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奇跡の少女 ── ギレウォッタ
にぃ。『ラジエさんは、こんなところで死んじゃダメです!!』──そう叫び、あろう事か、彼女は素手でラジエの魂を鷲摑みにした
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☯️
「ラジエさんは、こんなところで死んじゃダメです!!」
そう叫び、あろう事か、彼女は素手でラジエの魂を鷲摑みにした。
「は?」×5
ラジエの背にあった魂の斬撃の傷痕から抜けかかっている、人間には触れることも出来ない筈のラジエの『霊魂』を、素手で鷲摑みにしたのだ。
この場の当事者二人を除く全メンバーが、己の目に映るものが信じられなかった。
「ラジエさんは、とても気のいい明るくて楽しい、面倒みのいいベテラン冒険者でした。私、尊敬してます。こんなところで死んじゃダメです」
そう、摑まれて驚いている魂に語りかけると、
「ラジエさんに戻ってください。また、冗談を言って笑ってください。半人前以下の私を導いてください」
まるで子供に言い聞かせるように、力強く命じて、背中に押しつけた。
彼女に名付けられてアイテムと化したサラマンダーのように、手の中でジタバタしていたラジエの霊魂は、ビクッとしたあと、叱られて巣に戻るペットのように、ラジエの肉体に潜り込んでいった。
「今の、なに?」
「ラジエの魂を躾けてた……?」
「いやいや、魂を躾けるって何?」
「でも、なんていうか、まるで叱られたペットや子供が、ベッドに潜り込むみたいに入っていかなかったか?」
どうやら、私の感想は、皆のそれとそう変わらないらしい。
その後、彼女は、祖母の形見だという『癒しの夜光石の杖』をラジエに向かって何度か振ると、死体にしか見えなかったラジエは、肌の色も血が通った生気ある人間に戻った。
〈コハ、お疲れさま! だいぶ消耗してるケド、もう大丈夫ダヨ〉
妖精くんの言葉にハッとして鑑定し直したら、確かに、状態異常は「疲弊」と「昏倒」のみとなっている。
上位聖職者がいなくてはどうにもならないと思われた事を、スキルもタレントもない13歳の少女がどうにかしてしまったのだ。
だが、磨き上げた黒曜石のような球体は、未だ我々の目の前に存在し、時折細かく振動している。
が、先程までのように、グラスハープのような音も立てず、不死の魔物も噴き上げる溶岩も召喚しなくなった。
だが、そこに存在するだけで我々の魔力を吸い上げ、周りの魔素を取り込み、代わりに冥気を吐き続ける。
この(コハクの鑑定によると)古代神が召喚しなくても、己の属性により吐き出す冥気が溜まって濃くなると、不死者は自然発生するのだから始末に負えない。
コハクはしばらくラジエの頭を撫でたり背をさすったりしていたが、立ち上がって、古代神──冥と昏の属性で、彼女は可愛らしく小首を傾げて冥府の王?なんて言っていたが──を見上げた。
「ラジエさんは、こんなところで死んじゃダメです!!」
そう叫び、あろう事か、彼女は素手でラジエの魂を鷲摑みにした。
「は?」×5
ラジエの背にあった魂の斬撃の傷痕から抜けかかっている、人間には触れることも出来ない筈のラジエの『霊魂』を、素手で鷲摑みにしたのだ。
この場の当事者二人を除く全メンバーが、己の目に映るものが信じられなかった。
「ラジエさんは、とても気のいい明るくて楽しい、面倒みのいいベテラン冒険者でした。私、尊敬してます。こんなところで死んじゃダメです」
そう、摑まれて驚いている魂に語りかけると、
「ラジエさんに戻ってください。また、冗談を言って笑ってください。半人前以下の私を導いてください」
まるで子供に言い聞かせるように、力強く命じて、背中に押しつけた。
彼女に名付けられてアイテムと化したサラマンダーのように、手の中でジタバタしていたラジエの霊魂は、ビクッとしたあと、叱られて巣に戻るペットのように、ラジエの肉体に潜り込んでいった。
「今の、なに?」
「ラジエの魂を躾けてた……?」
「いやいや、魂を躾けるって何?」
「でも、なんていうか、まるで叱られたペットや子供が、ベッドに潜り込むみたいに入っていかなかったか?」
どうやら、私の感想は、皆のそれとそう変わらないらしい。
その後、彼女は、祖母の形見だという『癒しの夜光石の杖』をラジエに向かって何度か振ると、死体にしか見えなかったラジエは、肌の色も血が通った生気ある人間に戻った。
〈コハ、お疲れさま! だいぶ消耗してるケド、もう大丈夫ダヨ〉
妖精くんの言葉にハッとして鑑定し直したら、確かに、状態異常は「疲弊」と「昏倒」のみとなっている。
上位聖職者がいなくてはどうにもならないと思われた事を、スキルもタレントもない13歳の少女がどうにかしてしまったのだ。
だが、磨き上げた黒曜石のような球体は、未だ我々の目の前に存在し、時折細かく振動している。
が、先程までのように、グラスハープのような音も立てず、不死の魔物も噴き上げる溶岩も召喚しなくなった。
だが、そこに存在するだけで我々の魔力を吸い上げ、周りの魔素を取り込み、代わりに冥気を吐き続ける。
この(コハクの鑑定によると)古代神が召喚しなくても、己の属性により吐き出す冥気が溜まって濃くなると、不死者は自然発生するのだから始末に負えない。
コハクはしばらくラジエの頭を撫でたり背をさすったりしていたが、立ち上がって、古代神──冥と昏の属性で、彼女は可愛らしく小首を傾げて冥府の王?なんて言っていたが──を見上げた。
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