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魔族の小瓶 ── 私の手にはおえそうにありません!?

じゅうよん。『あからさまに狼狽えるマギギルドマスター』──ギルドマスターの言葉に被せるように、カイル様が冷たい微笑みで切り込んだ。

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     ⚗️

 あからさまに狼狽えるマギ・ギルドマスター。

「なんの事でしょうか。我がギル「マスター。今、誤魔化すと後から事実が出てきた時に、かばいきれなくなるよ?」

 言い訳をしようとしたギルドマスターの言葉に被せるように、カイル様が綺麗だけど冷たい微笑みを見せて切り込んだ。

「は。あ、あの、申し訳ありません。実は、あの箒を生み出した錬金術士が、いろんな物に妖精を定着させる事に成功したのですが、その妖精がもとに戻れなくなりまして。ようは、妖精と物体のキメラですな」
「生き物でない物とのキメラだと?」
「はい。勿論、動物と物体は無理でしたが、そもそも木や家具、果ては家や岩などでも妖精はおりますから、付喪神などの魔族同様、キメラにむいてたのでしょうな、次々と作り出しまして。が、当然元には戻せません。
 数種の果物の果汁を混ぜでジュースを作り出せても、そこからオレンジだけを抜き出すのは難しいのと同じです」
「理屈はわかるがね、妖精だって生き物と同じく、感情を持って生きてるんだから、どこかでやめられなかったのかい」

 妖精と物体のキメラなんて、ひどい事を⋯⋯!

「ビーカーや試験管に小さな魔族を付与する事に成功すると、今度は中に入れた物を魔力に変える錬金術を編み出して、無限に⋯⋯」
「それは、さすがに禁呪レベルなのではないか?」
「その錬金術士は今どこに⋯⋯!!」
「姿を消しました。我々でも追ってはいるのですが、なに分、魔法バカばかりで、魔法がなければその辺の若者にも負けるような体力のない者で、アレを捕まえられずにおりまして」
「なぜ報告をしない‼」
「ま、魔道士組合、錬金術士組合では一応把握はしとるはずですが、見つけられないようでして。各組合を通じて、冒険者協会に討伐依頼を出そうかと⋯⋯」
「だめだよ! 討伐しちゃだめっ。捕まえなきゃ!」
「コハクちゃん?」
「呪いを解かなきゃ、だめなの。出来れば、瓶と魔族を、道具と妖精を、解放してあげなきゃ」

 捕縛されて、錬金術を解明できたらいいけど、討伐してしまって、レシピが闇の中に葬られちゃったら、助けられない⋯⋯

「コハクちゃん? 助けるって、誰をだい?」
「⋯⋯瓶の魔族に生気を吸われ続けている女の子」
「瓶は、開けたり割ったりしておりませんでしょうな?」

 食い気味に、ギルドマスターが訊ねてくる。

「もちろん、そのままです。だって、割れたら中の子がどうなるかわからないもの」
「そうです。実は、仲間の魔道士が、ビーカーの魔族に囚われましてな、皆で割り出そうとしたのですが⋯⋯」

 青い顔で、続きを言いたがらないギルドマスター。
 カイル様の眼力に負けて、先を続ける。

「一つ目の瓶を割った途端、その魔道士は解放されて元の大きさに戻れはしましたが、皺だらけの水分のない死体となってしまいました」
「ひとつ目?」
「ふたつ目は、皆、恐ろしゅうて割れませんでした」
「まあ、そうだろうね」
「ふたつ目は、割れずに、ギルベスダンを見つけたら解放させようと、ラボにて保管しとりましたが」

 ⋯⋯やな予感

「一週間ほどで干涸らびて、やはり絶命しました」
「その時のふたつ目の瓶は今?」
「怖がって誰も触れずに、保管しとりましたが、気がついたら忽然と消えとりました。転移魔法の痕跡がありましたので、飼い主のギルベスダンの元へ帰ったのではないかと」
〈ソコへ連れてって!〉
「チットちゃん?」
〈ボクたちが、その転移魔法の痕跡を追うヨ!〉







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