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廃鉱山の中は、アンデッドだらけ?
にじゅはち。『夜の9時をまわってるってことは、おねむの時間だよね』──ここで運搬係の本領発揮? 大型家具を出してきますよ
しおりを挟む夜の9時をまわってるってことは、おねむの時間だよね。
「コハクちゃん、まさかとは思うけど、いいとこのお嬢様?」
「え? 違うよ? 田舎の羊飼いの子だよ」
なんでそんな事思うのかと訊けば、お祖母ちゃんの懐中時計。
「これは、お婆ちゃんが私くらいの頃に、お誕生日にお祖母さんから貰ったもので、ずっと使ってたんですって」
で、お祖母ちゃんが亡くなった後は、私が時々イチゴポーチから出して使ってます。
「だから、これは魔道具じゃなくて、ただの古道具です。魔法も付与いてないですよ?」
「そんなに小さくて精巧なら、かなり値が張るもんだけどねえ。代々受け継いできた、とかそういう物なのかな?」
お祖母ちゃんの出身地のことはあまり聞いたことないなぁ。東の方の、ずっとずっと、歩いてはいけない国から来たんだって言ってたっけ。
「コハクちゃんのお祖母さんは、色々と興味深い事ばかりだね」
とにかくみんな疲れてるし、夜だし、地震や不死者が気にはなるけど、起きっぱなしも能力が落ちるという事で、交代で休むことになった。
「もう、何が出てきても驚かないぞ?」
「小さいけど、きっと私の空間拡張収納袋よりも容量は多いんだろうね。これからも大切にして活躍しておくれよ」
キャルの為に持ち歩いてたものの中に、天幕と小さめの簡易ベッドがある。アレフ達の荷物に入れると、残り容量がかなり減るので、そのまま私が持っていた。
それを出して、アネッタさんとターレンさんに使ってもらう。
「女性だもん、寝てる所仲間でも見られるの気が進まないでしょ? 男性陣も目のやり場とか気を使うでしょ? うちもね、キャルが視線を感じると寝づらいって言うから、私が持って歩いてたの
こんな、ジメっとした地底で、毛布引っ掛けて転がっても休めないよね。使ってください」
森では、ギレウォッタさんが寝袋を出して来て、みんなで芋虫よろしく転がったけど、空気は清々しかったし、こことは環境が違い過ぎるもんね。
でも、なぜか、ラジエさんとギレウォッタさん以外には、微妙な反応をされた。良かれと思ってせっかく出したのに。解せぬ。
小さな微震は、ずっと断続的に来てみんなの不安を煽る。
それでも疲れていたのだろう、アネッタさんとターレンさんは、すぐに安らかな寝息を立てた。
どこでも寝れるのが冒険者だよね。
数時間で、私も寝ていい事になった。でも、私以外の人が握っても、『生命を宿した大輪の花』は光らない。
私の特殊技能の中の【魔道具使い】の解説に、魔法の道具を使いこなす才能・目利き (魔法道具だと識らなければ使えない)とある。
たぶん、ただの魔道具ではなくて、お祖母さんの魔法道具を使うには、特殊技能【魔道具使い】を持っていないとだめなんだろう。
みんなが気を使ってくれるけど、こればっかりは仕方がなく、私は三角座りで、灯り代わりの花を抱きしめたまま眠ることにした。
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