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本編
二十話 マンティコア
しおりを挟む警戒していたが、マンティコアは案外すんなりと倒せた。封印と幻惑のコンボが強すぎる。それが決まったら後は頭部か蠍の尾を破壊である。尾を先に破壊する場合は噛みつきとひっかきが残っているので、少し気をつける必要があるが。
一応はマンティコアの魔法耐性との関係か、こちらの魔法がたまに通らなかったり、効果時間が切れるまでが短かったりということがあったのだが、封印を連発する事で対処した。
マギーの幻惑は流石に連発とまではいかず、何度かこちらへの毒針の射出などを許してしまったのだが、頑強の魔法のおかげか、当たりはすれど木製の小型ハンマーで殴られたぐらいの感覚で、痛みは治癒ですぐに消えていった。服も貫通していない。念の為解毒は使ってあるが。
リアナは全身鎧でカバーしノーダメージ、シーラは見切り、マギーは的の小ささとズル賢さを生かして逃げていた。
数回発動を許してしまい被害を受けた氷結魔法は吹雪に雹が混じったもので、かなり寒かったし少し痛かったが、魔法耐性のおかげで我慢できないというほどではなかった。マンティコア自身への加速の魔法はすぐに解呪し、減速や脆弱らしき魔法はこちらに届く前に消えた。
少し厄介だったのは地面を氷で覆って足場を悪くしようとしてきたり、勝てないと判断すると逃げようとしてきた事ぐらいだろうか。
朝から狩り始めて、計三体のマンティコアを仕留めた。キマイラもいたので久しぶりに狩った。キマイラとマンティコアは近しい場所に湧いて争わないのか疑問に思ったが、なんかキマイラは喧嘩を仕掛けそうだが、マンティコアは無視して人族を探しそうだ。利用して、キマイラと戦っている冒険者を横からかっさらうとか、そんな事もしそうだ。
その後ギルドへ行くと、俺はそのままプラチナ、リアナとシーラはプラチナとゴールドに上がった。ついでに軽く話を聞くと、マンティコアの毒針は鉄鎧を普通に貫通するとの事だった。銃弾かよ。こちらに尾が向いたら、転移や防壁の魔法で防いだりもしたが、間に合わない時は顔を庇っていて良かった。皆にも伝えておく。
俺が一番危ういかもしれないので、マギーを見習ってこまめに死角へ移ろう。最近は油断していたな。
一応リアナやシーラにもエルフのお姉さんにオススメされた魔導書を買ってあげたりと、余裕を持たせるようにし始めたのだが。リアナは低レベルの魔法しか習得できなかったが、ないよりはマシだ。シーラは魔法専門の冒険者が使えるようなレベルとまではいかないが、そこそこの魔法が使えるようになった。
俺が幻惑を覚えるか、マギーに封印を覚えさせたかったのだが、在庫にはないとの事だった。一応封印であれば回数制限があるが魔道具の杖が出回っているかもしれないと言われた。探してみると、三回しか使えない上に保険として買うには躊躇する値段だった。
店員にどれぐらいの相手まで通用するのか聞くと、ゴールドクラスの魔物までなら確実に効く、プラチナクラスの魔物にはもしかしたら効くかもとの事だった。マンティコアには使えなさそうだ。使う動作で時間を無駄にしたり、回避が遅れたりするかもだしそれぐらいなら無いほうがいい。
一応プラチナクラスの魔物にも通用するものもあるにはあるらしいが、在庫にはないしさらに高いそうだった。
◆
今は家で、マギーがシーラが召喚した黒猫と戯れているのを眺めている。
先程皆と迷宮にそろそろ挑むかという話をした。マンティコアにも慣れたし、皆特に不安もないようだった。俺は転移阻害と罠の事が気がかりだとも話したが、罠に関してはシーラは多分なんとかなると思うと言い、マギーは大体の罠なら自分が見つけられると言った。
「私達は仕掛ける側だもの。エキスパートね」
との事だった。不自然な魔力も察知できるし、魔力を介さない罠にも自信があるとか。ゴブリンが仕掛けた罠なんかもいち早く気づいていたしな。思わぬ収穫だった。マギーを仲間にできたのは運がいい。
転移阻害については、より準備を怠らないようにして、安全マージンをしっかりと確保するという話になった。後は転移無しでの戦いに俺がもう少し慣れるという事になった。タラスクの時なんかに少し試してたのだがな。
しばらくしてから外出し、俺の転移無しでの戦闘訓練や、リアナ達やマギーへのバフをランダムで減らした状態での戦闘訓練などを行った。敵へのデバフを縛ったりもした。その日は一日訓練に当てた。
◆
俺たちは今迷宮の前に来ていた。キマイラがいたが処理済みである。あれから何日か訓練し、新たに魔導書に手を出したり、食料や野営道具などの準備をしたりした。
洞窟の中に入ると、視界が切り替わり、遠くに大きな生物の反応がある。前と同じく薄く光を放つ石材でできた通路にいた。
陣形を組んで通路を進んで行くと部屋があり、キマイラが二体いた。マギーが幻惑をかけたので、魔槍を連発で撃ち込み倒す。倒れたキマイラは魔石と何かを残して消えてしまった。
「これは多分魔石だが、こっちのキノコはなんだ?」
「これは病気を治す薬に使える素材。性病なんかの治療薬の素材よりもランクが高い」
「へぇ、いいものなんだな。あ、こっちは別のものだな。なんだろう。いや、鑑定を使えばいいのか」
落ちていた変な色をした草に鑑定を使ってみると、再生のポーションなんかに使える素材だった。シーラに見せてみる。
「これは再生のポーションなんかに使う素材らしいぞ」
「本当?わたしの鑑定ではそこまで分からなかった」
「加工方法なんかも分かったが、説明するか?」
「おねがい」
鑑定を使いながら説明をすると、シーラは一言一句聞き逃さないというような感じだった。また後でいくらでも説明してあげるのだが。
「たまに取り引きされてるけど、これは主に若返りの効果を謳われている」
「若返り?凄いじゃないか」
「大したことない。食べると一日寿命が伸びるとか言われている程度。酷い味でのたうち回って寝込むハメになるから、寿命に固執する人間でも頻繁には食べたがらない。罰ゲームなんかにも使われる」
「へぇ、ゲキマズ健康食品みたいなものか」
もう一度詳しく見ると、そのまま食べると肉体を全盛期に一日だけ近づけるとあった。なるほどな。
「これが使えるなら凄いこと。知識が出回ると使い方を秘匿している連中や、再生魔法の使い手の利権に関わるかもだからちょっと危ないけど」
「じゃあ俺たちだけの秘密にするか」
「うん。今度から目をつけられない程度に買って研究する」
それから先程のキノコについても鑑定し分かった事をシーラに伝えた。シーラは少々興奮した様子で、手持ちの素材全部を鑑定してと迫ってきたが、流石に帰ってからという事にした。
それから道を進むと、幾度か道が別れたり、何回か曲がったり、十字路があった。いくつか部屋もあり中にキマイラがいたりした。
途中罠もいくつかあった。マギーが警告してくれたので指示されたところに解呪を使うと、石化と爆破のコンボを行うえげつないものだったりしたので冷や汗をかいた。マギーも解呪を使えるが、念の為自分より得意そうな俺に任せるとの事だった。
ここまでで四時間ほど探索をしたが、次の階層への階段などは無かった。まさか落とし穴を経由しないと迷宮の奥に辿り着けないとかじゃないだろうな。そんな話は聞いていないが。
ちなみにマッピングに関しては魔法である。その辺りの魔導書は在庫が無かったのでオリジナルだ。ゲームのマップ機能やスマホのマップアプリなんかをイメージした。今まで訪れた場所がマップに表示される。アイコンやメモ書きなんかも記せるようになっている。自分の現在の位置もマップに表示される。
改めてマップを見返すと、普通に外に出るには多大な苦労をしそうなくらい入り組んでいた。手書きで地図を書くにも何枚も紙が必要そうだ。記憶力に優れた斥候なんかがいたらどうにかなるんだろうか。
ファンタジーなんかでは空中に矢印が出て目的地まで案内するような魔法もあった気がするな。あとはマーキングの魔法を使うとか、目印用の置物を設置するとか。色々工夫の仕方はあるか。
探索開始から結構な時間が経ったので、椅子とテーブルを出し、一旦食事と休憩にする。ソファーとベッドなども持ってきている。流石にベッドはまだ使わないが。食事を終えたのでソファーでくつろぐ。
「ここまでで何か懸念事項はあるか?」
「罠などもマギーさんが見つけてくれますし、戦闘も特に苦戦はないので今のところはありませんね」
「階段が見つからないし、どれぐらい広い迷宮なのかは少し気になる。後は早く帰って研究がしたい」
「私は少し飽きてきたわね。次に休憩する時はトランプしましょ」
「特にないか。シーラは少し辛抱してくれ。トランプはいいぞ、気晴らしになるしな」
そんなこんなでまた探索を始めた。
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