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魔族の小瓶 ── 私の手にはおえそうにありません!?
じゅうく。『私が無事でよかったと微笑んでくださるカイル様』──私は無事でしたが、カバーしてくださったカイル様が玉のお肌に擦り傷を負ってました
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🏥
私が無事でよかったと微笑んでくださるカイル様。
でも、見えてしまった。
咄嗟の動きで袖口のカフスボタンが飛んだのだろう、綺麗なドレスシャツの袖が捲れ、手首から肘にかけて、擦り傷が僅かに出来て、広範囲で赤くなっていた。
「床に擦ってしまったんですね。ごめんなさい」
ポシェットから『癒しの夜光石の杖』を取り出し、2回ほど、振っては傷に沿わせてを繰り返すと、赤みが引いて、擦り傷が消えた。
「便利だね。回復や治癒の魔法が使えなくても、同じ効果が得られるんだね」
「でも、最低限の、低級魔法と同じくらいの効果しかありませんよ?」
「その代わり、何回でも重ねがけ出来るし、患者の負担も少ない。わざと効果を弱くしてあるんだろう」
「お祖母ちゃ⋯⋯祖母の意図を解ってくださいますか?」
「もちろん。この身をもって実感したよ。
回復魔法は、本人の生命力や回復力を増加・急速消費して治す魔法だからね、傷が大きければ大きいほど、本人にかかる負担は大きくなる。ところが、今のは全くと言っていいほど、負担は感じなかった」
正しい知識とそれを活かす智慧があって、優しい、とても素敵なお祖母様なんだね
そう言って太陽のような微笑みを返してくださるカイル様に、とても嬉しくなった。
〈カイ、今回の事件で知り得たコハの情報は、公開しないッテ誓約シタヨネ?〉
「うん? もちろん、誰にも話さないし、文字で残したりもしないよ?」
〈ジャ、イイカ〉
何をするんだろう? と見ていたら、チルちゃんが私の頭から降りて、ソファの空いた場所で震え出す。
元の淡い空色から濃い瑠璃色まで、グラデーションで色を変えて明滅する。イカの威嚇や求愛のカラーリングみたい。
どこか悪いんじゃないよね? と不安になった頃、ソファから離れ、私の頭の上に戻って来る。
チルちゃんが退いた後のソファの上で、目に見えるほどはっきりと、小さいけど静電気の嵐がパリパリと伸び縮みして、パシュッと光ったかと思うと、カーバンクルお母さんがそこにいた。
「お母さん!!」
「え? コハクちゃん?」
「あ、私のお母さんだとか、育ての親だとかじゃないですよ? 子だくさんなお母さんなんです、この子」
「ああ、うん。そうだよね」
なぜにそこで安心する? 私が、小さなもふもふに育てられた野生児だとでも?
お母さんのお腹の柔らかい毛の中から、わらわらとおチビちゃん達が出て来る。
「や~ん、可愛い♡ カエンちゃん、フウちゃん、ルクちゃん、マナちゃん、スイちゃん、ノクスちゃん、元気だった?」
いや、今朝、ちゅぱちゅぱしたばかりだけどね。
6匹纏めて抱っこする。夏毛でつやつや、うん心地よくて可愛い、癒やされる~。
チルちゃんは、突然攻撃を受けてドキドキの私を慮って、カーバンクル達を喚んでくれたのだった。
私が無事でよかったと微笑んでくださるカイル様。
でも、見えてしまった。
咄嗟の動きで袖口のカフスボタンが飛んだのだろう、綺麗なドレスシャツの袖が捲れ、手首から肘にかけて、擦り傷が僅かに出来て、広範囲で赤くなっていた。
「床に擦ってしまったんですね。ごめんなさい」
ポシェットから『癒しの夜光石の杖』を取り出し、2回ほど、振っては傷に沿わせてを繰り返すと、赤みが引いて、擦り傷が消えた。
「便利だね。回復や治癒の魔法が使えなくても、同じ効果が得られるんだね」
「でも、最低限の、低級魔法と同じくらいの効果しかありませんよ?」
「その代わり、何回でも重ねがけ出来るし、患者の負担も少ない。わざと効果を弱くしてあるんだろう」
「お祖母ちゃ⋯⋯祖母の意図を解ってくださいますか?」
「もちろん。この身をもって実感したよ。
回復魔法は、本人の生命力や回復力を増加・急速消費して治す魔法だからね、傷が大きければ大きいほど、本人にかかる負担は大きくなる。ところが、今のは全くと言っていいほど、負担は感じなかった」
正しい知識とそれを活かす智慧があって、優しい、とても素敵なお祖母様なんだね
そう言って太陽のような微笑みを返してくださるカイル様に、とても嬉しくなった。
〈カイ、今回の事件で知り得たコハの情報は、公開しないッテ誓約シタヨネ?〉
「うん? もちろん、誰にも話さないし、文字で残したりもしないよ?」
〈ジャ、イイカ〉
何をするんだろう? と見ていたら、チルちゃんが私の頭から降りて、ソファの空いた場所で震え出す。
元の淡い空色から濃い瑠璃色まで、グラデーションで色を変えて明滅する。イカの威嚇や求愛のカラーリングみたい。
どこか悪いんじゃないよね? と不安になった頃、ソファから離れ、私の頭の上に戻って来る。
チルちゃんが退いた後のソファの上で、目に見えるほどはっきりと、小さいけど静電気の嵐がパリパリと伸び縮みして、パシュッと光ったかと思うと、カーバンクルお母さんがそこにいた。
「お母さん!!」
「え? コハクちゃん?」
「あ、私のお母さんだとか、育ての親だとかじゃないですよ? 子だくさんなお母さんなんです、この子」
「ああ、うん。そうだよね」
なぜにそこで安心する? 私が、小さなもふもふに育てられた野生児だとでも?
お母さんのお腹の柔らかい毛の中から、わらわらとおチビちゃん達が出て来る。
「や~ん、可愛い♡ カエンちゃん、フウちゃん、ルクちゃん、マナちゃん、スイちゃん、ノクスちゃん、元気だった?」
いや、今朝、ちゅぱちゅぱしたばかりだけどね。
6匹纏めて抱っこする。夏毛でつやつや、うん心地よくて可愛い、癒やされる~。
チルちゃんは、突然攻撃を受けてドキドキの私を慮って、カーバンクル達を喚んでくれたのだった。
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