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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?
じゅうろく。『出て来たのは、子供の頃の想い出の、おもちゃの妖精王の杖である』──とりあえず、期待して振ってみるね
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🌿
とにかく、出て来たのは、子供の頃の想い出の、おもちゃの『妖精王の杖』である。
なんでコレ? と思わないでもないが、なんか凄い光ってたし、一応、何か役に立つかも? 振ってみるね。
「えいっ」
まるで魔女のステッキ(おもちゃ)を振ってなりきる子供のように、ちょっとポーズもつけて、くるくるまわりながら、身長近くまで長杖をバトントワリングのように振り回す。
夜店のおもちゃの杖ゆえに、何か起こるとは思ってなかった。やけくそともいう。
思ってなかったのに、長杖のてっぺんの珠から、メルベールの匂いがして来る。
あの商人のいう事が本当なら、樹脂の中に閉じ込められている筈なのに、スッとするいい香りが辺りに立ちこめてきた。
それまでふるふるしていたスライム達は、身を縮め(たように見える)、ひらべっちゃく伸びたり、球状になったり。
この匂いが嫌いなのかな?
ペーズリー模様のように内臓を透かしていた黄色スライム(麻痺毒霧付)は、すでに岩の隙間に逃げ込んで姿を消していた。
長杖は、(商人いわく)世界樹の若枝で、ヤドリギの蔓が巻きついていて、宝珠にとまるレースの蝶が翅をはためかせ、蒼白い蛍光の鱗粉をまいていた。
「これ、本当に魔法の杖だったんだ?」
夜店で買ったおもちゃだと思ってたのに。
おもちゃだと思ってたので、今まで使ったことはなかった。
効果は、なんだろう。
ずっと持ってることを忘れるくらいしまっていたので、イチゴのポーチ(ビーズのストラップで肩にかけてるから、ポシェットかな)から、出したのも初めてだ。
1m以上ある長杖を左手で抱えるように持ちながら、右手でランタン代わりの輝水晶の短杖も持つのは大変で、とにかく杖を2本抱えて、スライムが縮こまって空いた隙間から、多分出口と思われる方へ走り出した。
ハーブの効果が続いているのか、スライムはついてこなかった。
通路の途中に居たおまんじゅうくらいのジェリーも、ふるふると身を揺らし、飛びかかろうとしたけれど、『妖精王の杖』を降ると、硬くなって床に落ちる。
「妖精王さま、凄い」
いつか、あの商人に出会ったら、ちゃんとお代金を支払おう。
思い出とともに、銀貨を渡すタイミングを逃し、支払ってなかった事も思い出したので、かたく誓う。
おかしいな? 出口まで、こんなに歩いたかな……
スライム達を振り切って逃げながら、三本道の選択を間違えたような気がしてきていた。
とにかく、出て来たのは、子供の頃の想い出の、おもちゃの『妖精王の杖』である。
なんでコレ? と思わないでもないが、なんか凄い光ってたし、一応、何か役に立つかも? 振ってみるね。
「えいっ」
まるで魔女のステッキ(おもちゃ)を振ってなりきる子供のように、ちょっとポーズもつけて、くるくるまわりながら、身長近くまで長杖をバトントワリングのように振り回す。
夜店のおもちゃの杖ゆえに、何か起こるとは思ってなかった。やけくそともいう。
思ってなかったのに、長杖のてっぺんの珠から、メルベールの匂いがして来る。
あの商人のいう事が本当なら、樹脂の中に閉じ込められている筈なのに、スッとするいい香りが辺りに立ちこめてきた。
それまでふるふるしていたスライム達は、身を縮め(たように見える)、ひらべっちゃく伸びたり、球状になったり。
この匂いが嫌いなのかな?
ペーズリー模様のように内臓を透かしていた黄色スライム(麻痺毒霧付)は、すでに岩の隙間に逃げ込んで姿を消していた。
長杖は、(商人いわく)世界樹の若枝で、ヤドリギの蔓が巻きついていて、宝珠にとまるレースの蝶が翅をはためかせ、蒼白い蛍光の鱗粉をまいていた。
「これ、本当に魔法の杖だったんだ?」
夜店で買ったおもちゃだと思ってたのに。
おもちゃだと思ってたので、今まで使ったことはなかった。
効果は、なんだろう。
ずっと持ってることを忘れるくらいしまっていたので、イチゴのポーチ(ビーズのストラップで肩にかけてるから、ポシェットかな)から、出したのも初めてだ。
1m以上ある長杖を左手で抱えるように持ちながら、右手でランタン代わりの輝水晶の短杖も持つのは大変で、とにかく杖を2本抱えて、スライムが縮こまって空いた隙間から、多分出口と思われる方へ走り出した。
ハーブの効果が続いているのか、スライムはついてこなかった。
通路の途中に居たおまんじゅうくらいのジェリーも、ふるふると身を揺らし、飛びかかろうとしたけれど、『妖精王の杖』を降ると、硬くなって床に落ちる。
「妖精王さま、凄い」
いつか、あの商人に出会ったら、ちゃんとお代金を支払おう。
思い出とともに、銀貨を渡すタイミングを逃し、支払ってなかった事も思い出したので、かたく誓う。
おかしいな? 出口まで、こんなに歩いたかな……
スライム達を振り切って逃げながら、三本道の選択を間違えたような気がしてきていた。
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