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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス

じゅ。『火属性の精霊には、水属性の仲間を喚び出したい』──火の子に強い、カッコイイの、求む! 妖精召喚に臨みます!!

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     🦎

 火の属性の精霊には、水属性の仲間を喚び出したい。風じゃ煽るし、せめて土属性の強いのなら火を覆いつくして抑えられるかもしれないけど、私には無理だろう。【召喚】の技能スキルは持っていないし、MPは2しかない。

 この近くのどこかで発生しているという、冥府からの病んだ瘴気に感染して、対話ができなくなっている火の精霊サラマンダーは、空中にいて炎を噴き出し続け、すごい熱気に、みんなも汗をかき始める。

「お願い! 火の精霊に対抗できる、カッコいい子来て!!」

〈ニャニュ!?〉

 カッコいい子来ての言葉に、チットちゃんが不満げに鳴く。ゴメンネ、チットちゃんがかっこよくない訳でもダメって訳でもないから。「カッコいい」よりかは「可愛い」かもしれないけど、すっごく助かってるよ。

 チットちゃんチルちゃんを常に連れているので、私の能力的にもギリギリなのだろう、『妖精王の杖シルフィールスタッフ』は少し光るものの、ハーブのような香りも僅かで、召喚に成功した時の内側からの強い光は表れない。

「僅かだが、手を貸そう」

 杖を握る私の手に、剣を握る人の、指の内側や付け根が固くなった大きな手が添えられる。キールさんだ。
 添えられた手のひらから、温かな魔力が分け注がれる。

「精霊召喚とどっちが難しいかしらね?」

 ターレンさんも、指先を少し切って血を滲ませ、『妖精王の杖シルフィールスタッフ』に絡みつく宿り木に塗るように握ってきて、魔力を足してくれる。

「火の子に強い、カッコイイの!! 来てー!!」

「カッコイイの、は、必要か?」

 ギレウォッタさんがどこか呆れたように訊いてくる。でも、そこ、こだわりだから! 強いときたら「カッコイイの!」でしょう?

〈ウィヒヒーン〉

 うにゃ? ウヒヒ? なになに?

 サラマンダーから飛んでくる火を、三人でひとつの杖を摑んでいたがために、咄嗟には避けきれない!

 目を瞑って熱いのを堪らえようとした、その時──

 パシャッ

 私達の目の前で、サラマンダーの噴き出した渦巻く炎はジュッと音を立てて消えた。

 そろそろと目を開けて見えたもの。

 ──お魚?

  ふっとい大きな、キラキラの鱗がたくさん見える足? 尾? 魚の胴体のようなものにかかるサラサラの金髪。

 ──人魚ネレイド

 逞しい、筋骨隆々で黒いビロードのような毛並みの脚と奇蹄類のヒヅメ

 ──上半身馬で下半身はお魚?

 ブルルルと鼻息を荒く、前脚で地団駄を踏むように地を蹴り、サラマンダーを睨みつけるのは、水棲の妖精ケルピーだった。










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