告白大作戦

阿沙🌷

文字の大きさ
上 下
1 / 1

告白大作戦

しおりを挟む

「なあ麗二、頼みがあるんだけれど」
 危険人物・剛が真剣な表情で俺に詰め寄ってくる。
「やめてくれ、トラブルメーカー」
 剛とは小学校の頃からの縁だ。
 嫌な経験は大抵彼が発端になることが多い。
「お前に関わるといいことがない。この間も、火事に遭いそうになったし、空からこんにゃくが降ってきたこともあった」
「だが、大事には至らなかっただろ! 大丈夫だ! オレが麗を絶対に守る! 一生かけても守り通す!」
 そういうセリフは男子高校生が男子高校生に言い放ってもいいのだろうか。
 鼻息荒く俺に突っかかって来るこの男はなんだか間違っている気がする。
「頼むから話だけは聞いてくれ! な、神田、森沢!」
 彼の言葉で初めて彼の背中の後ろに人物が立っていることに気が付いた。
 剛とは幼少期からの知り合いだとかいって、何かと仲良くしている神田と森沢コンビだった。
「こいつらがどうしても行ってきてほしいところがあるんだそうだ。要はおつかいだよ、おつかい」
「へ? 俺と剛に?」
 買い物なら剛だけでいいじゃないか。
 なんだか怪しい。
「それが、ペアチケットなんだよ、遊園地の。期間限定のお土産品が欲しいっていうんでさぁ」
「なんで本人たちが行かないんだ」
「い、行けないことになった的な、なあ、そうだろ?」
 剛のセリフに全力で首を縦に振る二人組。
「うさん臭い! 俺は嫌だからな!」
 剛から逃げようと背中を向けようとしたが、剛に手首を掴まれ逃げられなくなる。
「……なあ、頼むよぉ」
「うっ」
 俺は何故かこの馬鹿のしょんぼり顔に弱い。
 心臓を突き抜けていく小さな痛みがシミを作ってじんわりと体中に広がっていくかのようだ。
「しかたないな、もうこれっきりだぞ」
 俺が何度も口にした言葉を聞いて剛は雄たけびをあげるようにして喜びに舞い上がった。


□■

「なあ、本当にやるのか?」
 ターゲットの後を付けながら森沢がつぶやく。
「ああ、やるって剛に約束しただろ?」
 神田が力強く頷いた。
 神田、森沢の二人は、遊園地に到着した剛と麗二にばれないよう二人を追跡していた。
 その手には怪しげなクラッカーが握られていた。
「今日こそ、剛が告白するって言うんだ。絶対応援してやろうな」
「そうだけど……また今回も失敗するんじゃ……」
「何言ってんだよ。今回は絶対うまくいくって。
この間の『夜のデート・キャンドルロードで愛の告白大作戦』では、ろうそくにつけようとしたマッチを草むらに落としてボヤ騒ぎを起しちゃったからな、今回はマッチは使わない!」
「『夜の怖い道でドキドキ吊り橋効果大作戦』も、神田が釣り糸に結びつけたこんにゃくを麗二の首筋に充てる前に、風でこんにゃくだけ落としちゃったもんな」
「道具にも抜かりはない! 安心安全、きちんとお店で売られていたものだ! あっ、ターゲットが動いた、追うぞ!」
 二人の背中が人ごみに見え隠れしながら遠ざかっていく。
 神田と森沢も慌てて人ごみの中に飛び込んでいった。

 (了)

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

保育士だっておしっこするもん!

こじらせた処女
BL
 男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。 保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。  しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。  園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。  しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。    ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

ストレスを感じすぎた社畜くんが、急におもらししちゃう話

こじらせた処女
BL
社会人になってから一年が経った健斗(けんと)は、住んでいた部屋が火事で焼けてしまい、大家に突然退去命令を出されてしまう。家具やら引越し費用やらを捻出できず、大学の同期であった祐樹(ゆうき)の家に転がり込むこととなった。 家賃は折半。しかし毎日終電ギリギリまで仕事がある健斗は洗濯も炊事も祐樹に任せっきりになりがちだった。罪悪感に駆られるも、疲弊しきってボロボロの体では家事をすることができない日々。社会人として自立できていない焦燥感、日々の疲れ。体にも心にも余裕がなくなった健斗はある日おねしょをしてしまう。手伝おうとした祐樹に当たり散らしてしまい、喧嘩になってしまい、それが張り詰めていた糸を切るきっかけになったのか、その日の夜、帰宅した健斗は玄関から動けなくなってしまい…?

処理中です...