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廃鉱山の中は、アンデッドだらけ?

じゅういち。『光の届かない、奈落のような大穴に、ロープで繋がってぶら下がっている私達』──足のつかない状態は落ち着かない

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     🤸

 光の届かない、奈落の底のような大穴に、ロープで繋がってぶら下がっている私達。
 足のつかない状態は落ち着かない。

 さて、このあと、どうするのだろう。

 下り坂になっている坑道の入り口に、ラジエさんとキールさんがぶら下がり。
 殆ど足場もない壁に突き立てた金属棒に括られたロープで、フィルタさんに抱きかかえられてロープで縛られた状態。その先には腰にくくりつけられたギレウォッタさんが下がっていて、彼女の重みでだんだん私達は締め付けられていっている。フィルタさんの鎧で、辛うじて私達の身体がちぎれないで済んでいる⋯⋯

 いつまでもこうしてみんなでミノムシよろしくぶら下がっていても自身や共に下がっている人の重みで鬱血うっけつし、貧血や手足の痺れが起こるだけである。
 何より何回も崩れた床の断面に擦れ、今にも千切れそうな傷が何ヶ所があるのだ、このロープもいずれそう遠くない内に切れてしまうだろう。
 ロープで纏めて縛られ密着状態のフィルタさんの顔をそっと仰ぎ見ると、目が合う。クールな感じのイケメンにちょっと恥ずかしくなるけど、そんな場合じゃない。

「窮屈だろう? 苦しくないか? 鎧もないから痛いんじゃないか?」
「大丈夫です。フィルタさんこそ、私を抱える腕にロープが食い込んでるのでは?」
「いや、籠手があるから食い込んではない」
 あまり表情を変えずに、私の顔から視線を外し、三ヶ所の坑道と、大穴の底を見る。もちろん、光が届かず底は見えないけど。
 何か思いついたのを諦めたのか、この、絶体絶命的な状況に苦悩したのか、深いため息をつく。

 とりあえず、坑道入り口の壁に据え付けられたランタンに繋がっているラジエさん達は、キールさんが更に繋がっているので苦労しながら、のぼっていくのが見えた。
「上にあがったら、ロープを投げるから、受け取ってくれ」
 ラジエさんの言葉に、フィルタさんが応える。
 どうやら、なんとかなりそう?

 でも、こんな事考えたらいけないのだろうけど、これがアレフ達なら、全員真っ逆さまに転落していただろう。とっさに鞭やロープが出るわけじゃないし、あってもこの状況を確保できなかったと思う。
 壁役タンクで重戦士のエドガーに至っては、例えロープで吊れたとしても、装備の重さで耐えられなかっただろうし。

 さすがはギルマス推薦の上級冒険者ハイクラス・ハンターたち。

 先程のようにするするとはいかないけど、ラジエさんはなんとか坑道の地面に手をかけられた。
 キールさんが更に、壁を蹴って上がっていく。
 エドガーほどじゃないにしても、キールさんも鎧とか重そうなんだよね。

「キールのは妖精銀ミスリルだから、そんなには重くないだろう」

 なんで私の考えてる事がわかるのか⋯⋯

「透けて見える。重そうだなぁって」

 フィルタさんが苦笑いで教えてくれた。なんでわかるのかって思った事も筒抜けだったみたい。







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