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冥界に一番近い山──楽園と地獄の釜
ごぉ。『チルのスニャイムジュースを、キーに刺して注入するにゃ~』──人に針を刺すなんて、怖いけど、キールさんのためにがんばります
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💉
冥の気が噴き出てると思われる火口を目指して数時間。
私の不注意で飛び出した毒蜂に刺されてしまったキールさんの腕は、見る間に紫色に腫れあがり、申し訳ないで済まない状況に。
私の『癒しの夜光石の杖』で回復させると、刺された傷口は塞がるし、毒によって爛れた組織は治る。けど、毒素を抜けるかどうかは解らない。私には神聖魔法の適性はないから。
傷口を閉じてしまったあと、毒素が抜けてなかったら大変な事になるかもしれない……
そう思って、思い切って治療できないでいると、チルちゃんが毒蜂を取り込み、自身の体内で『ケッセイ』なるものを作り出したという。
チットちゃんに言われて、無限収納空間拡張袋の中から取り出したお祖母さんの魔道具『チュウシャキ』で、ケッセイとなるチルちゃんの体液?スニャイムジュースをキールさんに注入しろといわれて、まわりのみんなも早くしろとも止めておけとも言えない状況である。
〈早くチルの絞り汁を、キーに刺して注入するにゃ~〉
まず、人の体に針を刺すという行為が怖い。どのへんに刺せばいいのかも自信がない。と、思った途端、刺し方が頭の中に映像で伝わってくる。
いや、映像で教えてくれるのは便利なんだけど、怖いよ。刺すなんて。
疑うわけじゃないけど、納得してやりたいから、鑑定単眼鏡で確認してみる。
✡✡✡✡✡✡✡✡✡✡
【スニャイムジュース】妖精技能の【薬学】【調合】により自身の体内で造られる栄養剤及び調剤施薬のこと
経口剤としても使えるが、皮下組織に直接注射剤として利用する方が効果は高くより早く効く。
✡✡✡✡✡✡✡✡✡✡
「……ですって」
「チル殿が私の為に作ってくれたものだ、遠慮なくやってくれ」
と、言われても、針を刺すなんて怖いよ……
「気にしないでくれ。冒険者をしていた頃や魔獣狩りなどで、斬られたり突かれたり刺されたりは慣れている。そんな細い針くらい大したことはない。毒が全身に回る前に頼む」
そう、毒が全身に廻っちゃったら、神殿の上位神官の神聖術で浄化しなくちゃいけなくなる。
私は、意を決して、目を瞑りたくなるのを我慢して、チュウシャキをキールさんの腕に刺した。
チルちゃんに教えられたとおり、垂直にではなく斜めにゆっくり刺したのがよかったのか、さほど抵抗なく針は入った。
針の刺さる嫌な感触が伝わるが、我慢して、シリンダー部分の中棒を押し込む。
中棒を奥まで押し込んで、チルちゃんのお汁がなくなると、スッと針を抜いたけど、針穴はほとんどわからなかった。
「見て、腫れが引いていって、色も肌の色に戻っていくわ」
目をそらしていたけれど、アネッタさんが喜ぶ声に、そっと視線を鉢に刺されたところに移すと、本当に、ちょっぴりピンク色で、刺し跡も小さくなっている。
後は『癒しの夜光石の杖』で全体的に回復させれば、ほぼ完治だった。
冥の気が噴き出てると思われる火口を目指して数時間。
私の不注意で飛び出した毒蜂に刺されてしまったキールさんの腕は、見る間に紫色に腫れあがり、申し訳ないで済まない状況に。
私の『癒しの夜光石の杖』で回復させると、刺された傷口は塞がるし、毒によって爛れた組織は治る。けど、毒素を抜けるかどうかは解らない。私には神聖魔法の適性はないから。
傷口を閉じてしまったあと、毒素が抜けてなかったら大変な事になるかもしれない……
そう思って、思い切って治療できないでいると、チルちゃんが毒蜂を取り込み、自身の体内で『ケッセイ』なるものを作り出したという。
チットちゃんに言われて、無限収納空間拡張袋の中から取り出したお祖母さんの魔道具『チュウシャキ』で、ケッセイとなるチルちゃんの体液?スニャイムジュースをキールさんに注入しろといわれて、まわりのみんなも早くしろとも止めておけとも言えない状況である。
〈早くチルの絞り汁を、キーに刺して注入するにゃ~〉
まず、人の体に針を刺すという行為が怖い。どのへんに刺せばいいのかも自信がない。と、思った途端、刺し方が頭の中に映像で伝わってくる。
いや、映像で教えてくれるのは便利なんだけど、怖いよ。刺すなんて。
疑うわけじゃないけど、納得してやりたいから、鑑定単眼鏡で確認してみる。
✡✡✡✡✡✡✡✡✡✡
【スニャイムジュース】妖精技能の【薬学】【調合】により自身の体内で造られる栄養剤及び調剤施薬のこと
経口剤としても使えるが、皮下組織に直接注射剤として利用する方が効果は高くより早く効く。
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「……ですって」
「チル殿が私の為に作ってくれたものだ、遠慮なくやってくれ」
と、言われても、針を刺すなんて怖いよ……
「気にしないでくれ。冒険者をしていた頃や魔獣狩りなどで、斬られたり突かれたり刺されたりは慣れている。そんな細い針くらい大したことはない。毒が全身に回る前に頼む」
そう、毒が全身に廻っちゃったら、神殿の上位神官の神聖術で浄化しなくちゃいけなくなる。
私は、意を決して、目を瞑りたくなるのを我慢して、チュウシャキをキールさんの腕に刺した。
チルちゃんに教えられたとおり、垂直にではなく斜めにゆっくり刺したのがよかったのか、さほど抵抗なく針は入った。
針の刺さる嫌な感触が伝わるが、我慢して、シリンダー部分の中棒を押し込む。
中棒を奥まで押し込んで、チルちゃんのお汁がなくなると、スッと針を抜いたけど、針穴はほとんどわからなかった。
「見て、腫れが引いていって、色も肌の色に戻っていくわ」
目をそらしていたけれど、アネッタさんが喜ぶ声に、そっと視線を鉢に刺されたところに移すと、本当に、ちょっぴりピンク色で、刺し跡も小さくなっている。
後は『癒しの夜光石の杖』で全体的に回復させれば、ほぼ完治だった。
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