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第五章
#112 会議は円滑に
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「先日、召喚者様が仰っていたプロジェクターなる物とジオラマなるものについてですが・・・」
その日、俺は議事棟の一角、比較的小さめの20人前後が参加するのに適したシンプルな企画会議室仕様の部屋に呼ばれていた。
そこには何故か宰相とオーデュカ魔道庁長官も居る。あとはコタロウ君とオーデュカ長官の直属の部下2名とおぼしき魔法使い2名とドワーフの職人さん3名。書記さん数名。
そして、デュシコス様も居る。
場を取り仕切っているのは緑がかった金髪と榛色の中年紳士・・・そう、ヤディンセン侯爵だ。シェルトンのお父上。
公文書管理部統括、とシェルトンが言っていた通り、今回の審問会議における公文書の整理に明け暮れている。
本当にずっとずっと明け暮れているらしいのだが、何せ今回の問題、本当に複雑だ。
大きく分ければ。
〔1〕人身売買に関与している何名かの上位貴族及び口利きした商人のリストアップと現時点での詳細調査記録。
〔2〕聖女候補を他国に売って死に至らしめた経緯の証言集と実態調査録。それによる神殿と国防庁から出された損失予想。
〔3〕ホツメル市で起きた魔賊来襲は富裕層以外を蔑ろにした領政に反発する暴動による混乱、及び〔2〕による怨嗟がきっかけである事の証明。
〔4〕断罪対象の貴族達の奪爵と領地没収の詳細。および代替の領主リスト。
で。
この審問会議を進めていく際にはこれらの事案のひとつひとつの状況説明が必要だ。
その説明をするために多くの証人が次々と出て来て知り得る情報を説明する。
だが、口頭で説明されたものがどの程度伝わるかというと、今回の件に関しては煩雑すぎて全体像がそこそこ把握出来ている文官達から見てもだいぶカオスなのだ。
で、俺の後に呼び出されたコタロウ君もまた同じ場所で躓く文官達の状況に「プロジェクターとかがあれば分かり易いんでしょうけど」とボソッと呟いたもんだから文官達の間で「召喚者様も言っていたけどプロジェクターとはなんぞや?」という事になりついでに「では、ジオラマとは?」と言う事になったと。
コタロウ君は「ついでにフリップとか」などとも言ったらしく、それにもかなり食いついたらしい。
この世界にも説明を分かり易くするための表やグラフや地図を図示する手法が無いわけでは無い。ただ、多くの場合それは新聞や論文で散見されることであって、議場で全員が一つのそれを一斉に見るという形で利用される習慣は無かった。議場でそれを用いる際には予め人数分の資料プリントを配るなどしてそれを参照しながら説明を受けるという形になるしかなかったとのこと。
元の世界で当たり前に使われていた背景には、身分差などによる情報の独占化があまりない環境であり、多数に同時に同じ情報を与える事を追求した文化があったからだろう。
大勢の人対象に見せたい部分をピンポイントで切り出して順繰りに見せながら説明するビジネスシーンでのプレゼンとか、TVなどで特定の情報を一斉に配信したり、学者、研究者の発表等アカデミックなシーンでの用途などがあったからだと思う。
ただ、今回のこの審問会議は友好国などにもリアルタイムで議場の風景を配信する事になっているという。
TVのように各ご家庭で一般人までもが同時に閲覧するのは無理としても、主要な場所でそれなりに大勢の人達が一斉にそれを見るパブリックビューイング的な形になるのだろう。
口頭での説明が長すぎると逆に状況が分かりづらくなる。フリップで視覚的な説明が得られるとむしろ言葉の説明はグッと減らせる。
要点を図示されているフリップと、現場を簡易に再現したジオラマ模型を使った説明を予め作り込んでプロジェクターで投影しながら説明すれば著しく時間を短縮出来る上視覚的に全体像が把握しやすく大変効率が良い。
最近ではお医者さんもフリップや人体模型、モニター画面などを使いながら傷病の説明をしてくれる。右脳と左脳両方を使った情報のインプット法が効率が良いのは確かなのだ。あ、元の世界でのお医者さんだけどね。
最もジオラマに関してはこの世界でも昔から利用はされていたようだ。地形を再現したジオラマは魔獣討伐や他国との戦の際の作戦会議に不可欠だから。
俺のイライラから放った呟きを元に、コタロウ君に説明を求め、それによってこの実に煩雑な説明をもっと効率よく出来る糸口になるやもということで、今回このメンツが集められた。
この世界では勿論プロジェクターは無い。フリップやジオラマに関してはその概念自体はあった訳だから何とかなるだろう。
で、俺やコタロウ君が知る『プロジェクター』というものがどのようなものであるのかを説明して、そのイメージに最も近い魔道具を作ろうという事だ。
あと、どの部分をどの程度の再現率のジオラマで表現すれば分かり易いか。リアルすぎても逆にわかりにくくなる場合があるからその塩梅を教えてあげる必要はありそうだ。
まず簡易なホツメル市街や領主館のジオラマは必要だろう。暴動が起き、暴徒が移動していった経路などを示すコマを説明に用いる。暴動は一カ所で勃発しているわけでは無いし移動したり規模が膨らんだりしているから地図や絵で描くよりジオラマが分かり易い。破壊されていくことで建物の色など、様相が変わるようになっているともっと分かり易い。魔法陣が張られた場所。魔物が発生した場所。どこでどの程度犠牲が出たか。等々。説明を進めるごとに変化していくようにする。
そして、人身売買に関わった領主の居る領土を色分けした地図。領主や領地が今後どうな
るのかを色分けが変化する様で示すようにする。分割して接する隣領に吸収されるのか、新領主を送られるのか。
それら領主が関わった度合い、得た利益や悪質性などを併せて表にする。それらを纏めたフリップ。
犠牲になった子供達の分布や口利きした商人の移動ルート。拘束された経緯。転生者の子供がそれを認識されてからその情報が流れた経緯、そして拘束までの流れを指示した関係者の調査実態。動いたお金。それもごく簡易な人型模型を色分けしてジオラマや地図の上を移動させながら説明した方が分かり易い。
そんなアイデアをコタロウ君と出していると、ドワーフの職人さん達から建物の簡易な模型というのはどの程度簡易にすべきかとか、被害が進むことによって建物の様相が変化するようにというのはどのような手法を用いたら良いのかとか、文官さん達からはグラフや表にするのはどの辺を優先すべきか、魔法使いの皆さん・・・特に長官とデュシコス様はプロジェクターに当たるものと他国への同時配信の魔道具の最も必要な機能などについて意見が出た。
それらを踏まえて3回目の説明会は日程が延期されることになった。
初回の説明会は勿論2回目の説明会も終わっている。2回目は俺が説明や証言する必要の無い案件が多かったから参加せずその間にダンジョン攻略や特訓に力を入れていた。
第3回目はいよいよ、俺達が体験したホツメル市の惨状と現場検証についての説明と証言をしないといけない。そのすりあわせと平行してプロジェクター魔道具、ジオラマ、フリップなどの作成が進められた。どの文官さん達ももう本当に体力の限界で窶れ、目の下にクマの無い人は一人として居なかった。
そしてそこに王子が訪れた。
実は俺とアレした後王子は疲労が吹き飛びツヤツヤでピチピチになった。
かくいう俺もイライラがスーッと消え失せむしろやる気満々で、今ならいくらでも文官さん達への協力も惜しまない気分だ。
性行為をしないで居たことでイライラして凶暴化するなんて、全く想定してなかったものだから、そうと知った後はやはり俺はあの女の血を引いているインラン魔人なのかと直後はヘコみまくっていたんだけど、ナーノ様とホランド様に「それ、普通だから」と慰められた。
・・・普通・・・・・・なのか・・・?
で、日夜激戦状態のヘロヘロな文官さん達に王子は暖かい強めのヒールを施した。
皆さんは一様に机に突っ伏して眠りについた。
「15分ほど眠ってください。起きたら元気が戻っているはずです」
まさしく15分後に次々と目を覚ました文官さん達は皆キョロキョロとお互いを見回し体を伸ばして「信じられないくらいスッキリしています。ありがとうございます殿下!」と王子を拝んでいた。
なんというか、後光が見えます。マジで。
無意識に俺も一緒に祈りのポーズで拝んでいたら「又あなたまで!」と叱られてしまった。頬を染めながらツーンとそっぽを向かれ逃げるように退室されてしまったのを慌てて追う。
周りの皆さんが生暖かい微笑みを浮かべていたのが恥ずいかった。
なんだかんだでそんな日々が続き3回目の説明会では俺の出番も多いから暫くダンジョンには行けなくなった。
けれどもやはりまたしても王子との接点もだいぶ減ってしまった。
バタバタと忙しい日々に追い立てられてその日はやって来た。
3回目の説明会。
何度も摺り合わせをして居る間に作られていたフリップやジオラマ、それらを使って作られている説明映像を映し出すプロジェクター魔道具、それを他国までも同時配信出来る映像配信魔道具、それら諸々ビックリするほどの出来映えで、説明会を劇的に分かり易くしており、言葉も無いほど感動してしまった。
他国の要人達もその技術力の高さに驚愕していたという。
3回目の説明会が終了したら、次はいよいよ審問会議本番となるが、それは又更に一ヶ月後になる。
そこではアマリガル侯爵やゲンデソル伯爵以下何人もの不正に関わった貴族達が罪人として引きずり出され晒されての質疑応答が始まるのだ。
取りあえず説明会は無事にクリアした。
・・・と思ったら。一気に気が抜けたのかドッと疲れが出たらしく王子はまた体調を崩されてこんこんと丸二日間近く眠り続けてしまった。
若干熱も出たらしい。
ナーノ様が言うには王子は以前から根を詰めすぎて、緊張が途切れた後こういう状態になることが幾度か有ったと言われた。
ただ、眠りから覚め少し体調が戻ったときにナーノ様の指示で身の回りのお世話を俺がすることになり、二人きりにされ。
その時点でナーノ様が何を期待しているのかは明らかではあったのだけど。
案の定、その延長でやっぱりエロい展開になり・・・。・・・まあ、ね。なるんですよ、そりゃあ。
すると王子は、致した後すっかりピカピカのツヤツヤ凄まじいキラキラオーラを放つ状態になる。まあ、直後は気怠い感じでお色気大爆発目の毒状態なんだけど、それは他人には見せませんから。
それはもうこちらが恥ずかしくなるくらい顕著で。
つか、他人事みたいに言ってるけど実は俺もあれの後の日はかなりテカテカの元気いっぱいになっちまうんだけど。
そしてとうとう王太子から直々に命令されてしまった。
可能な限りヤれと。
「最低でも週に二回はヤれ。だが可能であれば毎日が望ましい」
王命?ってことになるの?アレを命令されてるの?義務?
それって・・・。
指示されてヤるのは解せないし、なにより。
この先トライするダンジョンは王都から徐々に離れていく。行って攻略して戻って来るだけで一週間くらいは経ってしまうだろう。そんな合間にってなるとイチャイチャするのだって時間との闘いかよ。
無茶言うな。・・・そう思ったけれど。
ここでハルエ様からの課題が。
「今後挑むダンジョンはパーティを組んで臨め。同行者はエレオノール王子とルイーサ伯爵じゃ」
一気に難易度も上がり、Bランク以上の者しか推奨されない場所を指定される。
挑戦者としてはかなりわくわくはするが。
別の意味で張り詰める緊張感を禁じ得ない。
いや、さすがに修行に出かけている間にはしませんよ。
デュシコス様も同行するんだし。
その日、俺は議事棟の一角、比較的小さめの20人前後が参加するのに適したシンプルな企画会議室仕様の部屋に呼ばれていた。
そこには何故か宰相とオーデュカ魔道庁長官も居る。あとはコタロウ君とオーデュカ長官の直属の部下2名とおぼしき魔法使い2名とドワーフの職人さん3名。書記さん数名。
そして、デュシコス様も居る。
場を取り仕切っているのは緑がかった金髪と榛色の中年紳士・・・そう、ヤディンセン侯爵だ。シェルトンのお父上。
公文書管理部統括、とシェルトンが言っていた通り、今回の審問会議における公文書の整理に明け暮れている。
本当にずっとずっと明け暮れているらしいのだが、何せ今回の問題、本当に複雑だ。
大きく分ければ。
〔1〕人身売買に関与している何名かの上位貴族及び口利きした商人のリストアップと現時点での詳細調査記録。
〔2〕聖女候補を他国に売って死に至らしめた経緯の証言集と実態調査録。それによる神殿と国防庁から出された損失予想。
〔3〕ホツメル市で起きた魔賊来襲は富裕層以外を蔑ろにした領政に反発する暴動による混乱、及び〔2〕による怨嗟がきっかけである事の証明。
〔4〕断罪対象の貴族達の奪爵と領地没収の詳細。および代替の領主リスト。
で。
この審問会議を進めていく際にはこれらの事案のひとつひとつの状況説明が必要だ。
その説明をするために多くの証人が次々と出て来て知り得る情報を説明する。
だが、口頭で説明されたものがどの程度伝わるかというと、今回の件に関しては煩雑すぎて全体像がそこそこ把握出来ている文官達から見てもだいぶカオスなのだ。
で、俺の後に呼び出されたコタロウ君もまた同じ場所で躓く文官達の状況に「プロジェクターとかがあれば分かり易いんでしょうけど」とボソッと呟いたもんだから文官達の間で「召喚者様も言っていたけどプロジェクターとはなんぞや?」という事になりついでに「では、ジオラマとは?」と言う事になったと。
コタロウ君は「ついでにフリップとか」などとも言ったらしく、それにもかなり食いついたらしい。
この世界にも説明を分かり易くするための表やグラフや地図を図示する手法が無いわけでは無い。ただ、多くの場合それは新聞や論文で散見されることであって、議場で全員が一つのそれを一斉に見るという形で利用される習慣は無かった。議場でそれを用いる際には予め人数分の資料プリントを配るなどしてそれを参照しながら説明を受けるという形になるしかなかったとのこと。
元の世界で当たり前に使われていた背景には、身分差などによる情報の独占化があまりない環境であり、多数に同時に同じ情報を与える事を追求した文化があったからだろう。
大勢の人対象に見せたい部分をピンポイントで切り出して順繰りに見せながら説明するビジネスシーンでのプレゼンとか、TVなどで特定の情報を一斉に配信したり、学者、研究者の発表等アカデミックなシーンでの用途などがあったからだと思う。
ただ、今回のこの審問会議は友好国などにもリアルタイムで議場の風景を配信する事になっているという。
TVのように各ご家庭で一般人までもが同時に閲覧するのは無理としても、主要な場所でそれなりに大勢の人達が一斉にそれを見るパブリックビューイング的な形になるのだろう。
口頭での説明が長すぎると逆に状況が分かりづらくなる。フリップで視覚的な説明が得られるとむしろ言葉の説明はグッと減らせる。
要点を図示されているフリップと、現場を簡易に再現したジオラマ模型を使った説明を予め作り込んでプロジェクターで投影しながら説明すれば著しく時間を短縮出来る上視覚的に全体像が把握しやすく大変効率が良い。
最近ではお医者さんもフリップや人体模型、モニター画面などを使いながら傷病の説明をしてくれる。右脳と左脳両方を使った情報のインプット法が効率が良いのは確かなのだ。あ、元の世界でのお医者さんだけどね。
最もジオラマに関してはこの世界でも昔から利用はされていたようだ。地形を再現したジオラマは魔獣討伐や他国との戦の際の作戦会議に不可欠だから。
俺のイライラから放った呟きを元に、コタロウ君に説明を求め、それによってこの実に煩雑な説明をもっと効率よく出来る糸口になるやもということで、今回このメンツが集められた。
この世界では勿論プロジェクターは無い。フリップやジオラマに関してはその概念自体はあった訳だから何とかなるだろう。
で、俺やコタロウ君が知る『プロジェクター』というものがどのようなものであるのかを説明して、そのイメージに最も近い魔道具を作ろうという事だ。
あと、どの部分をどの程度の再現率のジオラマで表現すれば分かり易いか。リアルすぎても逆にわかりにくくなる場合があるからその塩梅を教えてあげる必要はありそうだ。
まず簡易なホツメル市街や領主館のジオラマは必要だろう。暴動が起き、暴徒が移動していった経路などを示すコマを説明に用いる。暴動は一カ所で勃発しているわけでは無いし移動したり規模が膨らんだりしているから地図や絵で描くよりジオラマが分かり易い。破壊されていくことで建物の色など、様相が変わるようになっているともっと分かり易い。魔法陣が張られた場所。魔物が発生した場所。どこでどの程度犠牲が出たか。等々。説明を進めるごとに変化していくようにする。
そして、人身売買に関わった領主の居る領土を色分けした地図。領主や領地が今後どうな
るのかを色分けが変化する様で示すようにする。分割して接する隣領に吸収されるのか、新領主を送られるのか。
それら領主が関わった度合い、得た利益や悪質性などを併せて表にする。それらを纏めたフリップ。
犠牲になった子供達の分布や口利きした商人の移動ルート。拘束された経緯。転生者の子供がそれを認識されてからその情報が流れた経緯、そして拘束までの流れを指示した関係者の調査実態。動いたお金。それもごく簡易な人型模型を色分けしてジオラマや地図の上を移動させながら説明した方が分かり易い。
そんなアイデアをコタロウ君と出していると、ドワーフの職人さん達から建物の簡易な模型というのはどの程度簡易にすべきかとか、被害が進むことによって建物の様相が変化するようにというのはどのような手法を用いたら良いのかとか、文官さん達からはグラフや表にするのはどの辺を優先すべきか、魔法使いの皆さん・・・特に長官とデュシコス様はプロジェクターに当たるものと他国への同時配信の魔道具の最も必要な機能などについて意見が出た。
それらを踏まえて3回目の説明会は日程が延期されることになった。
初回の説明会は勿論2回目の説明会も終わっている。2回目は俺が説明や証言する必要の無い案件が多かったから参加せずその間にダンジョン攻略や特訓に力を入れていた。
第3回目はいよいよ、俺達が体験したホツメル市の惨状と現場検証についての説明と証言をしないといけない。そのすりあわせと平行してプロジェクター魔道具、ジオラマ、フリップなどの作成が進められた。どの文官さん達ももう本当に体力の限界で窶れ、目の下にクマの無い人は一人として居なかった。
そしてそこに王子が訪れた。
実は俺とアレした後王子は疲労が吹き飛びツヤツヤでピチピチになった。
かくいう俺もイライラがスーッと消え失せむしろやる気満々で、今ならいくらでも文官さん達への協力も惜しまない気分だ。
性行為をしないで居たことでイライラして凶暴化するなんて、全く想定してなかったものだから、そうと知った後はやはり俺はあの女の血を引いているインラン魔人なのかと直後はヘコみまくっていたんだけど、ナーノ様とホランド様に「それ、普通だから」と慰められた。
・・・普通・・・・・・なのか・・・?
で、日夜激戦状態のヘロヘロな文官さん達に王子は暖かい強めのヒールを施した。
皆さんは一様に机に突っ伏して眠りについた。
「15分ほど眠ってください。起きたら元気が戻っているはずです」
まさしく15分後に次々と目を覚ました文官さん達は皆キョロキョロとお互いを見回し体を伸ばして「信じられないくらいスッキリしています。ありがとうございます殿下!」と王子を拝んでいた。
なんというか、後光が見えます。マジで。
無意識に俺も一緒に祈りのポーズで拝んでいたら「又あなたまで!」と叱られてしまった。頬を染めながらツーンとそっぽを向かれ逃げるように退室されてしまったのを慌てて追う。
周りの皆さんが生暖かい微笑みを浮かべていたのが恥ずいかった。
なんだかんだでそんな日々が続き3回目の説明会では俺の出番も多いから暫くダンジョンには行けなくなった。
けれどもやはりまたしても王子との接点もだいぶ減ってしまった。
バタバタと忙しい日々に追い立てられてその日はやって来た。
3回目の説明会。
何度も摺り合わせをして居る間に作られていたフリップやジオラマ、それらを使って作られている説明映像を映し出すプロジェクター魔道具、それを他国までも同時配信出来る映像配信魔道具、それら諸々ビックリするほどの出来映えで、説明会を劇的に分かり易くしており、言葉も無いほど感動してしまった。
他国の要人達もその技術力の高さに驚愕していたという。
3回目の説明会が終了したら、次はいよいよ審問会議本番となるが、それは又更に一ヶ月後になる。
そこではアマリガル侯爵やゲンデソル伯爵以下何人もの不正に関わった貴族達が罪人として引きずり出され晒されての質疑応答が始まるのだ。
取りあえず説明会は無事にクリアした。
・・・と思ったら。一気に気が抜けたのかドッと疲れが出たらしく王子はまた体調を崩されてこんこんと丸二日間近く眠り続けてしまった。
若干熱も出たらしい。
ナーノ様が言うには王子は以前から根を詰めすぎて、緊張が途切れた後こういう状態になることが幾度か有ったと言われた。
ただ、眠りから覚め少し体調が戻ったときにナーノ様の指示で身の回りのお世話を俺がすることになり、二人きりにされ。
その時点でナーノ様が何を期待しているのかは明らかではあったのだけど。
案の定、その延長でやっぱりエロい展開になり・・・。・・・まあ、ね。なるんですよ、そりゃあ。
すると王子は、致した後すっかりピカピカのツヤツヤ凄まじいキラキラオーラを放つ状態になる。まあ、直後は気怠い感じでお色気大爆発目の毒状態なんだけど、それは他人には見せませんから。
それはもうこちらが恥ずかしくなるくらい顕著で。
つか、他人事みたいに言ってるけど実は俺もあれの後の日はかなりテカテカの元気いっぱいになっちまうんだけど。
そしてとうとう王太子から直々に命令されてしまった。
可能な限りヤれと。
「最低でも週に二回はヤれ。だが可能であれば毎日が望ましい」
王命?ってことになるの?アレを命令されてるの?義務?
それって・・・。
指示されてヤるのは解せないし、なにより。
この先トライするダンジョンは王都から徐々に離れていく。行って攻略して戻って来るだけで一週間くらいは経ってしまうだろう。そんな合間にってなるとイチャイチャするのだって時間との闘いかよ。
無茶言うな。・・・そう思ったけれど。
ここでハルエ様からの課題が。
「今後挑むダンジョンはパーティを組んで臨め。同行者はエレオノール王子とルイーサ伯爵じゃ」
一気に難易度も上がり、Bランク以上の者しか推奨されない場所を指定される。
挑戦者としてはかなりわくわくはするが。
別の意味で張り詰める緊張感を禁じ得ない。
いや、さすがに修行に出かけている間にはしませんよ。
デュシコス様も同行するんだし。
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