迷宮世界に飛ばされて 〜迷宮から魔物が湧き出す世界で冒険者として好きに生きる〜

おうどん比

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本編

六十五話 繁殖※

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「アラクネの糸か、しかも魔銀や緋金入りか」

「たまたま捕まえられたので試したらできちゃったんですよね」

「そこらの貴族の家宝としても使われそうな品を気軽に持ってくるとはな」

「アスラン様が調合したカレーあるじゃないですか、あればっかり食べてるからか糸をよく吐くんですよ。なのでおすそわけです」

「生命力が底上げされるからか。なるほどな。実はうちの妻の一人も最近孕んだばかりだ。鑑定したら男児らしい」

「おお、おめでとう御座います。奥さんやお子さんの服なんかにもどうですかね?」

「それもアリだな。これからも継続して持ってこられるのか? それなりの金額で買わせてもらう」

「多分できますね。材料の粉が入用ですが」

「ならそちらも用意させよう。魔銀や緋金入りのアラクネの糸など、魔術師の装備としては最高級品だからな。しかしお前に渡す勲章だが、イシール蒼玉勲章ではランクが落ちてしまうな」

「勲章とかは気持ち次第で良いですよ、後俺が糸を持ってきてる事は内密でお願いします」

「欲のない事だ。カレーの粉を含め、材料費などはいらんからな。お前のために、さらにカレー粉のグレードアップを目指すとしよう。目標は99種類の香辛料をブレンドしたものだな」

「おお、楽しみですねぇ、そっちのが欲しいです」

「それとしばらくはトラキアよりもこっちに優先して糸を回してくれるとありがたい。再生のポーションだけでもかなり助かっているが、魔術師にとっての最高級の装備となるからにはな。最近は魔物だけではなくウルスラもきな臭い」

「ウルスラですか」

「どうもどさくさまぎれにうちの国民を攫っていったりなんかもしたらしい。本来なら戦争ものだな。今は余裕がないが。魔力災害もウルスラの工作という説がある」

「ウルスラの工作? 本当ですか?」

「迷宮の発生を意図的に抑え、地脈に溜まった魔力を使い何かをしていた痕跡のようなものがあった。今は国内の有力な地脈は厳戒態勢を敷いている。タイミングを考えるとどうにもな。最近あの国は活発だろう」

「きな臭いですね。分かりました。糸はしばらくトラキアに伏せておきますから、こちらの防備を固めるのに使ってください」

「……いずれトラキアとの国境に協議の上で街を作り、お前に与える必要があるかもしれんな……」

「領地は管理が面倒そうなんですよねぇ。まあいずれは欲しいかもですが。まあこの国が傾いたら自分も困るのであまり気にしなくていいですよ」

「お前と出会えたことに魔神様に感謝しよう。もしやすると、お前は神の化身なのかもしれんな」

「ただのヒューマンですよ」

「そうか。そういえば国庫に神銅があったな……いや、なんでもない。それよりカレーの話だがな、私の考えでは……」



 「そういう事ならばトラキア王家への献上は待った方がいいな。本来であれば背信行為だが仕方あるまい。しかし魔力災害にウルスラがな。こっちは急ぎ報告をあげておこう」

「よろしくお願いします。何があるかわかりませんから、伯爵や家族のインナーぐらいは作っておいて下さいね」

「そうしよう。家宝にでもするか」



 ポランコさんに頼んだ付与だが、付与がノリにノッたらしく、ランクはエピックだが、その中でも質のいい物に仕上がったらしい。

 俺たちの装備の内側にも縫い付けるとの事だったので、アリシアさんのものを含めて改修をお願いすることになった。

 工房はフル稼働で、何回もカレーや菓子を差し入れしたり、疲労回復をかけに行ったりなんかもした。伯爵達のインナーの服なんかも、秘密を漏らさないものという事で、ポランコさんのところで作る事になった。

 付与は防刃、防貫通、耐衝撃、魔法耐性、状態異常耐性とてんこ盛りだ。部位によって変えてもいるが。靴下なんかは身軽さを上げたりもしている。

 俺やうちの女性陣は世界一高級な下着をつけているかもしれない。こちらは防汚もついていた。

 それぞれ染料によって色もつけてある。俺は基本黒だが、薄く光っていた。

 装備の前に普通の服なんかは出来上がったので、今はそれをつけている。



 蜘蛛は繁殖した後に相手を捕食する習性があるらしいが、アラクネは特にそういう事は無かった、甘噛みぐらいはされたが。餌が足りてるからかもしれない。

 今はアラクネの部屋に連れ込まれて全裸になっていた。油断してたらササっと連れ込まれてササっと搾り取られた。アラクネは満足したように俺に覆い被さっている。

 前にオーガストさんに聞いたら、アラクネはエルフなんかと同じであまり繁殖力は無いとの事だったが、一応リアナに持って来させた薬を飲ませておいた。

 まだパパになる覚悟は無いからな。綺麗な紫の髪と揺れる双丘にはやられてしまったが、それはそれである。

 その後リアナ経由で知れ渡ったのか他の女性陣もやる気になっていた。最近はシーラも積極的なんだよな。普段は無表情だからギャップが良い。

 しばし爛れた生活となった。
 


「これが蘇生薬二本、継続再生薬、若返り薬、特級の毒薬、それから……」

 シーラはきちんと研究を行っていたようだった。

「俺がもし死んでも保険があるのはいいな。蘇生薬は誰が持つ?」

「頑丈さではリアナ? リアナは収納もう使えたっけ」

「はい。少ししか入りませんがポーションくらいなら」

「後は私が持った方がよくないかしら、妖精状態なら的が小さいし」

「そうかもしれませんね。マギーさんは短距離転移も得意ですし」

 そういう事になった。後は若返り薬だが、無言で手に取りアリシアさんに渡す。一応鑑定もしておいたが問題ない。

「いいんですか?」

「皆も特に異論はないだろう?」

「はい」

「うん」

「いいんじゃない?」

「そういう訳なので」

「わかりました」

 アリシアさんが若返りのポーションをゴクっとやる。するとアリシアさんが光を放った。光が収まるとそこには……

「若干若くなったように見えるような気がするか?」

「そうかも?」

「エルフは全盛期の肉体の見た目の時間が長いですからね。でも前に飲んだのと併せて415歳頃ぐらいまでは若返っている気がします。ありがとうございます」

「おめでとうございます」

「よかったわね」

「はい。これならユウトさんの子供も安心して産めます」

「お、おお、それはまたいずれ…」

「ふふ、復帰したばかりですからね」

 なんかアリシアさん以外の皆も俺を見ながらお腹をなでていた。マギーは少し顔を赤くするだけだったが。

 その後、ごまかすように他の薬の分担なんかを話し合ったりなんかした。

 いずれ、いずれね。
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