えっ、コレ、誰得結婚?

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再び、主人公シュルティ目線

#077 トラウマ ※(?)

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バカップル炸裂回です。
「※」付けていますが、必要ないかなと思うほど会話のみでほぼなにもしていません。


――――――――――――――――――――――――――――

兄達一行が出立したあと、以前と同じに戻っただけなのに、邸は何故か微妙にガランとした印象になった。

俺が兄達と話している間、一度義姉がテラスの方でバドと立ち話をしていたのだが。
話し声こそ聞こえなかったが、その表情などから、何となく義姉がバドを慰めているような、励ましているような雰囲気だった。

少ししょんぼりしているバドは、何かを訊ねる義姉の言葉に、俯いてゆるくかぶりを振っていた。

こ、これは。
「初夜はまだなの?」
「ふうふ仲は良好なの?」
とか小姑に訊かれているパターンか?

まるで俺のその想像を裏付けるように、義姉に背を押されて室内に戻る二人から微かに聞こえた言葉。
「…ね、怖がる必要は無いの。いつまでも逃げてちゃダメよ」

俺は決意を固めた。
そして執事に諸々指示を出した。

「どうしたの?凄いご馳走だね。何かの記念日みたいだ」
「王都に店舗出せることに決まったからね」
ジナグーナ王国の王都に、小さな店舗を出せることが少し前に決まった。それにかこつけて。
夕食はバドの好物を並べて貰った。
まさしく記念日だよ。
今夜が俺達の初夜だ。必ず。

実は俺達の寝室だが、ベッドがひとつの所謂夫婦の部屋仕様の部分は俺が占有している。
両脇にそれぞれの部屋があり、内扉で繋がっているのだが、最初の頃は俺の背中に貼っている薬を取り替えたり、足腰が不自由な俺の入浴や着替えの介助などでこの共有部分を使っていた。
その際には補助ベッドが据えられていて、そちらにバドが寝ていた。

俺の状態が少しずつ良くなってきたことで、補助ベッドを外され、何故かバドは自室で眠るようになった。
夫婦の部屋で寝ているのは俺だけだ。

コレってどうなんだ?と、最初は思ったけど、錬金術師としてもやることの多いバドは、昼間に領地運営や商会の事をこなしているぶん、ほぼ毎晩、遅くまで錬成室に籠もって研究していることも多く、貴重な睡眠時間、一人の方が熟睡出来るのかな~などとも思った。

とはいえ、お休み前には必ず様子を見がてら挨拶に来てはくれる。
お休みのキスももう習慣になっている。

この夜、俺はキスのあとバドを抱きしめて、本当のふうふになりたいと告げた。
「…えっ、いや、…だってまだ無理でしょ?階段上り下りだってまだ…」
「無理の無い体位でやるよ。バドも協力してくれれば大丈夫」
「そ、そんな急に言われても」
 抱きしめている俺の腕から逃げようともがく。
「怖い?」
一瞬のタメのあと、激しく頷くバド。
「うんうん。スゴく怖い。無理」
俺はバドを抱きしめる力を強めて、こめかみを擦り付けるみたいにして懇願した。
「優しくするから。…お願いだよバド。もう待てないんだ」

「ワーーーッ!!」
急にバドが俺の肩をぽかぽか殴ったと思ったら、両手で俺の顔を押して身を捩った。
ちょっとビックリしたせいも有って、思わず彼を手放す。

「ちょ、それ、反則!無理無理」
転がるように俺から離れて、傍にあった椅子にしがみつきながら息を整える。
あまつさえ、俺に背中を向けて完全に拒絶の姿勢だ。

ショックを受けはしたが、今日こそぜったいにキメてやる、と思って居た俺はここで諦めてなる物かと、逆に発奮した。
もはや獲物を追い詰めるハンターの気持ちだ。

「…なあ、前から思ってたんだけど…、バド、お前もしかして、俺のことそういう対象として見てない?」

え?と言う顔で振り返る。ちょっとポカンとした表情だ。真っ赤だが。

「好きでも、そういう事したい相手じゃ無い、とか…。でもさ、俺達結婚したんだよ?」

もしかすると、俺の大けがをずっと看護している日々が長かったから、もう既にただの患者にしか見えなくなっているとか…?
慈愛が残って恋愛感情は既に無くなったとか…。それか、背中の傷跡見てそんな気が失せるとか…

「そんなわけ無いじゃん!したいよ、そりゃ!」

え、したいんだ?

「俺だってしたいよ、でも…」

何故か俺に背を向けてアヒル座りで両手で顔を覆った。
あざとい。
可愛すぎる。

思わず近づいてその肩に手を添えたらビクリとして、半泣き状態で言った。
「だって俺、ブサイクだし」

「えぇっ???」
思わず仰け反って声を上げてしまった。
いや、ブサイクと思ったことは過去一度も無い。ものすごく美形とは思わないけど、素朴で普通に可愛い。

「すっごい、よがりブスなんだよ。きっとシュルティは引いちゃうよ」

よがりブス。盛り上がっている真っ最中の乱れ顔が大変に残念な人のことか。
でも、そんなの当たり前じゃ無いのか?無我夢中になって居るときの自分の顔面にそこまで責任もてねーだろ、フツー。
耐久戦やってるときの騎士達なんて、元がものすごいイケメンでも、終いには皆あるまじき事になっているぞ。

そもそも俺個人としては、そこまで乱れまくってくれたらものすごく嬉しい。
もっと盛り上がれる自信がある。うっすい表情でアンアン言われる方が演技って感じでテンション下がらないか?

つか。
ちょっとまて!

「誰かに言われたのか?」
俺のその言葉にバドはハッとした。
気まずそうに目線を反らすのを見て、俺は思わず肩を掴んだ。
ここまで気にしているという事は、つまり誰かに言われてトラウマになって居るということだろ?
俺より先に俺のバドを頂いて、あげくの果てにそんな酷い言葉を投げつけた悪魔が存在する!
バドの初めてを俺が奪えなかったのは、俺も他の人と結婚してしまった手前どうこう言える立場じゃ無いんだが、正直会ったらぶっ殺したい。くそっ。

「お前の忌まわしい過去を上書きしてやる」
俺はへたり込むバドを引っ張り上げてベッドに導いた。

い、忌まわしい過去…?とか何とか、ものすごく小さい声でバドが言っていたけど、取りあえず口を塞いだ。

いつもとは違い、食らいつくような貪るようなキスをした。
強く舌を吸い、口腔内をねぶり回した。背中やら尻やらを掻き抱き、揉みしだきながら、何度も何度も角度を変え深く舌を絡ませた。

最初は押しのけようとしていたようだけど、そのうちに抵抗がなくなって…。
次第に、こちらの呼吸に合わせてくるようになる。
解放したときには、大きく息を吐いて目を伏せていた。唇が濡れて、溢れた唾液の筋が灯りを反射している。

ぐったりしながら頑なに顔を背けているのが面白くなくて、うなじに手を添えてこちらを向かせる。

「俺を見ろよ」

「やだ、勘弁して。…そんな顔しないで…」

あ。ちょっと怖い顔つきになって居たか。バドの初めてを奪った誰かに対する敵対心が燃え上がってしまった。
「ご、ゴメン…」

謝りながら力を抜くと、耳の先まで真っ赤にしてバドは両手で顔を覆った。

「…カッコ良すぎて、無理…」

…はぁ?
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