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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス

にぃ。『どうして、森なのに西濤(にしなみ)って言うの?』──その理由は、森の中で目を閉じたらわかりました

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     🏞️


「どうして、森なのに西濤ヽヽって言うの?」

 私は、単になんでかな~って思ったから、素直に訊いてみた。

 なみって、波濤はとうって、海で起こる大波の事だよね?
 同じ冒険者ハンター協会ギルドから派遣されたメンバーはまわりを警戒したり軽く調査したり忙しいみたい。

「そのまま静かに目を閉じてみてください」

 キールさんの言うとおりに目を閉じる。

 ザザザ…… ザザーン ザザザ……

 多分、風が吹いて木々の葉ずれの音だと思うけど、なんだかアレフ達と一度だけ行った海の、夜中に聴いた波の音に似てる!?

 最初慣れないうちはなんだか寝つけなくて、みんなと砂浜に出て、なんでそんな音がするのか、危険なものでない事を確認しに行ったっけ。

 月夜で、とても幻想的な素敵な風景だった。
 私に妖精や精霊を視る眼があれば、もっと綺麗だったに違いない。
 彼らは、恥ずかしがり屋だったり怖がりだったり、なかなか姿を見せないから。精霊は、契約するか、もともと高い魔力で視る力がないと視えないものだし。

 チルちゃん達は、私の契約妖精だから、みんなに見えてるんだ。

 ぷるぷる

 私がチルちゃんの事を考えたのがわかったのだろう、頭の上で伸び縮みして応える。

「夜の海の波の音に似てますね。風が木々の葉を揺らす音ですか?」
「そう。街中で数本の木だとここまではざわざわしないだろう? 波濤の一族が住む前は、単純にざわざわの森って言われていたそうだよ」

 もう何百年も前の話だけどね。

 そう言ってキールさんは微笑んだ。
 それにしても、話に聞いていた、瘴気に侵された精霊とか荒れ狂う魔獣とやらにはまだ会わない。
 それは、同じギルドから来たみんなも拍子抜けしたようだった。

「ここいらはまだ森に入ったばかりで、いわば、妖精の幻惑魔法の範囲の外だからね。あそこに見える、立ち枯れた木、わかるかい?」

 キールさんが指す方向の、ちょっと遠くに、白い葉のない木が二本立っているのが見える。

「あそこから先は、結界の内側だ。身内が一緒でなければ、幻惑魔法の影響で先に進めない」

 いよいよ、探索の始まりなんだ!

 今までは、街道や草原で、あとから来る商隊のための露払い掃討や、ダンジョン探検ばかりで、こんなに明るいのに見通しの悪い森の中は初めてである。ちょっとだけ……ううん、かなり緊張してる。

「大丈夫だよ。君には、妖精族が二人もついているじゃないか。僕も、無理を言って来てもらってるんだから、及ばすながら、ちゃんと守ってみせますよ」

 キールさんが、白い歯を見せて、爽やかに微笑んでくれた。
 白い歯もそうだけど、後ろでひとつにくくられた白っぽい金髪と、空のような綺麗な水色の眼がもっと眩しい。

 アレフやクリスのノーブルな美形とはまた、違った感じの爽やかイケメンだなぁ。モテるんだろうな。お姫さまと仲良さそうだったけど……もしかして?

 身近な女の子がキャロラインしかいなかったから、あまり恋バナとかしたことなかったけど、妖精族の女の子達も、私達人間と同じように、イケメンにキャッキャ言ったりするのかな……

 お姫さまも、森人の外見以外、そんなに違った風はなさそうだったし。

 さっきまでの緊張はどっか飛んでいって、まだ見ぬ森人の郷と住人達の想像にちょっと浮かれていた──








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