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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス

じゅうひち。『キールさんに続いて、みんな順にゲートを潜っていく』──精霊と風がざわめく森の中で、静寂な空間が現れた

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     ⛰️

 キールさんに続いて、みんな順にゲートを潜っていく。

 ダンジョンほど違和感はない。あそこは、石碑の表面に隠し施されたゲートから地下に転移するものだけれど、ここは、外部の者を弾く結界があるだけで同じ森の中だからだろう。

 さっきまでの精霊や野生動物、何種類もの妖精達と風がざわめく森とは違って、静かで、正常な空気の空間だった。

「キール!」

 郷の中心の方から、数人の森人もりびとが駆け寄ってくる。

〈姫さまはご無事か?〉
〈ああ、人間の都で一番信頼できる一番守りの硬い場所にお連れした〉

 ギルマス、信頼性特大だね。

〈そちらは?〉
〈その信頼出来る人物に紹介してもらった、精霊術と魔獣、地層学や考古学に詳しい専門家をお連れした〉
〈そうか…… こちらの方々が〉
〈子供もいるじゃないか〉

 子供って、私の事だよね。

〈この方は、妖精王の杖を引き継がれた当代のくさびだよ〉
〈こんな子供が?〉
〈お小さいが、複数の妖精族を従えて、先程は大ジャック・フロストとえにしを結ばれた。下には扱わない事だ〉
〈幻の大妖精とえにしを!?〉
〈我ら妖精族もそうそう遭わないお方なのに、人の子が?〉

 なんか、盛り上がってますけど、キールさん、ちょっと話盛り過ぎじゃないですか?
 そして、森人もりびとの言葉を理解できないみんなは、さっきから置き去りだ。
 私は、チルちゃんのおかげでわかるけど。

〈えっと、こんにちは、森人もりびとの若木さんたち〉
〈人の子が妖精語を?〉
〈いや、あの蒼星の妖精族が疏通術を使っているらしいな……〉

「コハクちゃん、彼らはなんて言ってるの?」
 ターレンさんは、エルフ語が近い筈なのによくわからなくて、少し不安な様子。そのために私は来たんだから、ちゃんと通訳しないと。

〈キールさんにご紹介に預かりました、妖精の友、コハクです〉

 キールさんの盛った肩書きに乗っかるように、ちょっと大袈裟に自己紹介をする。チットちゃんチルちゃんと非開示能力値シークレットステータス【信頼】 コンセンスス 【絆】 ノドゥス で結ばれた関係だもの。まるきりの嘘でもない。

 無限収納空間拡張袋インフィニティインベントリサッシェから『妖精王の杖シルフィールスタッフ』を取り出して両手に掲げ持ち、賢そうに見えるように、眼に力を入れて名乗る。

「こちらの若芽キールさんの招請により馳せ参じました。森のみなさんの力になれるよう、尽力しますので、よろしくお願いします」
〈お、おお、妖精王の、宿り木と世界樹の杖だ!!〉

 盛り上がってんな~

 あちこちの木から、すうっと霊魂が抜け出すかのように森人もりびと達が出て来て、どんどん集まってくる。
 木の幹の表面にゲートを作って、妖精魔法で空間拡張収納ワイドインベントリのように亜空間を繋げ、その中で暮らしているらしい。チルちゃん、解説ありがとう。

 大歓迎とまではいかなくても、それなりに受け入れられたみたい?
 よそ者を惑わせて寄せ付けない暮らしをしていると聞いていたから、身構えちゃったけど、ちょっと拍子抜けだった。

 チルちゃんチットちゃんやケルピーちゃんが一緒にいるのもよかったのだろう。

 私達は、このまま一族のおさ──ルーナ姫さまのご尊父に会わせてもらうことになった。








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