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暗いダンジョンの中で捨てられました──捨てる勇者あれば拾う妖精あり?

さん。「あ、ヤバ……真っ暗だ」──当然、ダンジョンに常備灯なんかありません

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     🕯

「あ、ヤバ……真っ暗だ」

 しばらく、みんなが歩いていくのを見送っていたけど、クリスの持つ松明トーチの灯りが届かなくなると、自分の手元も見えないくらい真っ暗になる。

 壁石が発光したり、夜光性の歯衣類が生えてたりするダンジョンもあるけど、ここは普通の岩や土で出来ていて、松明トーチを燃やすか、棹杖スタッフ魔杖ロッドの先に灯り魔法を灯すか、光る精霊や妖精などを召喚して付き従えるかしないと、一寸先も闇!である。
 ……あれ?使い方間違ってるかな。ま、いいや。
 この先の安全の保証もないし、どうなるかの予測も立たない。丸々間違いでもないよね。

 このままじっとしてても仕方ないよね。第一下層とはいえ、魔物が出ない訳じゃない。帰ろう。

 例え目を閉じてても、自分のポーチに手を伸ばす事は出来る。

 中から『光灯る魔女の杖』と言う名前の、薔薇の形をした輝水晶がトップについてる可愛い短杖ワンドを取り出す。

 2~3回軽く振れば、輝水晶が乳白色に光り、辺りが明るくなる。

 さっき、クリス達は、魔力温存に松明トーチを使ってたけど、いつもは私のこの杖で、ランタン代わりにしていた。
 これ、誰が振っても光るので、魔力要らないんだよね。ふふふ

 一度真っ暗になったから自信ないけど、来た道はこっちだよね?

 入ってからそんなに歩いてないから、たぶん大丈夫だろう。


  *******


 方角的には間違ってなかった。

 だって、反対側に、奥に向かうアレフ達4人分の足跡があったんだもん、こっちの私も含めた5人分の逆向きの足跡が、来た道のはず!
 だけど、なんでかな、真っ直ぐ来たはずなのに、分かれ道に行き当たった。

 湿った土の地面。複数の足跡。

 私のピンキーレースシューズの可愛い足跡が、後から入って来たんだろう人達の足跡で踏み消され、どっちから来たのか解らなくなっていた。
 ここで、一度戦闘があったらしい。幾つもの足跡が激しく乱れていて、どちらの方向にも人の足跡がたくさんあった。

 来た方向から見て、一本道のはずが鋭角に三つ叉に別れていて、T字路や横に脇道があったのなら来る時に気づいただろうけど、まるで支流が本流に合流する川の如く奥へと向かっていたので、まったくどれが来た道か解らない。

「う~ん、印を定期的につけておくか、ちっちゃな携帯松明トーチじゃなくて、最初からこの短杖ワンドを使ってれば、分かれ道があるのが来る時見えてたかも……」

 などと、今後悔しても仕方ない。

 右の細い道は、足跡が古そう。細くて狭いし、複数の人が歩くには向かないから違うと思う。
 近道や宝箱とか、何かあるか見にいって、魔物に襲われたら逃げようがないし、やめとこう。

 左の道は奥へ向かう足跡も、出口(だといいなぁ)へ向かう足跡もあって、人が往復してるのは判る。でも、乱れた足跡が少ない。

 真ん中のは、幅といいたくさんの足跡といい、心情的には来た道に見える。
 けど「ここで襲われました」的な足跡がいっぱいで、なんだか行きたくない。

 でも、来る時、分かれ道があったことに気づかなかったから、そんなに道がくねっていたとは思えないし、この一番広い、奥へと続く道に真っ直ぐな真ん中を通って来たと思う。

 どちらが正解かな。

 こういう時、記憶力もいいクリスが、何か特徴を見つけたり状況を見て判断する。
 それでも決定打に欠ける時は、リーダーのアレフが決めるのだ。
 あまり、こういう事にエトガーが口を挟むことはない。
 キャロラインも、細かいことに文句を言いはするものの、逆らったりはしない。

 私は、みんなのやる通りについていくだけ。

 ──みんなと一緒が楽しかったし、楽だったなぁ








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