい。
馭者席に、先導係のスニャイムを膝に乗せたコハクとフィルタが、私とアネッタとカイルロッドはキャビンに乗った。
わりと歩くと言うだけあって、テュバリス領内の大通りを、王都とは反対方向に馬車の脚で数時間、遂には領内から出てしまった。
この辺りの貴族の治める領地は城壁で分けられておらず、街道上の境界に、⬅ヒッコリス領➡テュバリス領という標識が立っているだけだった。検問もない。
「ヒッコリス伯爵領に入ってしまったね。戦闘になる可能性は心配だが、領軍騎士を連れてこなくて良かった」
とはカイルロッドの言。全くだ。軍を引き連れて来たら、侵犯行為と思われかねない。
「いや、たぶん、他ならともかく、ヒッコリスなら大丈夫かな?」
「どうしてですか?」
「上の弟の婚約者の家が治めてる領地なんだ。いきなり喧嘩にはならないだろう、と、思う。いや、だからこそ、険悪になりかねないのかな?」
それはあるだろう。両家の婚姻で結ばれるはずの上位貴族が、先触れなく軍を率いて進行してきたら、何事かと思うに決まっている。
しばらく進むと、大通りを外れ、賑わう地域から草原へと外れていく。
「この先は荘園地で、伯爵のマナーハウスと風致林から森へと広がるだけで、施設や住人はあまりいないはずなんだが⋯⋯」
不安そうなカイルロッドの声を聴いて、私は嫌な予感がした。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
欲しいのならば、全部あげましょう
杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」
今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。
「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」
それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど?
「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」
とお父様。
「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」
とお義母様。
「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」
と専属侍女。
この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。
挙げ句の果てに。
「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」
妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。
そうですか。
欲しいのならば、あげましょう。
ですがもう、こちらも遠慮しませんよ?
◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。
「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。
恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。
一発ネタですが後悔はありません。
テンプレ詰め合わせですがよろしければ。
◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。
カクヨムでも公開しました。
ダンジョンの奥底で殺された「下等種族」の僕、古代神と同化して最強のチカラを手に入れたので、奴らに復讐してやろうかと思います
ピコっぴ
ファンタジー
「だって、オマエ、ニンゲンじゃねぇか」
その一言で、ダンジョンに置き去りにされたボク
猫人や犬人がたくさん住んでて、兎人や鳥人も少しいる
僕のように獣相のない人間は少ないけど⋯⋯
たったひとりでも、生きて帰る!
そして、アイツらに⋯⋯!!
攻撃特化と守備特化、無敵の双子は矛と盾!
天眼鏡
ファンタジー
とある辺境の地で母とともに暮らす双子の姉妹。
一見、普通の女の子としか思えない二人だが……?
「どこの世界に単なる貧乏ゆすりで地震を起こす餓鬼がいるんだよ!!」
「何で崩落に巻き込まれておいて身体どころか髪や服にすら傷一つ無いのよ!!」
そう、残念ながら彼女たちは普通ではなかった。
これは、攻撃に特化しすぎている為に異常なほど魔法が効きすぎてしまう脳筋な姉と。
守備に特化しすぎている為にナイフやフォークより重い物は全く持てない馬鹿真面目な妹の。
ほんのり姉妹百合風味なドタバタ冒険譚である。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
聖女も勇者もお断り🙅
ピコっぴ
ファンタジー
何しに喚ばれたんか知らんけど ( 'ω'o[お断りします]o
【萌々香の場合】
子供の頃から、なぜか水辺が苦手で酷いと卒倒することもあった私は、水濠で清水に飲み込まれ、異世界に召喚された
『聖女』として
でも、無色の私は『月无』──憑き無しとして捨て置かれた
後から聖女さまと呼んでも、誰が助けてなんかやるものか
※ヒーローの本文内での確定がやや遅めです
表紙は自筆
富士通のAndroidで、SONYのアプリSketch にて☝左手中指を使用
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる