迷宮世界に飛ばされて 〜迷宮から魔物が湧き出す世界で冒険者として好きに生きる〜

おうどん比

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本編

百四話 予習

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「超長距離通信か? 海の向こうぐらいなら多分できるのではないか? 一応国宝に近い品だしなソレは」

「そうなんですか。良かったです。安心して旅行できますね」

「そうだな。まあ何かあれば呼ぶが悪く思うなよ」

「勿論です」

「それと話に聞いた飛空艇だが、ウルスラに逆侵攻をかけるのにも使えそうだな。大量の人員を運べるのだろう」

「あー、いけそうですね。あまり考えてませんでしたが」

「まあ一気に首都を潰して国を滅ぼしても、内部の悪人が一気に溢れ出して周辺諸国に悪影響が出そうだがな。そこが難点だ」

「それは厄介ですね。でも奴隷にされてる人達なんかは助けたいですね」

「そうだな。一応潜り込んだものに分散してできる限りは買い戻させているが、いなくなったものを全て取り戻せてはいない。いっそ国を滅ぼすと脅して交渉に持ち込んだ方が良いかもしれんな。まあよくわからん神を崇めている手前、そう簡単にはいかんかもだが」

「邪神かなんかの信徒ですからね。大変でしょうが頑張ってください」

「ああ。そういえば写真の魔道具だが、インクと紙を用意して何かを描かせるものはできたぞ。それなりに写実的だ」

「おお、それでも凄いですね」

「それでなんだが、あのスマホというものについて詳しく知っていたらもう少し教えてくれないか?」

「あーっと確か鑑定した結果では―」

 光をレンズで集めて、フィルムに移したり、電子記号に変換するなど、簡単な説明をした。

「うーむ、なんとなくは分かるが、難しいな」

「俺としてはギルドカードの便利さの方が上に思えますが、そんなに難しいですかね?」

「あれは古代帝国の技術がそのまま活かされているからな、最近作り出されたものではないのだ。アレを少し弄るのは簡単だが、オリジナルを作るのは難しい」

「古代の技術、そういうものですか」

「そういう事だ、まあシェイラであれば作れるのかもしれん事は分かった」

「魔道具が盛んな国ですか」

「ああ、ペイルーンの西だな。あちらは魔道具が発達していて職人も多い。輸出で儲けている国だな」

「そっちに行くのもありかな。いや、次回にするか」

「行くなら気をつけて行けよ。ウルスラほどではないが民間人でも武装していて少しおっかない国だからな」

「銃社会なのかな? そうします」

 そんな感じでアスラン様から借りている通信魔道具は大丈夫そうだった。次はゲルハルトさんだな。



「ゲルハルトに用かい? 何の用事なんだい?」

「それが―」

「なるほど。じゃあ私の方から伝えておくよ。向こうに伝達できたらまた知らせるから」

「お手数おかけします」

「このぐらいならいつでも構わないよ」

 試しにラインハルト様経由でアポをとろうとしたら用が済んでしまった。ラインハルト様も気安いから色々楽だな。助かった。

 城に行ってアポをとってもよかったが、ちょっと億劫だったのである。

 国王相手にテレアポは失礼な気がしたが、前話した感覚だといけそうな気がした。特に悪い予感もしなかったしな。

 時間ができたし、少し旅行先の予習をするか。
 


 テキルスの情報屋で海の向こうの情報を買う。一番近い国はクラマというところで、鬼族がそれなりに多いらしい。絹や織物や陶磁器なんかの交易で栄えているとか。

 食文化も聞いたが、和食と中華が混在していると言った感じだ。いや、それよりは東アジア系と言った方がいいかな。米食が基本で後は色々という感じである。麺類もあるそうだが。

 服装は海向こうの者がいた店で店員がつけていた、これまた東アジアテイストのものらしい。一番近い国は和服っぽいものが多いそうだ。簡単な図で示された。

 それと一応は海向こうも北で地続きなので、古代帝国の支配下だったらしく、各種ギルドはあるとの事だった。

 俺の発明品?も広まっているのかな、そこまでは聞けなかった。



 ふと思いついたので、通りを歩いていた船乗り風の男に海の魔物はどうしているのかと聞くと、魔道具で結界を貼ったり、魔術師が倒したり、海の上で歩行できるようにして前衛が倒したり、水面下に雷撃を撃ち込む魔道具を使ったり、人魚族の冒険者が水中で対処したりもするらしい。人魚族は下半身を任意で魚形態と人型に切り替えられ、海の護衛では重宝がられるとか。

 後は水を通して魔物が嫌う魔力振動を放つ魔道具を使うのが一番いいと言っていた。それは燃費が悪いそうだが。

「色々あるんですね。そういや海の魔物は何処から来るんでしょうね。海中に迷宮ができるのかな?」

「昔そう聞いたぜ。陸より数は少ないらしいがな」

「やっぱりそうなんですか」

「後は確か……移動する浮島型の迷宮もあるとか聞いたな。中は海水だらけらしい」

「そんなのもあるんですね」

「まあ噂程度だがな」

「色々教えてくれてありがとうございます。お礼にこれを」

 ペイルーン産の、ナツメヤシなんかを発酵させて蒸留して作られたアラクという酒を渡す。

「お、気前がいいな。貰っとくぜ」

 船乗りらしき男は上機嫌で去っていった。アラクは水や氷を混ぜると白濁する酒である。それでライオンのミルクとか呼ばれているらしい。俺も前飲んだが、ペイルーンらしい独特の香りと味がした。

 今度アルクさんにも持っていくかな。名前似てるし。ワインのが好きかもだが。まあイザークさんにはウケるだろう。
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