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本編

二十四話 ポーカー

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 この前は長時間素材を鑑定してシーラに説明し続けて大変だった。シーラのとったメモの量が凄いことになっていた。今もシーラは部屋に篭っている。思う存分研究させてあげよう。

 雷電属性の付与ができる腕輪はシーラに使用させる事にした。メイスなら硬い相手でもダメージが通るが、シャムシールだとあまり斬り込めないかもだからだ。付与があればダメージは通るし、麻痺させられる。テクニック型のシーラには合っているだろう。まああのシャムシールの切れ味だと下手したら鋼鉄も切れそうだが。流石に無理かな?

 ドロップ品の宝飾品、指輪やペンダントなどは魔法効果が付与されていた。バフ系はバランスを考えて分配する。貰い物の宝飾品よりは良い等級だった。まあ貰い物なので捨てたり売ったりはしないが。マギーだけなにもないな。頭に指輪を嵌めるかと聞いたら怒られた。

 鉱石はミスリル、アダマンタイト、緋金、魔鉄とかそんなんだった。ミスリルは分かる。折れず、曲がらず、軽い、鋭い、魔法も補助するとかそんなんだ。薄緑色に光る白銀色。リアナの鎧やシーラのシャムシールに使われている。シャムシールは合金だからかミスリル特有の光を放ってはいなかったが、鑑定で分かった。

 アダマンタイトは超絶に強固で重いとかそんなんだった。炭みたいな黒色で薄く光る。リアナのメイスにも使われていたな。

 緋金は薄赤い光を放つ金で、魔法の補助なんかに特化しているらしい。それ以外は普通の金と似ている。

 魔鉄は魔力を帯びた鉄で、鋼にしなくても鋼鉄並みの強度らしい。こちらは薄青く光る。

 素材持ち込みで俺とシーラの防具でも作ってもらうかな。シーラは服はエピックの優れものなのでそれ以外だ。俺はもう軽装備に慣れたので、今更金属系はそこまで気が進まないのだが。シーラも軽戦士スタイルが合っているので、重い装備は相性が良くなさそうだ。まあ、何かしらあるだろう。



 以前防具を購入した店に相談しに来た。シーラも息抜きに連れてきている。リアナとマギーはお留守番だ。

「へえ、あんたがあの迷宮を討伐したんだね。ボスはミスリル級、凄いじゃないか。その装備でよくやったよ」

「やっぱマズイですかね?」

「あんたの服はプラチナくらいまでは通用しそうだけどね。そっちの娘の服はミスリルでも通用しそうだ。でも頭と足は両方ゴールドの魔物の素材じゃないか。上のランクに挑む前に買い換えようとか考えなかったのかい?」

「あー、魔法でゴリ押しでしたのであんまり。被弾もそんなにしませんでしたし。この服もマンティコアの毒針までは防ぎましたしね。そっちの娘はそもそも被弾しませんでしたので」

「そりゃなかなかだね。でもミスリルランクを相手にするなら、あんたは服も変えた方が良いかもねぇ」

「そうですか、そうですよね。そういえば一応こんなもの拾いましたが」

 鉱石を並べる。

「うーん、それじゃまずはチェインメイルかね。それに魔法を付与する」

「チェインメイル?」

「あっちのがそうさ」

 装備を着けたマネキンを指さす。うっ、なんというかダサい。主に頭部が。頭部から腰まで、顔以外を細かな鎖で覆った鎧であった。

「もっとカッコいいのはありませんか?」

「…まあ分からなくはないがね。じゃあ首から下の鎖帷子のシャツにして、上からその服をつければいいさ。他の部位は何がいいかね。鎖帷子と合わせて職人達に見積もりを出させるよ。寸法を測ったら帰りな。今度来た時にいくつかの候補から選ばせるさ」

「わかりました」

 寸法を測り、鉱石を置いて帰った。



 騎士爵の叙任式はあっさりと小規模で終わった。豪華な広間のようなところで、伯爵とその部下達の前で簡単な宣誓の儀式をし、鞘に複数の紋章が刻まれた短剣を貰った。騎士爵の証らしい。これにも血を垂らし、本人にしか反応しないようにされた。身分証がわりだもんな。ちなみに爵位を剥奪されたら没収されて鋳潰されるとか。

 一応、名前と騎士爵を授爵した事、迷宮を討伐した事、発明品なんかの事はおふれを出すらしい。後は黒髪の魔術師であることもか。性を名乗っていいらしいのでそのままレイセンとした。

 その後は飲み会だった。それを先に聞いていたので皆は連れてきていない。まあ飲み会が無くても連れてこなかったかもだが。

 酒を注がれまくるので、飲む度に解毒した。アルコールは消えたがお腹がタプタプになった。トイレから戻ってきたところでポーカーが始まった。伯爵の要望だ。俺はプレイヤーではなくディーラーに回った。この世界にトランプを持ち込んだのは俺だが、それほど強くないので。幸運を使っていてもである。

 伯爵はたまに負けていたが総合的には一番勝っていた。麻雀とかも強そうだな。遊ばせてみたらハマるかもしれない。今度ザックさんに職人を紹介してもらい、簡易版ができたら特許を申請しよう。一応申請には簡易版でもいいから現物が必要だからである。

 ルールが分からないなら、道具だけあっても仕方ないので大丈夫だろう。ザックさんなら信頼できる職人を紹介してくれるはずだが。工房から盗まれたら少し厄介ではあるが、先にこんなものを申請するから、と伯爵に伝えておけばパクろうとした相手を多分潰してくれるだろう。

 酒を飲みながら上機嫌でサンドイッチを食べていた伯爵に、次はこんなもの作るんですと概要を軽く伝えると、それなら職人は自分が手配するし騎士に警備をさせるからさっさと作らせろと言われた。若干目が血走っていた。運と腕前が両方必要なゲームがこの人のツボなのかな。完全な運ゲーとか、腕前のみとかはあまり刺さらないのかもしれない。

 ちなみにサンドイッチは鑑定するとサンドイッチと表示された。由来を考えると謎だが今更ではある。なにかしらの力が働いているのだろう。元の世界のサンドイッチ伯爵の俗説に思いを馳せながら再びカードを配った。

 
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