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琥珀・もうすぐ14歳・♀・遊び人Lv.1!
じゅうろく。『男性を覆ったチットちゃんの中で火花が散ってどんどん消えていく血』──みんなヒドいよ、吸血スライムじゃないから!
しおりを挟む男性の顔から肩を覆ったチットちゃんの中で、小さな火花が散って、どんどん消えていく血。
「あのスライム、血を食ってんじゃねぇよな?」
「スライムじゃないし! ギルマスが噴いたお茶と同じで、浄化してるんだと思うけど、みんな【目利き】とか【鑑定】とか、ステータス確認能力ないの?」
職員達が、チットちゃんが血を啜ってるんじゃないかと怯える。
「チットちゃん、血の味は覚えちゃだめよ~。ばっちいからね」
「ばっちいか?」
「怪我してるんだもの、傷口も血も、バイ菌だらけでしょ? だから、浄化してるんだと思う」
「噴き出したお茶と同じ……家事の一貫扱いかよ」
以前、ギルマスのお口から飛び散ったお茶を、水分とお茶成分に分解して、お掃除をしてくれたチットちゃん。
今回も、あのままじゃ傷口からバイ菌入るかもって思った私に応えて、浄化してくれてるんだろう。
「なんていい子で可愛いの♡」
「……そういうシーンか? これ」
顔はすっかり綺麗になり、腕や胸元の鎧の中まで、キレイにしてくれたチットちゃん。ご苦労さま。
労ってあげると、縦横に伸び縮みして喜ぶ姿も可愛い。
そう言えば、召喚した妖精って、ご褒美とかどうしたらいいんだろう?
ところで、チットちゃんが血をキレイにしてくれたおかげで、傷口がよくわかって、そっちが怖い。
チットちゃんがキレイにした部分は、殆ど血が止まっている。
すごく深く切れてる肩と胸にかけての鎖骨の辺りだけ、新しい血が滲んで来ていた。
『癒しの夜光石の杖』を握り直し、ゆっくり男性に近寄る。
女性はハッとして、流血が綺麗になった男性を抱え、身を固くする。
「頭は動かさないほうがいいわよ? 傷を診せてくれる?」
ますます身を固くするだけで、エルフ語でターレンさんが宥めても聞かないので、やはりエルフ語も解らないのだろう。
〈にゃにゃーん! コハに任せる! すぐ治るにゃ〉
頭の上で、チルちゃんがぽよんぽよんしながら訴えると、女性はハッとして顔を上げた。
〈妖精族? 仲間なの?〉
〈ぽくら、妖精族のスニャイムにゃ! 心配ないから任せるにゃ〉
なんと! チルちゃんが通訳をしている!
チャララ、チャッチャ・チャーン📯
──❂チルが【言語疏通】を開花しました
おお、妖精族の言葉を、私の頭に翻訳してくれるのね? 凄いよ、チルちゃん!
「な、なんだ? 女性がおとなしくなったぞ?」
どうやら、チルちゃんの翻訳機能は、技能同調してる私にしか効果はないみたい。
「えっと、森人は妖精郷からはぐれた妖精族ですから……」
「それは識ってるが……」
ギルマスも首を傾げる。
「チルちゃん達と、妖精族の言葉で通じるみたいです」
「お、おお? そのにゃーにゃーで通じてるのか?」
「私には、共用語に聞こえてますけど……」
「そうか、召喚獣との【同調】技能共有か」
私(チルちゃん)と意思疏通が出来るようになったとわかると、みんな静まり返って、様子を窺っている。
私は、おもむろに『癒しの夜光石の杖』を掲げ、くるくるまわしながら、踊りだした──
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