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本編

四十二話 美術博物館

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 伯爵に米と刺身と醤油を布教した。伯爵は気に入ったらしく、酒に合いそうだと言って刺身をつまみにしていた。

 ロンドミアが近いが、淡水魚は生で食べられないものが多いらしく、生魚は久しぶりだと言っていた。言われて赤身を鑑定したが、生食が可能と記載があった。一応生で食えると店員に言われていたが。こまめに見るか。

 探索中なんかは余裕がある限り、手当たり次第に鑑定しているのだが。たまにシーラが知らない素材も見つけられた。たまにマギーも美味しい木の実とか野苺とか宝石を見つけてきていた。宝石といっても原石だが。

 宝石はなんらかの魔法効果が付与しやすかったりするらしい。ラピスラズリは知力や感覚力の向上、オプシディアンは危機察知力強化、ルビーは火炎魔法の強化や耐性など。また、魔力の含有率によって効果の程度が変わるらしい。迷宮で拾って分配した宝飾品も宝石がついてたりした。

 妖精は宝石も好きらしい。加工が得意な妖精が加工したりもする。宝石以外に魔石も色々使うそうだが、マギーはカケラに魔法を込めてグレネードみたいにして遊んでいたそうだ。後は落とし穴の底に沢山仕込んだり。

 話は戻り、伯爵には、お前が食べるために買う時にこちらの分も買ってくれと言われ、金貨の入った小袋を渡された。だいぶ気に入ったらしい。米と食べるのも悪くないが、刺身と醤油で酒を飲むのにハマったとか。箸を使っていたらまんま元の世界の居酒屋のおっさんだな。

 箸はこないだ適当な木材を買って自作した。リアナは苦手そうだったが、シーラはすぐに慣れたようだった。伯爵にも今度渡すか。前教えてないのに小手返しとかしてたし、器用そうだ。

▪️

 アリシアさんにも布教した。しかしアリシアさんは米と生魚と醤油のセットを既に食べたことがあった。

 米や醤油はエルフも普通に食し、淡水魚も処理が得意なものが魔法を使えば生で食べられない事もないとか。ロンドミアで獲れるような魚も鮮度にはよるが、いくらかは生でいけると言っていた。米も植物魔法で改良するため、もっと味が良かったりもするらしい。負けた。まあ海の魚は久しぶりらしく喜んでいたが。

 味噌とかも既にあるのかと聞くと、ありますよ、と言われた。たまにアリシアさんも飲むらしい。なんか健康に良いとか。久しぶりに飲んだ味噌汁はワカメが無かったがそれなりに美味しかった。豆腐はレモンのようなものの絞り汁で豆乳を固めているらしく風味が違った。なんか不思議だ。

 食休みをしてから夜戦に突入し、少し休んでいると、今度王都に連れていってくれと言われた。仕入れと、俺たちのために何か珍しい魔導書が無いかツテを当たるそうだ。業界人特有のコネがあるらしい。朝か昼に送ってもらい、夕方にでも拾ってくれればいいらしい。特に負担でもないので了承する。

 たまにアリシアさんが裏に回っている時に受付にいた女性に店は任せるとか。前から俺の事を見るとアリシアさんを呼びに行き受付を変わっていたあの人ね。

 その後、おなかをなでながら子供とか欲しくなりますね、と言うアリシアさんに戦慄したが、今のところは大丈夫ですと言われたので安心した。

 作る気があるなら頑張って下さいねと言われた。エルフは孕みづらいし、アリシアさんも高齢でさらにそうだからとか。考えておきますと言っておいた。

 その後アリシアさんにはまた積極的に搾り取られた。そういえば前よりなんか色気が増したな。女性ホルモンの影響だろうか。元々ツヤツヤだったが、さらにツヤツヤだ。胸も微妙に大きくなっている気がする。前に冗談で話した牛乳と豊胸マッサージの影響だろうか。

 事を終え、帰ったらまた搾り取られるという事を思い出した。魔法があるし皆魅力的だから普通に楽しめているが、無かったら一人でも持て余しそうだ。魔法に深く感謝してから眠りについた。

▪️

 王都に来た。アリシアさんと別れ、美術博物館に行く。一応貴族なので入館料はタダだった。美術品関係はよくわからない前衛的過ぎるものではなく、普通に観て楽しめるものだったので良かった。博物館も魔物の剥製や、いわれのある武具や遺物、工芸品、宝飾品、色んなものを楽しめた。

 ドラゴンの剥製なんかもあった。だいぶ昔に仕留められたモノだそうだ。頭部だけだったが、かなりの大きさだ。しかも下級のドラゴンではなく、アダマンタイトクラスのドラゴンで、過去の英雄達が仕留めたものらしい。ここの目玉だとか。一番警備が厳重だった。

 骨や鱗や牙、眼、全てが凄まじく貴重らしい。眼や目立たないところの牙は作り物と入れ替えているらしいが、他はそのままだ。

 牙で作られた剣なんかも展示されていた。国宝の一つらしく、生半可なミスリル製の防具も貫くとか。アダマンタイトは厳しいらしいが。リアナの鎧は大丈夫かね。レジェンド級だし、装甲も厚いからある程度は大丈夫かもだが。バイコーンの角をくらった時は、少し凹んですぐ直っていたな。

 バイコーンの角も四本あったし、シーラも全部は使っていないだろうから、サブウェポンでも作るかな。この前貰ったインゴットもあるし、今度武具屋かポランコさんに相談してみるか。

 シーラは内臓や血液が無いのが残念そうだった。錬金術師としては垂涎の品らしい。若返り、蘇生、長時間の不死の薬の材料になるかもだとか。

 一応鑑定してみたが、それらのことは分からなかった。鱗や牙はミスリルよりも強度があり、魔法耐性が高いという事や、骨は杖なんかにも使えるという事は分かった。後、それらを加工して粉なんかにして摂取すると、身体が強固になったりするようだ。普通に粉にするだけではダメらしいので、やり方をシーラに教えておいたら喜んでいた。

 レベルによる成長の鈍化を回復させる、潜在能力向上の薬や、飲むだけで永続的に何かしらが強化されるような薬も研究したいそうだ。一部の魔物は食せばそういった効果があるとは聞いていたが、今まであまり興味がなかったらしい。

 その他、魔道具なんかが展示されている箇所もあったが、そこも一応は面白かった。色々便利なものがあるんだな、という感じである。輸入品らしい車のようなものもあった。馬車の前方にハンドルやアクセルやブレーキがついたもの、という感じだった。車輪がない浮遊タイプもあった。まああってもおかしくはないので、さほど驚きはなかった。

 飛空艇の模型には少し心躍った。維持費がバカ高く、技術者も少ないので、この国には一つしかないそうだ。遠くの魔道具が発展している国なんかではもっとあるそうだが。

 銃器類はなかった。魔法を撃ち出す杖があるので必要ないのかもしれない。銃はクマなんかでも当たりどころが悪いと仕留めきれないしな。何処かにあるかもだがイロモノ扱いかもしれない。
 
 魔法生物なんかのブースは、目立つところにスライムやゴーレムなんかがいた。ゴーレムは翼のあるガーゴイルのようなものや、犬型や猫型の動物型、工業機械のようなものもいた。材質は木や石や金属など。

 ガーゴイルなんかがそうだが、魔法を使うものもいるようだ。魔法を使う可能性もあるのか、気をつけよう。

 人喰い宝箱や、金貨や宝飾品に似せたもの、飛び回る武器、動く鎧なんかもあった。他のブースもそうだが、たまに使役して動かしている者がいる。

 毒気や溶岩の塊のようなものや、強酸性の巨大なスライムとかの危険性が高いものは図と解説だけだった。どうやって作るんだろう。

 他にもホムンクルスなんかの希少なものも図と解説だった。ホムンクルスは人造人間だ。耐用年数や性能は製作者の腕次第、見た目は大体美男美女らしい。素材の遺伝子によって種族もそれに近いものに変わるとか。素材は髪や爪や精液やら色々使うらしい。

 落ちている髪なんかを盗む輩もいるので気をつけましょう、と書いてあった。そんなこと言われてもな。エルフとかよく被害にあってそうだな。髪を盗むぐらいはスリと同じ判定なんだろうか。一応没収の上罰金刑らしい、貴族相手は別だが。普通に売ってくれと頼む輩もいそうだな。

 そんなこんなで美術・博物館見物は終わった。刺激を受けるいい機会になったな、特にドラゴン。他の展示物も楽しめた。リアナも美術品や魔法生物なんかの展示は特に楽しんでいる様子だった。シーラは基本物静かだった。ドラゴン関係で話をした時は興奮していたが。タルトの方が興味深そうだったかもしれない。

 マギーは念話で話したが、色々面白かったと言っていた。特に彫刻のポーズが。確かにタロットの吊るされた男のようなものや、片足を上げて両手を水平に伸ばしたようなものがあったな。精巧な彫刻なだけあって少しシュールだった。

 もう日が暮れていたのでアリシアさんと待ち合わせの喫茶店に向かう。アリシアさんはまだいなかったが、少しするとやってきた。

「楽しめましたか?」

「はい。色々刺激を受けました。アリシアさんの方は収穫はありましたか?」

「仕入れはそれなりに、ユウトさん達向けのは一冊いいのがありました。即死級の攻撃や魔法を無効化するものです。一度受けると消えてしまいますが」

「お、いいですね。助かります」

「結構な魔力を使うそうですが、ユウトさんなら有効に使えるでしょう」

 即死回避、転ばぬ先の杖だな。ありがたい。凄い魔法だが、あらかじめ決めておいた予算で足りたのか聞くと、足りなかったそうだがアリシアさんが払ったそうだ。足りない分を払おうといくら足りなかったのか聞いたが、いつも相手をしてもらっているからそのお礼でいらないと言われた。不足分もそれほどではなかった。

 相手をしてもらっているのは俺の方が得をしている気がするのだが。話し合って次からは予算をもっと多めに設定する事にした。

 後、喫茶店なのでコーヒーを頼んだが、こちらのは酸味が強かった。豆の品種を指定するのを忘れていた。次からは気をつけよう……
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