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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――

12、入団テスト?

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 深い思考から戻ってきたアレクサンドロは慌てて釈明をすると、セレナに入団テストを受けるように話しを進めてくれた。団長推薦ということで魔導騎士団にやってきたセレナは、目論み通りなんとか即日の入団テストを受ける事が出来るようだ。

 本来であれば、団長推薦で即入団だったのだろう。ただ、そんな状況で入団できたところでなんの信用も得られない上に身分を怪しまれる事満載だと不安を吐露すれば、取り合えず入団テストを受けられる様にしてくれたのだ。少しでも自身を見てもらえる機会を与えてもらえるなら、それだけいいのだ。

 ――落ちる気なんて、ないわよっ

 見た目の若さからなのかなんなのか、若干の舐められた態度も気になる処ではあるのだが――。

 ――入団テストかぁ……張り切っちゃおっ

 その内容は、魔の森で魔石を集めてくるというもの。大きさや個数の指定はなく、既定の時間だけが告げられた。魔の森へは魔導騎士団の建物の脇から直接出られる扉が設けられている。非常時などに騎士団が出動しやすくする為だとかの説明を受けた。これは秘密事項で、他言無用だそうだ。魔導騎士団に受からなければ魔法契約で城内で知ったことを喋れない様にするらしい。受かっても他言無用だが、団員内で話すこともあるのでその限りではないのだ。

 魔石を採取後、その総量で評価しその結果入団が決まるという。

 ――大きいの一つ狙いでも、小さいの大量狙いでも良いってことねっ
 ――でも……普通って、どの位の量なのかな……?

 詰所から繋がる王城の敷地北西にある魔の森へと繋がる頑丈な門から唯1人、魔の森に入るはずのセレナは振り向いてアレクサンドロに質問を投げ掛けた。

「あのっ、合格するにはどの位の量が必要なんですか?」
「…獲れるだけでいいんだよ」

 一見、優しげな笑顔。だが、その目はたいして取れもしないくせに何を言っいるんだ? とでも言っているようにも感じる。それに怯まずにセレナは被せるように質問した。

「えっでも、一種類だけ狩りすぎて……生態系とか崩したらまずいですよね?」
「はぁ!?」
「えっ?」

 ――生態系、崩さないのは当たり前かっ

 きょとんとした顔を返すセレナにアレクサンドロの表情も少し変わった。オレンジ色のもじゃもじゃの髪を手で搔き、一度口を引き結び眉間にしわを寄せてしまった。

「お嬢さん…どんだけ獲るつもり?」
「獲れるだけ…と言うなら、時間の限りいくらでも?」
「お……んん? お嬢さん、魔石とったことあるの?」

 オレンジ色の髪の隙間から見える翡翠の目は大きく見開かれている。

 ――とったことないと思われてたのか…ハハ
 ――もしそうなら、魔の森に一人で入って魔物と戦おうなんて、無謀なことできないでしょ…
 ――それとも、その前に逃げ出すと思ってたのかな……?

 チラリと見れば翡翠の目はしっかりとこちらを見ている。

「魔石を採取した事も、その為に魔物を倒したこともありますよ? 多少でもできなければ、ここにあたしはいません」

 顎に手を当て、もう片方の手を自分の腰に添えて身を屈めてセレナの表情を覗き込む翡翠の目は、何かを測りかねているようだ。
 
『埒が明かないわ 姫』
『んー? 』
『最初の狩りでとった魔石ペンダントにしてたでしょそれ見せてあげればいいんじゃない?』

 ――それもそうか…これでどれくらいとればいいか目安がわかるわねっ

 セレナは「あの」と、声をかけてオレンジのもじゃもじゃ頭を見つめた。アレクの目の前に伸ばした右手を開くと、其処には直系10cm程の滴型の深い水色の魔石がある。

「……これは?」
「…8才の時、はじめて一人(星獣達と)で討伐したケルピーの魔石ですっ」
「……ケルピー?」
「はい ……ケルピーは、水辺に棲む…」
「あ…うんケルピーは知ってる……ケルピーに会ったの?」

 ケルピーとは稀に水辺に出現する馬に魚の尾の幻獣とも言われている魔獣だ。まず出会う事が稀な上、それなりに強く圧倒的に倒さねば魔石化しない為、その魔石自体市場に出回ることは殆どないとされている。

「ええ……会わないと倒せませんよ?」

 小首をかしげるセレナ。嘘をついているようには見えないが、何とも信じがたい話だった。

「お嬢ちゃんが倒したって? まさかそんな…」

 それではまるでどこかから貰って来たとでもいうのだろうか!? 怪訝な表情のアレクに、セレナは困ってしまった。

 
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