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急変
しおりを挟む「……おばさん!」
「友次くん!」
「美里は!? どうなんですか!?」
「今は集中治療室にいるわ。心不全で意識がなくなったそうなの」
「心不全!? じゃあ、もう……」
「……友次くん、信じるのよ。最後まであの子のことを」
「はい……」
◇
「先生! 手術は? 美里はどうなりましたか!?」
「一命は取り留めましたが、依然脈拍は低いままです。これ以上の手術は非常に難しくなります。次にまた意識を失うことがあれば、その時は――」
◇
「あの子、ぐっすりと眠ってるね。……なんだか幸せそうな寝顔してるね」
「そうですね」
「……友次くん、ごめんなさいね」
「え? なにがですか?」
「ずっとあの子のことを考えてくれて。私はてっきり、あの子の気持ちを優先することがあの子のためだとばかりに思っていたの。たとえ間違った考えでも、そうすることが親のやるべきことだと思ったから。でも、違った。今もこうして笑顔で眠ることができてるのも友次くんのおかげね」
「よしてくださいよ。なんにしても、美里のことを想う限りは全部正しいと俺は思ってますから」
「友次くん……。最後に……あの子を幸せにしてくれて、本当に、本当にありがとう……」
◇
「……」
「……」
「おばさん、美里は俺が見ときますから。……もう深夜の二時ですよ。俺は平気ですから、少し休んでください」
◇
『ピー、ピー、ピー』
「え、なに!? なんだ? 美里? おい美里? しっかりしろ美里! ……そうだ、ナースコール」
『ピー、ピー、ピー』
「早く来てくれ……美里が……美里が……! 機械に文字が出てる……心拍数、低下……?」
「友次くんどうしました!?」
「看護師さん、美里が……美里の心拍数が……!」
「落ち着いて友次くん! 今医師に連絡をしたから!」
「美里……美里……」
「美里ちゃんに電気を流します。友次くんちょっと離れて」
「美里……!」
◇
「おばさん!」
「友次くん、見ててくれてありがとう。美里は?」
「今は病室で……」
「病室……?」
「もう手術に耐えられる身体じゃないって……だから電気ショックと投薬で……心臓を……うう……」
「……」
「おばさん……美里は、もう……」
「友次くん、こういう時こそ側にいなきゃダメじゃない」
「おばさん……」
「ほら! いくよ!」
◇
「美里……!」
「だめです。脈拍は安定しません!」
「これ以上の電圧は危険だ。心臓マッサージに切り替える」
「美里……お願いだ……死なないでくれ……もう一度、お前の声を聞かせてくれよ!」
『ピー、ピー、ピー』
「美里!!!」
「だめです! 血圧が上がりません!」
「来年も一緒に桜を見よって約束したじゃねえか。やっとお前と本音をいい合えたのに、これからだったのに……」
『ピッ、ピッ、ピッ、ピッ』
「ああ……死ぬな……起きろよ美里……!」
「だめです先生! もうこれ以上は!」
「ああ神様……美里を救ってくれよ! 俺が死んでもいいから! 俺はどうなってもいいから! 頼むよ、誰でもいい。美里を助けてくれよ! ……くっそおおおお!」
『ピーーーーー』
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