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・屋敷編

Tue-05

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「ちょっ……、おまっ」
 男が唇を離した瞬間を狙って、青年は彼の手を振り払おうとしたが、うまくいかなかった。はだけてしまった前を合わせようとして、中に入り込んだ男の手とぶつかる。
「ひっ!」
 つんといつの間にか、自己主張をはじめていた小さな粒をつままれて、青年は、びくりと肩を震わせた。
「ここを、こんなにしているが……?」
 ふっと、笑う男の息がかかる。
「お前、殺す」
「ふふ、そんな目ですごまれても、なにも感じないがな」
 余裕だ。
 男が浮かべている表情は、余裕そのものだ。
 いかに、青年が暴れようとも、隣に自ら座ったこの男は、すぐにぎょせる自信があるから、こう余裕をうかべていられるのだろう。
 この憎たらしさが、むかつく。腹の底から怒りと恨みと、いらだちが沸き上がる。
 なのに、一度つけられてしまえば、燃え上がってしまう、自身の肉体が、感情それについてこない。
 停車して震えている車のエンジンの揺らぎを感じて、ぞっとする。微かに、揺れるこの振動すらも、あまい快楽のゆりかごのように、身体が敏感に感じ取ってしまう。
「どこへ……連れていくつもりだよ」
 肝心な場所には触れないように、上からおおいかぶさってくる男から、逃れようとしながらも、青年は聞いた。
 さっきから、ここがうずいてしかたがない。けれど、こんな状況で、それをねだるわけにはいかない。必死に自身の身体のなかにたまっていく感覚を逃そうとする。
「さあな?」
「本当に答えないつもりか?」
 嫌なやつだ。そうこぼせば、男は何が楽しいのか、またあの薄っぺらな笑みを浮かべている。
「ついてからのお楽しみだ」
「既に楽しんでいるじゃねーか」
「本当にお前は、ひとこと言えば、かならずひとこと余計なことばかり返してくるな」
「おあいにくさま、だ。最悪な相性ってもんだろ?」
「……の、わりには」
 男の手が、下へと伸びた。
 そこに触れられてしまう、と青年は目をつぶったのだが。
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