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異世界でお菓子屋さんを開きました 最終章

第4話 ある鬼と従者の物語③ ※武虎side

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第4話 ある鬼と従者の物語③

※武虎side
………………………………………………………………

衛兵「雛美火王子が…城に帰ってきた…」

衛兵さんの言葉に、
一気に部屋の温度が下がった。

妖怪1「うそっ…しばらく数年は
帰って来ないって…」

衛兵「……俺もそう思ったんだが…
急に…」


「……………」

雛美火王子…噂で聞く限り、冷酷無慈悲で
逆らえば妖怪でも殺してしまう。

『雛美火は数年帰って来ない』って、
焔火国王に聞かされていたから
安心してこの仕事を始めたのに…

たった1ヶ月で、
戻ってくる話が出るなんて、

バッタリ会う可能性があるかも知れない…
会わない様にしっかり隠れなきゃ…

 妖怪1「とにかくお仕事は中断だね
この後、大会議室で雛美火王子が
お話されるでしょ」

衛兵「あぁ…それと…
そちらの『坊ちゃん』も連れて来て
欲しい」

えっ…

妖怪1「何言ってるの!
この子は人間だよ!!雛美火王子の前に
出したらっ…殺される!だからっ…」

先輩は私を庇い悲痛な表情で
衛兵さんに連れて行かない様
訴えかけたが…


衛兵さんは暗い顔で首を振り

衛兵「…駄目だ雛美火王子が
お話される前に点呼を取るそうだ
その場にいなかったら…その者は殺される

それに連帯責任として関わっている
者たちも…罰せられる」

妖怪1「そんな……ひどすぎるよ…」

「…………」

…怖い…行きたくない…
雛美火王子なんかに会いたくない…

でも…私が行かなかったら、
皆んなが罰せられる
そんなの嫌だ…




「先輩…僕、行きます」
 
大丈夫、大人しくして、
目立たない様にすれば
何も起きないはずよ

妖怪1「武虎君…分かった
目立たないよにするんだよ」

衛兵「本当にすまない…2人とも」


……………………………………………………


…………………………………………


………………………………



先輩と衛兵さんの3人で
雛美火王子が指定した大部屋に
入った。

部屋の中はシーン…と静かで


檸門「…………………」

櫻海「………………」


この場にいる全員が口を閉ざし
表情がとても固かった。



カツ カツ カツ


音ひとつしない大部屋に、
足音が響いた。

その足音を聞こえたと同時に、
周りの妖怪達は一斉に頭を下げた。


妖怪「きっ来た!武虎君
頭を深く下げて!(小声)」

「はっ…はい(小声)」


雛美火様が玉座に座るまで、
頭を下げ続ける。

…そう言えば雛美火王子を見るの
初めてだな…

みんなの怯え様を見ると
やっぱり筋肉隆々の厳つい男性なのかな…

カツ カツ カツ カタンッ

雛美火「顔を上げよ皆の者
これから話し合いを始める」


バッと一斉に全員の顔が上がる。 


妖怪1「武虎君!(小声)」

「……!」


先輩の掛け声を聞き、
皆んなと合わせて私も顔を上げた。

顔を上げ、雛美火王子の姿を
目に写した瞬間、驚愕した。

私が思っていたイメージと
かけ離れていたから。

華奢な体つきに、薄いグレー色の
長い髪を煌びやかに靡かせて、
儚げな系美人の感じだ。

この方が雛美火王子?!
あの冷酷無慈悲の…
あまりの衝撃に思わず…


「美しい…妖怪」

…とポロッと言葉が出てしまった。

妖怪1「………!!武虎君(小声)」


あっ…しまった!

慌てて口元を押さえたが、
間に合わず…


雛美火王子が…

雛美火「……美しい…だと…」

ガタッ!!玉座からと立ち上がり、
私の方に向かって歩き出した。


カツ カツ カツ カツン…

そして、目の前に立ち止まり
私の全身をじっと見据えてこう言った。



雛美火「今の言葉はお前が言ったのか?」















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