上 下
166 / 285
・地下室調教編(Day7~)

三日目 1-2

しおりを挟む
「くそ、何している!?」
 もう一人の使用人が叫ぶ。
 青年は、彼の目の前にしゃがみこんで奉仕するふりをして、そのすきをねらって、彼に体当たりをくらわせた。ひるんだすきに、二人の使用人の間をするぬけて、入口へと走り出した。
 地下室を出て、廊下へとでる。
 目の前に長い階段が、現れる。これを登りつめれば、出口があるはずだ。
「おい! 待て!」
 ふたりが必死に青年を追いかけてくる。青年はといえば、彼らに「待て」といわれて待つような心境には、あいにくない。二日間も、地下室にとじこめられていた人間とは思えない俊敏な動きで、階段を上り出した。
 心臓がばくばくと高鳴る。
 官能の作用によって、心拍が上がるとの違って、こうやって、自分の身体を使って、動かして、自分で道を切り抜けようというのは、かなり気分がいい。
 青年は、階段を上り詰めた。目の前に鉄の扉が待っていた。そっと、ドアノブを押せば、ーー開いた。
「っ!」
 彼が、出たのは屋敷の裏側に位置する場所だった。室内だが、どこか薄暗く、倉庫のようになっていて、積まれた段ボールがあちこちで山になっていた。
「やはり、こちらへ逃げてくると思ったよ」
 声がして、青年は、さっと近くの物陰に身を隠そうとした。だが、彼は目ざとかった。
「俺を覚えてくれてはないのかい?」
 黒服。この屋敷に絶対忠誠を誓う使用人の制服だ。それを身にまとった人物が、現れた。青年は、そっとその身をさらした。
「滝田」
 彼の名を呼べば、ビンゴだった。
「何故、ここに?」
 青年の問いに、彼は、笑みを浮かべた。彼が笑うと、くしゃっと顔全体がつぶれるような笑い方になる。
「何故って、隙を見つけて走って逃げるなら、真っ先に一番近い階段から逃げるだろうなと思って。ここにいれば、きみと話せる」
 滝田が答えたかと思えば、もう二人は、扉の向こう側にまで追いかけてきたらしい。どんどんと扉を叩く音に、青年は、どきりとした。
「静かに。あまり声を立てないでくれ」
 滝田は言った。
「大丈夫。向こう側からは開けられない。ただし、こちら側からは開く。わかるね?」
 なるほど、と青年は、首を縦に振った。
 つまり地下室へ派遣されていたのは三人組だったのだ。二人が、地下室へと行き、一人が扉の前で待つ。
「普段、使用人が利用しているのは奥の階段からだ。倉庫とつながっている扉の向こうにひとがいなければ、こちらは開かない。少し、移動しよう。ひとに聞かれるとまずいから」
 本当に、この男を信用してもいいのだろうか。迷う青年であったが、先に行ってしまう滝田を追うため、青年も小走りになった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...