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05:ヨハンが濃い
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「よはん?」
レイハルトは魔法について学ぶことについては大賛成であったが、ヨハンがなぜここまで喜んでいるのかわからなかった。さっそうとフェリクスのもとへ向かってはいるが、どう見ても浮足立っている。日頃のヨハンから考えれば全く想像もつかない様子で理由もわからないためいろんな意味で恐い。
「旦那様、いらっしゃいますか」
フェリクスの返事を待って、部屋へ入った。
「ヨハン、レイハルトを抱えてどうした」
「旦那様、レイ坊ちゃまに魔法をお教えしたいのですが、その許可をいただきに参りました」
ヨハンの申し出が難とも唐突であったのでレイハルトは少々動揺したものの、自身も魔法を学びたかったので、うんうんと肯きながらフェリクスを見た。
「ヨハン、唐突になんだ。レイはまだ2歳にもならない。何か理由があるのか」
フェリクスの疑問はもっともである。レイハルトはまだ一歳と半年であるし、何よりヨハンの様子がおかしい。何か理由があるはずだが、どうにも察することができない親子二人であった。
「旦那様、レイ坊ちゃまはすべての属性を持ち、且つ魔力量は魔法師団長以上です。現陛下の教育係を務めていた私が保証いたします」
「――なに」
「――え」
二人はレイハルトの才能にも驚いたが、それよりもヨハンの経歴に面食らっていた。もちろんレイハルトの全属性や魔力量は凄いことではあるが、ヨハンについては想像もしていなかった。二人が驚くのも無理ない。そう、見た目40代前半のイケオジなヨハンは国王の教育係をしていた。いや、それだけではなく先代も、そのまた先代も、遡るのも面倒なほど前の国王の教育係を担っていた。一体何歳なのか、聞かないほうが良いこともある。
しかしヨハンはこの事実を隠していたわけではなく、ただ聞かれなかったから話さなかったに過ぎない。公爵家の家令になったのは30年も前であり、当時生まれて間もないフェリクスはこのことを知る由もない。レイハルト然りである。
まさかそんな人物が我が家の家令を務めているとは思いもよらなかったフェリクスと、じゃあこの人は一体何歳なのかと困惑するレイハルトであった。
そんな二人を置いてけぼりにしながらヨハンはレイハルトについてつらつらと語った。
「先ほども申しました通りレイ坊ちゃまは全属性の適性をお持ちです。加えて魔力量は我が国の魔法師団長に劣りません。現状でのことですので成長されるにつれてより増えるでしょう」
――おん?
「また、加護にいたっては私でも視たことのない創造神の加護をお持ちです。加護の恩恵までは知り得ませんでしたが、これまで誰も受けたことのない加護です」
――おおん?
「――それは本当か」
「本当ですとも。坊ちゃまはこの国一、いえ、この世界一の魔法使いになるお方です」
自分よりも自分に詳しいヨハンはいったい何者だろうか。そもそも、この世界は他人のステータスをそんな容易に知り得るのか。様々な疑問はあったものの自分も魔法を使えることに喜び安堵したレイハルトだった。
「ところでヨハン、お前は一体何者だ」
自分の息子の能力について聞きたいことはあったもののそれどころではなく、フェリクスはヨハンについて尋ねた。
「先ほども申しました通り、私は現国王陛下の教育係を務めておりました。捕捉しますと、現陛下だけではなく初代国王陛下のご子息から務めさせていただきました」
「初代のご子息からって、300年も前じゃないか。ということは、まさかお前は魔人族なのか」
――ふぇっ?魔人族?
魔人族が目の前にいることにレイハルトは驚いた。これまで読んできた本には魔人族は北の小国で閉鎖的な生活を営んでおりめったに他種族とは関わりがないと学んでいたのに。
「はい、魔人族ですよ。大旦那様はご存知でしたが、そういえば旦那様にはお話ししていませんでしたね。」
しれっと話すヨハンに多少イラッときたフェリクスだが、覚えている限り自身の幼少時代から外見が変わらなかったことを思い出し、不思議に思わなかった自分が悪いとヨハンに当たりたい苛立ちを無理やり抑えこんだのだった。
「まさかお前が魔人族だったとは。それに父上が私に話さなかったのには不服でしょうがないが、そうだな」
先ほどヨハンから聞いた話では前世の異世界ファンタジーによくある魔人族との対立はないと聞いていたのに。フェリクスがなぜそんなにも複雑な顔をしているのか理解できないレイハルトは首を傾げた。
「まじんじょくめなの?」
「いや、魔人族が駄目というのではなく、魔人族の存在がとても稀有なものなんだ」
――稀有、とは
「最後に人族との接触があったとされているのが150年も前のことなのだが、それも違ったのだな。まさか、我が家にいるとは」
魔人族は北の小国に集っているが他国との交流や貿易はなく、それどころか小国の存在自体もあやふやであった。他種族からすれば北にあるということ以外わからない国の人々なんていうものは伝説の存在と大差ないのだ。フェリクスが言葉数少なく驚いているのも当然である。
「魔人族は他種族と交流を持たないと言われていますが、皆さんの想像よりも私たちはいろいろなところにいますよ。例えば、そうですね、私の勤めていた教育係などは他国でも魔人族であることが多いですね」
「……」
この世界は魔人族に支配されているのでは、と思わないでもないフェリクスとレイハルトであった。
レイハルトは魔法について学ぶことについては大賛成であったが、ヨハンがなぜここまで喜んでいるのかわからなかった。さっそうとフェリクスのもとへ向かってはいるが、どう見ても浮足立っている。日頃のヨハンから考えれば全く想像もつかない様子で理由もわからないためいろんな意味で恐い。
「旦那様、いらっしゃいますか」
フェリクスの返事を待って、部屋へ入った。
「ヨハン、レイハルトを抱えてどうした」
「旦那様、レイ坊ちゃまに魔法をお教えしたいのですが、その許可をいただきに参りました」
ヨハンの申し出が難とも唐突であったのでレイハルトは少々動揺したものの、自身も魔法を学びたかったので、うんうんと肯きながらフェリクスを見た。
「ヨハン、唐突になんだ。レイはまだ2歳にもならない。何か理由があるのか」
フェリクスの疑問はもっともである。レイハルトはまだ一歳と半年であるし、何よりヨハンの様子がおかしい。何か理由があるはずだが、どうにも察することができない親子二人であった。
「旦那様、レイ坊ちゃまはすべての属性を持ち、且つ魔力量は魔法師団長以上です。現陛下の教育係を務めていた私が保証いたします」
「――なに」
「――え」
二人はレイハルトの才能にも驚いたが、それよりもヨハンの経歴に面食らっていた。もちろんレイハルトの全属性や魔力量は凄いことではあるが、ヨハンについては想像もしていなかった。二人が驚くのも無理ない。そう、見た目40代前半のイケオジなヨハンは国王の教育係をしていた。いや、それだけではなく先代も、そのまた先代も、遡るのも面倒なほど前の国王の教育係を担っていた。一体何歳なのか、聞かないほうが良いこともある。
しかしヨハンはこの事実を隠していたわけではなく、ただ聞かれなかったから話さなかったに過ぎない。公爵家の家令になったのは30年も前であり、当時生まれて間もないフェリクスはこのことを知る由もない。レイハルト然りである。
まさかそんな人物が我が家の家令を務めているとは思いもよらなかったフェリクスと、じゃあこの人は一体何歳なのかと困惑するレイハルトであった。
そんな二人を置いてけぼりにしながらヨハンはレイハルトについてつらつらと語った。
「先ほども申しました通りレイ坊ちゃまは全属性の適性をお持ちです。加えて魔力量は我が国の魔法師団長に劣りません。現状でのことですので成長されるにつれてより増えるでしょう」
――おん?
「また、加護にいたっては私でも視たことのない創造神の加護をお持ちです。加護の恩恵までは知り得ませんでしたが、これまで誰も受けたことのない加護です」
――おおん?
「――それは本当か」
「本当ですとも。坊ちゃまはこの国一、いえ、この世界一の魔法使いになるお方です」
自分よりも自分に詳しいヨハンはいったい何者だろうか。そもそも、この世界は他人のステータスをそんな容易に知り得るのか。様々な疑問はあったものの自分も魔法を使えることに喜び安堵したレイハルトだった。
「ところでヨハン、お前は一体何者だ」
自分の息子の能力について聞きたいことはあったもののそれどころではなく、フェリクスはヨハンについて尋ねた。
「先ほども申しました通り、私は現国王陛下の教育係を務めておりました。捕捉しますと、現陛下だけではなく初代国王陛下のご子息から務めさせていただきました」
「初代のご子息からって、300年も前じゃないか。ということは、まさかお前は魔人族なのか」
――ふぇっ?魔人族?
魔人族が目の前にいることにレイハルトは驚いた。これまで読んできた本には魔人族は北の小国で閉鎖的な生活を営んでおりめったに他種族とは関わりがないと学んでいたのに。
「はい、魔人族ですよ。大旦那様はご存知でしたが、そういえば旦那様にはお話ししていませんでしたね。」
しれっと話すヨハンに多少イラッときたフェリクスだが、覚えている限り自身の幼少時代から外見が変わらなかったことを思い出し、不思議に思わなかった自分が悪いとヨハンに当たりたい苛立ちを無理やり抑えこんだのだった。
「まさかお前が魔人族だったとは。それに父上が私に話さなかったのには不服でしょうがないが、そうだな」
先ほどヨハンから聞いた話では前世の異世界ファンタジーによくある魔人族との対立はないと聞いていたのに。フェリクスがなぜそんなにも複雑な顔をしているのか理解できないレイハルトは首を傾げた。
「まじんじょくめなの?」
「いや、魔人族が駄目というのではなく、魔人族の存在がとても稀有なものなんだ」
――稀有、とは
「最後に人族との接触があったとされているのが150年も前のことなのだが、それも違ったのだな。まさか、我が家にいるとは」
魔人族は北の小国に集っているが他国との交流や貿易はなく、それどころか小国の存在自体もあやふやであった。他種族からすれば北にあるということ以外わからない国の人々なんていうものは伝説の存在と大差ないのだ。フェリクスが言葉数少なく驚いているのも当然である。
「魔人族は他種族と交流を持たないと言われていますが、皆さんの想像よりも私たちはいろいろなところにいますよ。例えば、そうですね、私の勤めていた教育係などは他国でも魔人族であることが多いですね」
「……」
この世界は魔人族に支配されているのでは、と思わないでもないフェリクスとレイハルトであった。
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