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序章
10、ヤドリ木亭
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深い緑と透き通る湧水が豊かな大地が広がる"クラーワ王国"
国土こそ小さいが深い断崖の岩山に囲まれている立地と、星に護られ湧き出るエレメントの恩恵を受けている為、他国からの侵略を許したことはなく、その豊かな資源を使い有益な貿易を行って栄えてきた。
星を詠む魔導士を従え、民を導く魔法が好きな王様の居城は、小高い岡の上に鎮座し賑やかな城下町を見守るようにその白亜を誇っている。
城下町は賑やかで人々が行き交い、その回りを立派な外壁が囲っている。それは、外に広がる魔の地から現れる魔物の侵入を許しはしない強靭なものだ。
土地が豊かで実りも多ければ、魔物も多く発生する。 クラーワ王国には王都の他、外壁に守られた街が点在している。そのいくつかは王都の東に位置するガーランド侯爵領にもあり、領土の王都側に『オレア』、東に『ラウルス』という大きめの街があり、そのさらに東の港町『アルガ』と呼ばれるスペンサー領の街も外壁に守られている。その他にも町は点在し、地図に名のない集落には魔物避けのまじないがかけられた魔石が置かれ、その地を魔物から守っている。
妖精のような姿の手のひらサイズの乙女を肩に乗せ、金色の髪をサイドの高い位置でひとつに結わいた娘は、ぐるりと周囲を見渡した。幼馴染と頼りになる大人に置いていかれる形になってしまったが、自身の足で向うのが本来の姿だともいえる。
――いろいろイレギュラーすぎて、なんかもう疲れてるかも…
――それにしても、すごいなぁ…人がいっぱいっ
――さすが王都ってとこね
ガヤガヤと賑わう街道。ここに来るまでにはあまり見かけなかった人種も多い。待ちゆく若者の格好もパリッとしていて、なんだかかっこいい。地元の港町ではあまり見かけない意匠をこらしたものも見かけられる。
『あんまりキョロキョロして、田舎者って舐められないようにしなきゃねっ スピカ』
『……姫のかわりにキョロキョロしてあげるわっ』
声に出さずに話しかけると、頭の中で鈴の音の様な声がする。姫と呼ばれた金髪の娘セレナの肩に座ったスピカが、興味深そうにキョロキョロと周りを見回している。
漆喰壁や、レンガ造りの家が並んでいる。色とりどりの屋根がまとまりがない様で、計算されているのか何ともいい印象を与えてくれる街並みだ。店の軒先からパンやお菓子の甘い香りが漂ってくるが、セレナはそちらに目を向けない様に足早に通りすぎた。
――お腹すいちゃう
――さっさと用事済ませて、今日は早めに宿に行こう
――後でいくらだって、散策は出来るもんねっ
傍らを見れば、スピカが楽しそうに笑っている。考えを詠まれたように『落ち着いたらルードヴィヒに案内させましょう』と囁かれた。それは実に楽しそうだと、セレナも笑う。
『じゃあ、今日のお詫びにおいしいもの奢ってもらおうねっ』
『あっま~い、焼き菓子が食べたいわ』
『あたしもっ ふふっ』
ついつい笑みが漏れてしまう。立ち行く人達に変に思われない様にと、セレナは口を引き結んだ。だがワクワクする気持ちは止められそうもない。スピカに案内されてここまで来れた。もう少し先に城のある小高い丘へと登る階段がある。
――あともうちょっとねっ
――やっと到着だぁ
ホッと一息洩れる。ありがたい事に駅を出たところから案内板に沿って歩けば王城までたどり着けるようになっていた。階段の中腹にある城門までもう少しだ。
セリーナは意気揚々と階段を駆け上がった。
国土こそ小さいが深い断崖の岩山に囲まれている立地と、星に護られ湧き出るエレメントの恩恵を受けている為、他国からの侵略を許したことはなく、その豊かな資源を使い有益な貿易を行って栄えてきた。
星を詠む魔導士を従え、民を導く魔法が好きな王様の居城は、小高い岡の上に鎮座し賑やかな城下町を見守るようにその白亜を誇っている。
城下町は賑やかで人々が行き交い、その回りを立派な外壁が囲っている。それは、外に広がる魔の地から現れる魔物の侵入を許しはしない強靭なものだ。
土地が豊かで実りも多ければ、魔物も多く発生する。 クラーワ王国には王都の他、外壁に守られた街が点在している。そのいくつかは王都の東に位置するガーランド侯爵領にもあり、領土の王都側に『オレア』、東に『ラウルス』という大きめの街があり、そのさらに東の港町『アルガ』と呼ばれるスペンサー領の街も外壁に守られている。その他にも町は点在し、地図に名のない集落には魔物避けのまじないがかけられた魔石が置かれ、その地を魔物から守っている。
妖精のような姿の手のひらサイズの乙女を肩に乗せ、金色の髪をサイドの高い位置でひとつに結わいた娘は、ぐるりと周囲を見渡した。幼馴染と頼りになる大人に置いていかれる形になってしまったが、自身の足で向うのが本来の姿だともいえる。
――いろいろイレギュラーすぎて、なんかもう疲れてるかも…
――それにしても、すごいなぁ…人がいっぱいっ
――さすが王都ってとこね
ガヤガヤと賑わう街道。ここに来るまでにはあまり見かけなかった人種も多い。待ちゆく若者の格好もパリッとしていて、なんだかかっこいい。地元の港町ではあまり見かけない意匠をこらしたものも見かけられる。
『あんまりキョロキョロして、田舎者って舐められないようにしなきゃねっ スピカ』
『……姫のかわりにキョロキョロしてあげるわっ』
声に出さずに話しかけると、頭の中で鈴の音の様な声がする。姫と呼ばれた金髪の娘セレナの肩に座ったスピカが、興味深そうにキョロキョロと周りを見回している。
漆喰壁や、レンガ造りの家が並んでいる。色とりどりの屋根がまとまりがない様で、計算されているのか何ともいい印象を与えてくれる街並みだ。店の軒先からパンやお菓子の甘い香りが漂ってくるが、セレナはそちらに目を向けない様に足早に通りすぎた。
――お腹すいちゃう
――さっさと用事済ませて、今日は早めに宿に行こう
――後でいくらだって、散策は出来るもんねっ
傍らを見れば、スピカが楽しそうに笑っている。考えを詠まれたように『落ち着いたらルードヴィヒに案内させましょう』と囁かれた。それは実に楽しそうだと、セレナも笑う。
『じゃあ、今日のお詫びにおいしいもの奢ってもらおうねっ』
『あっま~い、焼き菓子が食べたいわ』
『あたしもっ ふふっ』
ついつい笑みが漏れてしまう。立ち行く人達に変に思われない様にと、セレナは口を引き結んだ。だがワクワクする気持ちは止められそうもない。スピカに案内されてここまで来れた。もう少し先に城のある小高い丘へと登る階段がある。
――あともうちょっとねっ
――やっと到着だぁ
ホッと一息洩れる。ありがたい事に駅を出たところから案内板に沿って歩けば王城までたどり着けるようになっていた。階段の中腹にある城門までもう少しだ。
セリーナは意気揚々と階段を駆け上がった。
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