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告白大作戦
しおりを挟む「なあ麗二、頼みがあるんだけれど」
危険人物・剛が真剣な表情で俺に詰め寄ってくる。
「やめてくれ、トラブルメーカー」
剛とは小学校の頃からの縁だ。
嫌な経験は大抵彼が発端になることが多い。
「お前に関わるといいことがない。この間も、火事に遭いそうになったし、空からこんにゃくが降ってきたこともあった」
「だが、大事には至らなかっただろ! 大丈夫だ! オレが麗を絶対に守る! 一生かけても守り通す!」
そういうセリフは男子高校生が男子高校生に言い放ってもいいのだろうか。
鼻息荒く俺に突っかかって来るこの男はなんだか間違っている気がする。
「頼むから話だけは聞いてくれ! な、神田、森沢!」
彼の言葉で初めて彼の背中の後ろに人物が立っていることに気が付いた。
剛とは幼少期からの知り合いだとかいって、何かと仲良くしている神田と森沢コンビだった。
「こいつらがどうしても行ってきてほしいところがあるんだそうだ。要はおつかいだよ、おつかい」
「へ? 俺と剛に?」
買い物なら剛だけでいいじゃないか。
なんだか怪しい。
「それが、ペアチケットなんだよ、遊園地の。期間限定のお土産品が欲しいっていうんでさぁ」
「なんで本人たちが行かないんだ」
「い、行けないことになった的な、なあ、そうだろ?」
剛のセリフに全力で首を縦に振る二人組。
「うさん臭い! 俺は嫌だからな!」
剛から逃げようと背中を向けようとしたが、剛に手首を掴まれ逃げられなくなる。
「……なあ、頼むよぉ」
「うっ」
俺は何故かこの馬鹿のしょんぼり顔に弱い。
心臓を突き抜けていく小さな痛みがシミを作ってじんわりと体中に広がっていくかのようだ。
「しかたないな、もうこれっきりだぞ」
俺が何度も口にした言葉を聞いて剛は雄たけびをあげるようにして喜びに舞い上がった。
□■
「なあ、本当にやるのか?」
ターゲットの後を付けながら森沢がつぶやく。
「ああ、やるって剛に約束しただろ?」
神田が力強く頷いた。
神田、森沢の二人は、遊園地に到着した剛と麗二にばれないよう二人を追跡していた。
その手には怪しげなクラッカーが握られていた。
「今日こそ、剛が告白するって言うんだ。絶対応援してやろうな」
「そうだけど……また今回も失敗するんじゃ……」
「何言ってんだよ。今回は絶対うまくいくって。
この間の『夜のデート・キャンドルロードで愛の告白大作戦』では、ろうそくにつけようとしたマッチを草むらに落としてボヤ騒ぎを起しちゃったからな、今回はマッチは使わない!」
「『夜の怖い道でドキドキ吊り橋効果大作戦』も、神田が釣り糸に結びつけたこんにゃくを麗二の首筋に充てる前に、風でこんにゃくだけ落としちゃったもんな」
「道具にも抜かりはない! 安心安全、きちんとお店で売られていたものだ! あっ、ターゲットが動いた、追うぞ!」
二人の背中が人ごみに見え隠れしながら遠ざかっていく。
神田と森沢も慌てて人ごみの中に飛び込んでいった。
(了)
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