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本編

十九話 魔法や神々

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 あれからあえて何日か転移を使わず街をぶらついてみたり、ギルドの酒場に寄ったりしてみたが、特に何もなかった。一応家に出入りする時は転移を使ったが。

 リアナとシーラは不特定多数の人間がたむろする場所でお酒を飲むのは抵抗があるとの事だったので、一人で行った。敵意感知に反応があったら即逃げる構えで。解毒があるからアルコールは飛ばせるのだがな。自分だけ飲むのもアレだし、どうせなら緊張感がない状態で楽しく飲みたいので果実酒を買って帰ると、リアナ達は喜んでいた。マギーはうへへへと笑いながらフラフラと飛んでいた。

 そんなこんなしながらも、一応魔物を倒したり、素材を採取したりもしていた。今日はロンドミアから少し東北に行ったところにある河川地帯で、タラスクというプラチナランクの魔物を狩っていた。

 竜のような頭にデカい亀の甲羅、長い蛇のような尻尾を持った六本足の怪物である。水の魔法を多彩に操り、頑強の魔法も使うので防御力も高く、噛みついてきたり尻尾で薙ぎ払ったりしてくるらしい。ついでに口からは酸を吐く。鑑定で見たところ魔法は通じるようだ。

 封印で魔法を封じ、幻惑で見当違いの方向に攻撃させ、脆弱で防御力を下げ、メイスで粉砕し、シャムシールで切り裂く。久々に俺も杖で近距離攻撃を行ったりもした。終始一方的だった。

 戦闘経験も積みたいので封印を解くと、水魔法で近くの水を操りウォーターカッターのようにして飛ばしてきた。バフを信じて転移を使わずに避ける。転移が使えない場合にもある程度戦えるようにしておこうと思ったからだ。

 リアナは何発かくらっていたが、ケロリとしていた。シーラは先読みして当たらない。マギーは姿を消したり、死角に陣取ったりして安全を確保していた。魔法は耐性があるからいいが、酸だけはちょっと嫌だったので口を開いたら防壁を貼った。

 縛りプレイをして水魔法と頑強に少し手こずりながらいくらかタラスクを倒した後、半馬半魚のケルピーというシルバーの魔物も近くに生息していたので倒しに行った。群れをなして襲ってくる魔物で、単体の場合よりもランクは上がる。圧縮した水の球の弾幕を形成してきた。

 しばらくドッジボールをした後、味方に声をかけてから雷撃を放った。感電が心配だからな。この前、当てた相手を麻痺させる雷電魔法の有用性を感じたので、対策に雷電耐性強化も習得しておいた。なので味方を巻き込んでも最悪問題は無いかもだが、連携の訓練として行った。

 前衛の味方ごと雷撃をぶち込むのは有用そうなので、どれぐらいまでならノーダメージかもテストを行い確かめた。大体のラインは分かったので、参考にする。魔物相手もそうだが、対人戦だと特に使えそうな戦術だな。味方ごと雷撃で狙うとはあまり思わないだろう。多分。氷結や火炎なんかも今度試すかな。

 水、土、風などの主に物理系?ダメージの魔法は店売りの耐性強化魔法はないようだった。熱量の増減も雷も物理といえば物理だが。まあそれらも魔法である限りは魔法耐性強化で軽減される。ちなみに、水、風、土に干渉して威力を軽減するのが得意なものもいるにはいるらしい。水と風と植物魔法が得意なエルフ。火と土と鉱物魔法が得意なドワーフなど。

 あのエルフのお姉さんは火や、氷や、雷の方が得意なのかな?火炎耐性以外は執筆しているのか聞いてないが。異端で森を追われたとかかもしれない。人に歴史ありだな。

 水で窒息させたり、風で空気中の酸素を減らして酸欠にしたり、水を電気分解して酸素と水素に分離して火をつけて爆発させたりとか夢が広がるな。純水は電気を通さないから、地面や空気中の塵を混ぜないといけないかな。

 あらかた近くの魔物は倒し終わったので、遠くに不純物を含んだ水球を作成し、強力な電流を流す。水球が気化したタイミングで火の球を撃ち込むと、閃光と爆音、衝撃波が走った。三人には念の為後方に待機してもらっていた。

 あれこれ考えて爆発させたが、普通に遠くでミサイルが爆発するイメージで魔法を使ってみたら、そっちの方が威力があった。科学的思考は俺には向かないようだ。水で溺れるイメージをすれば窒息系魔法は使えるかもだが、酸素の濃度をどうこうは上手くいかないかもしれない。

 転移してゴブリンで試してみると、やはり前者は多少上手くいったが、後者はダメだった。そんなものか。

 魔物の素材は大型のものを一度に複数出すと怒られるので、ある程度分量を調整して売却している。前に実験したら収納は時間が経過しないようだったので。タラスクも大きかったので小刻みにしなきゃな。

 最近はなんとなく離れた場所に生息している魔物の方がギルドでの買取価格は高そうな気がしたので、素材の売却場所を使い分けている。あまり遠くの魔物だと解体のノウハウがないとかでまた変わりそうだが。

 口座に入ってる金額はごくたまに確認しているだけなので、細かい査定額は分からない。俺が死んだらリアナやシーラに受け継がれるようにしたいので、手持ちの金に困らない限りはギルドの口座に眠らせておくつもりだ。商人ギルドの方も同じく。

 ちなみに、いくつもの国を跨ぐようなギルド組織は、大昔にあった帝国が滅ぶ前からある、歴史が長いものらしい。昔大陸を支配していた帝国が、迷宮の異常増殖を抑えられなくなり、政情不安で内乱なども発生し、分裂し滅びたらしい。

 未だに皇族の末裔を名乗り、帝国を自称する国もどっかにあるとか。帝国といっても特に覇権を狙っているという訳ではないそうだが。

 最近迷宮が増えてるって話だし少し不安だな。俺も巻き込まれた世界間の魔力移動が関係しているんだろうか。

 護衛での野営の時に確認したが、この世界の夜空には紫色の大きな月が浮かんでいた。不思議と他に星々などは見えなかった。また違う世界で目が覚めるかもと不安になったが、特にそういう事は無かった。一人ならまだしも既にリアナがいたからな。元の世界では通常お目にかかれないような美少女である、失うのは惜しい。今はシーラもいるし尚更だ。マギーとも仲良くなったしな。

 あの赤髪の人は、このアルカディアは魔力が流れ込みやすい世界だと言っていたが、逆はあまり無いのかもしれない。元の世界の伝承に残る魔物もこちらにいるので、もしかしたらこっちから向こうに渡った人族や魔物や神がいるかもだが。

 今更元の世界に戻る事は考えられないので、そうならないように祈っておく。この世界には実際に神がいるそうだが、特に誰にという訳ではない。存在するのなら幸運の女神に祈りたいところだ。

 リアナに聞くと、特に信仰する神はいないらしい。強いて言うなら癒しと安寧を司る月の神だそうだ。シーラは神の血を引くと言われた神話の錬金術師を信仰しているとか。不老不死となり、神に近い扱いをされているとか。消息は不明らしいが。マギーが主に信仰するのは妖精達の女王だそうだ。いつかは女王のように妖精を率いて、おもしろおかしく暮らすのを目標にしているらしい。妖精を生み出した原初の妖精樹も崇めているとか。

 信仰を集め神になった者もいるらしい。通貨の単位であるマールも、過去の偉人の名前らしい。偉業を成して神になったから通貨の単位になったのか、通貨の単位になったから信仰を集め神になったのかは定かではないらしい。通貨を偽造すると、程度によってはマール神から神罰を受けるとか。だから各国の権力者も気を使っているらしい。実際に地上に力を及ぼせるんだな。

 神殿でも加護は実際にあるという話をしていたが、魔法がある世界だからな。多分あるんだろう。信仰を集めると神になれるかもらしいので、なにかしら信仰を集めるとプラスになると判断し、あの赤髪の人の御健勝を祈っておいた。さっきは幸運の女神が良いとか考えていたのでアレだが、貰ったものが多すぎるからな。

 幸運の女神はいないのか皆に聞くと、しいて言えば過去の英雄らしい。絶望的な状況を幾度も奇跡的に覆し、人々を魔物から守った女性だとか。戦士や騎士もそうだが、ギャンブラーにも崇められているらしい。神になったかは知らないがギャンブラーに崇められてて本人は嬉しいのだろうか。

 カニの味噌汁。ネコと和解せよ。
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