43 / 276
琥珀・もうすぐ14歳・♀・遊び人Lv.1!
じゅうし。『ギルド内が騒がしい。誰かが泣き喚いてるみたい』──新しい冒険の始まり
しおりを挟む
🐇
ギルド内が騒がしい。誰かが泣き喚いてるみたい。
「なんだろうね?」
頭の上にチルちゃんを載せたまま、チットちゃんは、ぴょこぴょこ跳ねながら足元をついてくるのを確認して、裏手の私が借りてる菜園から、表のギルド営業所へとまわる。
──真っ赤な薔薇を抱いて眠っているみたい
最初は、場違いにもそんなふうに見えた。
実際は、血だらけでぐったりしている、金属製の胸部分鎧を身に着けた男性。
その男性の肩と首を抱えるようにして座り込んだ女性が、悲鳴のような声をあげ続けているのだ。
「首を下ろしな。動かさないほうがいい」
騒ぎに奥からギルマスが出て来て声をかけるも、女性は聞き入れない。
まるで言葉が解らないようだ。いや、実際解らないのかもしれない。
女性は、人族ではなかった。
柔らかく細やかな毛に覆われた、うさぎのような耳。顔や手の形は人のそれと同じだけど、ブラウスから覗く手の甲に白い、産毛よりはハッキリとした短い艷やかな被毛が。
兎人にも見えるけど、鼻先や口は人間の物と同じようで顔に被毛はないし、耳と(見える範囲では)手の甲に被毛が生え揃っている以外は、ほぼ人間に見えることから導き出される答えは……
「森人?」
元は、エルフやドワーフと同じ妖精の仲間で、妖精郷へは帰属せずに、この物質世界の森の中で暮らしいているという。
「兎人じゃねぇのか?」
「お顔は人間と変わらないでしょ? 兎人なら、顔もうさぎじゃないの」
私のひとり言に、同じ年くらいの少年剣士が訊いてくる。
「そうなのか? あの耳、ほぼウサギじゃんか」
「兎人は獣人、森人は妖精族、存在定義がまるで違うよ」
「おう、コハク。悪いが、ちょっと試してみてくれねぇか?」
「はい」
ギルマスは、野次馬冒険者達の首を摑んで向き直させ、職員が追い払って入り口を閉じてしまい、人払いをする。
「一応、神殿の治療士や回復士を呼んでくるよう遣いは出したが、処置が早いに超したことはねぇからな」
ちなみに、女性の叫びも私には意味がわからないし、ギルマスも、森人の言葉は殆ど解らないと言う。
それは女性も同じようで、いくら私達が落ち着くように言っても、男性を診るから離れてと言っても聞かず、泣き続ける。
「どうしたんですか? この人たち……」
「よくわからんが、ナーヴの話だと、突然、その男が彼女を抱えて飛び込んできたそうだ」
ギルド内が騒がしい。誰かが泣き喚いてるみたい。
「なんだろうね?」
頭の上にチルちゃんを載せたまま、チットちゃんは、ぴょこぴょこ跳ねながら足元をついてくるのを確認して、裏手の私が借りてる菜園から、表のギルド営業所へとまわる。
──真っ赤な薔薇を抱いて眠っているみたい
最初は、場違いにもそんなふうに見えた。
実際は、血だらけでぐったりしている、金属製の胸部分鎧を身に着けた男性。
その男性の肩と首を抱えるようにして座り込んだ女性が、悲鳴のような声をあげ続けているのだ。
「首を下ろしな。動かさないほうがいい」
騒ぎに奥からギルマスが出て来て声をかけるも、女性は聞き入れない。
まるで言葉が解らないようだ。いや、実際解らないのかもしれない。
女性は、人族ではなかった。
柔らかく細やかな毛に覆われた、うさぎのような耳。顔や手の形は人のそれと同じだけど、ブラウスから覗く手の甲に白い、産毛よりはハッキリとした短い艷やかな被毛が。
兎人にも見えるけど、鼻先や口は人間の物と同じようで顔に被毛はないし、耳と(見える範囲では)手の甲に被毛が生え揃っている以外は、ほぼ人間に見えることから導き出される答えは……
「森人?」
元は、エルフやドワーフと同じ妖精の仲間で、妖精郷へは帰属せずに、この物質世界の森の中で暮らしいているという。
「兎人じゃねぇのか?」
「お顔は人間と変わらないでしょ? 兎人なら、顔もうさぎじゃないの」
私のひとり言に、同じ年くらいの少年剣士が訊いてくる。
「そうなのか? あの耳、ほぼウサギじゃんか」
「兎人は獣人、森人は妖精族、存在定義がまるで違うよ」
「おう、コハク。悪いが、ちょっと試してみてくれねぇか?」
「はい」
ギルマスは、野次馬冒険者達の首を摑んで向き直させ、職員が追い払って入り口を閉じてしまい、人払いをする。
「一応、神殿の治療士や回復士を呼んでくるよう遣いは出したが、処置が早いに超したことはねぇからな」
ちなみに、女性の叫びも私には意味がわからないし、ギルマスも、森人の言葉は殆ど解らないと言う。
それは女性も同じようで、いくら私達が落ち着くように言っても、男性を診るから離れてと言っても聞かず、泣き続ける。
「どうしたんですか? この人たち……」
「よくわからんが、ナーヴの話だと、突然、その男が彼女を抱えて飛び込んできたそうだ」
0
お気に入りに追加
156
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる