280 / 285
・屋敷編
Thuー17
しおりを挟む
「味気ないお前にこいつは気がのらないようだが?」
挑発するような藤滝の口調に青年はげんなりした。
「そりゃそうだろう。俺はもともと、こういうのは好きじゃない」
「好きもののような顔をしているが、な……!」
力まかせにおされ、組み敷かれる。この男の嫌なところは、こういう動作が身に沁みついていることだ。慣れている。そのせいでどうも彼の手のひらの上で転がることしかできない。
「よせって!」
さっきまでいたしていたせいで身体がまだ火照っている。覚めない熱を呼び起こすように、撫でられて、青年は身をすくませた。
目の前に、彼がいるのに、この男はどうして手をとめない。むしろ、見せつけようと、躍起になっているようで、青年はないてたまるかと、歯を食いしばった。――だが、何故。
「あいかわらず、手つきが悪いようで」
朋華は静かに言い放った。
「強引になんでもすればいいというものではありませんよ」
「どこの誰が誰にものを言っている?」
「そうやって、王様気分でいるから、いつまでも……」
そこまでで朋華は口を閉ざした。いや、閉ざされてしまった。布団の上に組み敷かれている青年にかがみこもうとした矢先、顔を上げた藤滝に唇をうばわれていた。
憎い相手ながら、藤滝は見目だけは優秀だ。そしてそれはタイプは違えど、上級として名をはせている朋華自身にもあてはまる。
青年は自分の頭上で行われた一瞬の交接に、冷たい水をあびせられたような衝撃を受けた。美しい男と美しい男の接吻には目を見張る異様な迫力がある。
だがそれ以上に、この男が誰かの唇をついばむことがあったのだと――。
男の追撃を逃れて、朋華が唇を離した。潤っている唇の赤がやけに鮮明に視界に残る。
「おはやいのはお手だけではありませんでしたか」
朋華の小言に、藤滝は鼻をならした。
挑発するような藤滝の口調に青年はげんなりした。
「そりゃそうだろう。俺はもともと、こういうのは好きじゃない」
「好きもののような顔をしているが、な……!」
力まかせにおされ、組み敷かれる。この男の嫌なところは、こういう動作が身に沁みついていることだ。慣れている。そのせいでどうも彼の手のひらの上で転がることしかできない。
「よせって!」
さっきまでいたしていたせいで身体がまだ火照っている。覚めない熱を呼び起こすように、撫でられて、青年は身をすくませた。
目の前に、彼がいるのに、この男はどうして手をとめない。むしろ、見せつけようと、躍起になっているようで、青年はないてたまるかと、歯を食いしばった。――だが、何故。
「あいかわらず、手つきが悪いようで」
朋華は静かに言い放った。
「強引になんでもすればいいというものではありませんよ」
「どこの誰が誰にものを言っている?」
「そうやって、王様気分でいるから、いつまでも……」
そこまでで朋華は口を閉ざした。いや、閉ざされてしまった。布団の上に組み敷かれている青年にかがみこもうとした矢先、顔を上げた藤滝に唇をうばわれていた。
憎い相手ながら、藤滝は見目だけは優秀だ。そしてそれはタイプは違えど、上級として名をはせている朋華自身にもあてはまる。
青年は自分の頭上で行われた一瞬の交接に、冷たい水をあびせられたような衝撃を受けた。美しい男と美しい男の接吻には目を見張る異様な迫力がある。
だがそれ以上に、この男が誰かの唇をついばむことがあったのだと――。
男の追撃を逃れて、朋華が唇を離した。潤っている唇の赤がやけに鮮明に視界に残る。
「おはやいのはお手だけではありませんでしたか」
朋華の小言に、藤滝は鼻をならした。
52
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる