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七夕
しおりを挟む「今日も元気にしてるか~?」
「……うん」
「今日はこれを持ってきた!」
「……なに、それ」
「短冊だよ」
「……七夕」
「そうそう! もうすぐ七夕だからな。一年に一度の……願いが叶う素晴らしい日がもうすぐ来るんだ~!」
「……」
「どした? 下を向いちゃってさ」
「……願い、叶う?」
「当たり前やん! 織姫と彦星が俺たちの願いを叶えてくれるんだぜ? さあ今年こそは願いごと書いとけって」
「……適当、なこと……いってる」
「いやいや適当じゃないって! ……ほら、これを見てみろ」
「……」
「……これは柳士の短冊で、これは奈海の短冊! これ全部クラスメイトの短冊な。なんでみんなが書いてるか。そうそれは、みんなが信じてるからなんだよ。願いが叶うってな! だから美里も書こう!」
「……なんで、みんなのが……ここに」
「ふっふっふ。俺もいろいろと考えててさ、去年もお前に短冊を書かせようとしたけど結局書かなかっただろ? だから今年こそは美里に願いを書いてもらおうとみんなに協力してもらったんだよ」
「……私、書かない……」
「それはできない相談だ。ほれ、続けてこれを見よ!」
「……先生の、プリント」
「ああ。これは宿題なんだわ。短冊を書かないと内申点を一にするっていう罰つきのな」
「……」
「真面目な美里ならわかるだろ? 宿題はちゃんとやっとかないとな!」
「……どうして」
「書いてほしいんだよ。お前の願いを、その短冊にな」
「……」
「頼む! この通りだから! 書いてくれ!」
「……わかった」
「ほんとか!? ありがとうな!」
◇
「書き終わった?」
「……ねえ」
「ん?」
「……みんなの、短冊……貸して」
「ほいよ。……って、あああ! 混ぜたらどれが美里の短冊かわからんようなってもうたやんけ!」
「……友次の、考え……わかる」
「やりおるな……美里……」
◇
「それじゃみんなの短冊を、この笹につけていくか」
「……友次」
「ん?」
「……なんで、笹が……ある?」
「え? 短冊って笹につけるもんだろ?」
「……いや、そうじゃ……なくて」
「ほら! そんなこといってんとつけてくぞ~」
「……」
◇
「美里、これ見てみ? 百々の願い事、『道端に王子様が落ちてますように』だって。落ちてるってなんやねん落ちてるって」
「……これ」
「どれどれ……奈海の願いごとか。『みんなが幸せになれますように』か。あいついいこと書くねんなあ」
◇
「よしできた! この笹を撮ってっと……」
「……なに、してる?」
「ああ。完成したら写真をクラスチャットに載せる約束なんだよ」
「……」
「これでよし。さて、そしたら……これはどこに飾っとく?」
「……え?」
「この笹はここに置いていくから。その方が元気になるだろって。ちなみにおばさんには了承済みだぜ」
「……邪魔」
「邪魔っていうな!」
◇
「美里?」
「……」
「疲れて寝ちゃったか。……寝顔は天使みたいだな。……とりあえず今のうちにあいつの短冊を見つけるか」
◇
「あったあった! 名前を書いてない短冊も結構あるけど字でわかったわ」
『桜が見たい』
「桜か……。乙女な願いごとだなあ」
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