私も、大好きだよ。

ちさめす

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遺品

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「おばさんこんにちは」

「待ってたよ友次くん。葬儀以来だね」

「そうですね」

 ◇

「ここに来ると妙に落ち着くんです。まだ美里がいるような気がして」

「そうねー」

「本当に最後まで友次くんに助けられたわ」

「そんなことないですよ」

「そんなことあるわよ。奇病っていうのかしら? この病気にかかる人はそう多くなくて、発症からだいたい一年、長くても二年で心臓は止まってしまうみたいなの。だけど、あの子は三年も生きることができた。それは友次くんの存在が影響してるんじゃないかって私は思うの」

「……みんなのおかげですよ」

「ふふ、そうかしら? それでも、最後のあの笑顔を守ってくれたのは友次くんだった。私は今でもそう思うのよ?」

「おばさん……。やめてくださいよ、美里が見てるかもしれないのにまた泣いてしまうじゃないですか」

「ふふ」

 ◇

「おばさん」

「どうしたの?」

「線香は今あげ終わったんですけど、その、美里の部屋に入ってもいいですか?」

「もちろんいいわよ」

 ◇

「この部屋はいつ来ても綺麗だよなあ。……そういや美里のやつ、いつもベットで本を読んでたな」

「……友次」

「って声をかけてくるのがどれほど嬉しかったか」

 ◇

「このクローゼットも懐かしいな。……普通泊まりに来た人をクローゼットで寝かせるか?」

「……自業自得」

「とかいいそうだよな。……まあ寝相が悪い俺のせいなんだけど」

 ◇

「そうだそうだ。このピンクのハンカチがかかってあるとこ、あいつの宝物があるんだったよな。美里の宝物か~。……どれどれ~」

「……見ないで」

「っていってそうだけど、見ちゃうもんね~って……おいおい、なんだよこれ……」

「……」

「てるてる坊主に、桃のピン……俺があげたやつばっかじゃねえかよ……」

「……」

「懐かしいな……。美里のやつ、大事にしまってたのかよ……」

「……」

「これが、あいつの宝物か……」

「……」

「美里……」
 
 
 
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