140字BL缶詰

2019

6月①意地っ張り/春眠/日向ぼっこ/観察眼

意地っ張り

眠気にはコーヒー。
だがあくびに効くものは何だろう。
噛み殺しても噛み殺しても溢れてくる。
課題をこなしていた。
何故か君と張り合う形で。
携帯の着信音。
メッセージだ。
『俺はもう142ページまでいったぜ』
苦笑がこぼれた。
「負けてられないね」
あくびに効くのは
意地っ張りな君だと知った。

#140字小説


春眠

春眠暁を覚えずか。
起床。
それなのに太陽が真上に来ていた。
自室の扉を開くと
ありえない顔がそこに。
「えっ！」
すると笑顔で君は答えた。
「トイレ借りたよ。
遊びに来たが
寝ているみたいだったから
起きるまで待ってた」
携帯の画面を見せられる。
僕の寝顔写真。
おいおい、
春の夢であってくれ。

#140小説

日向ぼっこ

活字は滝になって下方へ流れていく。
唸りながらページをめくる。
乾燥する空気に混じり始めた
温かなそれがくすぐったい。
僕と君は草原に寝転び陽光を浴びていた。
「なあ、この習慣、
いつから始まったんだっけ」
本をずらして君を見る。
「さあな」 
分からなくなるくらい
一緒にいた。


観察眼

そんな！　
買い出しの道中、
財布がないことに気がついた。
慌てて道を引き返していたら、
すれ違いざまに声。
「あれ、お前どうしたんだ？」
君だ。
「大変なんだ、
財布を落としちゃったみたいで」
「上着のポケットは？」
「へ？」
……あった。
ニヤリと笑う君。
その観察眼には敵わない。


2019.06.26