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従者の選択

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この村では、補給部隊との合流を予定していた。
三日後には補給を完了し、次の目的地へと旅立つ。そのはずだった。

しかし、三日後に着くはずだった補給部隊は、途中で魔物の襲撃に遭い、その到着を延ばしていた。

結果、リンデルはこの三日間、毎日夕食の時間を男と共に過ごしていた。

初めは酷く張り詰めた様子だった男も、次第に緩み、それにつられるように、リンデルは男に対して日に日に幼い表情を見せるようになっていた。

そんな勇者の姿に、ロッソはこれ以上の傍観は出来ないと判断した。

「……失礼ですが」
男は、酒場を出てしばらく歩いたところで背にかけられた声に、ゆっくりと振り返った。
「これ以上、勇者様に会わないでいただけませんか」
無表情に近い顔で男をじっと見つめる小柄な男。
それはこの三日間、男とリンデルとの会話をずっと黙って聞いていた勇者付きの従者だった。
酒場でリンデルと別れてから、かなりの時間が経っている。
男はリンデルが帰った後もなかなか帰る気になれず、その場に残って金色の青年の余韻を味わっていた。

「あいつが、そう言ったか?」
一人で来ているところを見るに、単独行動なのだろう。と男は思う。
それでも、聞かずにはいられなかった。
「……いいえ……」
目を伏せて従者が答える。
その素直な答えに、男は口端を少しだけゆるめた。

「分かった。お前達がこの村を発つまで、もうあの酒場には寄らない」

男の言葉に、ロッソは弾かれるように顔を上げた。
「……良いのですか……?」
思わず聞き返す。自身が頼んだにもかかわらず。
あんなに、二人は強く惹かれ合っていたのに。
近くで話を聞いていて、それが分からないロッソでは無い。
だからこそ、その答えがにわかに信じられなかった。

「あいつを惑わせるつもりはない。あんな立派な姿が見られて……俺はもう、十分だ」
男はそう告げると、ロッソに背を向けた。

その言葉に、ロッソは確信する。
やはり、この男はリンデルを知っている。
そして、彼の幸せを願っている。
だからこそ、何も言わずに去るのだと。
「ありがとう、ございます……っ」
ロッソはその背に深々と頭を下げ、精一杯の謝意を伝える。

振り返る事なく立ち去る男の後ろ姿を見送りながら、ロッソはこれで全てが元通りになるだろうと、にわかに安堵していた。

しかし、翌日、男の姿を見失ったリンデルの動揺は、ロッソの想定を遥かに超えていた。
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