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第一章
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カイト様を見送った私は、ナイツと共に家の中に入りました。
帰りの報告をするために、母が居るというサロンに 向かいます。
「ところでシオン様。頂いたこちらのお土産は菓子でございますか?」
一歩後ろを歩くナイツが私に質問してきました。
「はい。実はこれは東の国のお菓子なのですよ。」
「なんと……。東の国の菓子なのですか?東の国の菓子は中々こちらでは手に入らないはずですが……。」
めったに驚かないナイツが、少し目を見開きます。
「ふふ。そうですよね。私も今日(というか、今世では)初めて食べましたから。」
「もう、お召し上がりになったのですね。」
「はい。カイト様におすすめのお店があるので一緒に行かないかとお誘いを受けたのですけど、そのお店が東の国のお菓子を提供していたんです。」
「なるほど。そんなお店があるとは知りませんでした。」
ふむふむと、ナイツが頷いています。
そんな会話をしているうちにサロンに着きました。サロンには母と妹が居てティータイム中でした。
「ただいま帰りました。」
私が声を掛けると、
「あら、シオン。お帰りなさい。戻っていたのね。」
「シオンお姉さま、お帰りなさいませ。」
こちらに気づいた母と妹が、笑顔で返事をしてきました。
そして妹は私に近付いて来て、
「シオンお姉さま、何だか甘い香りがします。それに、ナイツが持っているのは何ですか?」
と、聞いて来ました。
「ああ、今日はカイト様にお誘いを受けて、珍しいお菓子を食べてきたのですよ。なので、甘い香りがついてしまったのかも知れないですね。」
「カイト様のお誘い?シオンお姉さまはカイト様とお外へお出かけもしたのですか?」
「はい。おすすめのお店があるからと、誘われたのです。そのお店、実は東の国のお菓子を販売していたのですよ。ナイツに渡したのは、お土産に買ってきた東の国のお菓子です。」
「まあ!本当に?東の国のお菓子だなんて久しく食べていないわ。嬉しい。」
一瞬目を丸くした母でしたが、直ぐに満面の笑みを浮かべて喜んでいます。
「ふふ、良かったです。ただこのお土産も、お店の飲食もザイール家にお支払していただいたのです。なので……」
「そうね。次にカイト様とお会いする時はお礼をしないとね?」
「はい。実はまたカイト様からお誘いを受けているのでその時に。」
「あらっ、カイト様って意外に積極的なのね?以前拝見した時は、とても綺麗な子だけどちょっと冷たそうな印象だったから少し心配だったの。」
「えぇと、確かに外見はそうかも知れませんが、とても気を使っていただいていますよ?」
「そう。それなら良かったわ。」
母はほっとしたように言いました。
それから、あら?と何かに気づいた様子の母は、
「ところでフィリア?さっきからどうしたの?黙っているなんて珍しいじゃない?」
と、言ってきました。
そう言えばさっきからフィリアの声が聞こえませんね?
「フィリアちゃん?どうしたの?」
「……なんて、」
「え?」
「カイト様なんて、嫌いです!」
「!?」
キッと顔を上げたフィリアは、急にそんな事を言ってきました。
「ど、どうしたの?急にそんな事を言うなんて。」
「急にではありません!シオンお姉さまを長い間独り占めする人なんて、嫌いです!」
「フィリアちゃん……。」
「シオンお姉さまを取られるのは嫌ですっ。……お父さまはお仕事だし、お母さまだって忙しいからずっとは一緒には居られないし、エクスお兄さまもマリーお姉さまも居ないのに、シオンお姉さままで居ないなんて、フィリアは、フィリアは寂しいです……。」
とフィリアは言って、抱きついてきました。
(確かに最近はカイト様へばかり気を回してしまって、フィリアをあまり構ってあげられなかったかも知れません。私は駄目な姉ですね……)
「ごめんね、フィリアちゃん。寂しい思いをさせてしまって。」
私は、抱き付いてきたフィリアの頭を撫でながら言いました。
「……。」
「あのね、フィリアちゃん。私は確かにカイト様の婚約者になったけど、まず先にフィリアちゃんのお姉ちゃんです。」
「……。」
「だから、取られるなんて事はないですよ?ずっとずっと変わらずフィリアちゃんのお姉ちゃんです。」
「っ、はい!……シオンお姉さま、大好きです!」
「私もですよ、フィリアちゃん。」
フィリアはようやく気持ちも落ち着いたのか、笑顔を見せてくれました。
「ふふっ。相思相愛ねぇ、うちの子たちは。」
「そうでございますねぇ、奥様。」
母とナイツはそんな私達を見て、クスクスと笑っています。
そして、そんな和やかな雰囲気の中で、私も交えたティータイムが再び始まったのでした。
帰りの報告をするために、母が居るというサロンに 向かいます。
「ところでシオン様。頂いたこちらのお土産は菓子でございますか?」
一歩後ろを歩くナイツが私に質問してきました。
「はい。実はこれは東の国のお菓子なのですよ。」
「なんと……。東の国の菓子なのですか?東の国の菓子は中々こちらでは手に入らないはずですが……。」
めったに驚かないナイツが、少し目を見開きます。
「ふふ。そうですよね。私も今日(というか、今世では)初めて食べましたから。」
「もう、お召し上がりになったのですね。」
「はい。カイト様におすすめのお店があるので一緒に行かないかとお誘いを受けたのですけど、そのお店が東の国のお菓子を提供していたんです。」
「なるほど。そんなお店があるとは知りませんでした。」
ふむふむと、ナイツが頷いています。
そんな会話をしているうちにサロンに着きました。サロンには母と妹が居てティータイム中でした。
「ただいま帰りました。」
私が声を掛けると、
「あら、シオン。お帰りなさい。戻っていたのね。」
「シオンお姉さま、お帰りなさいませ。」
こちらに気づいた母と妹が、笑顔で返事をしてきました。
そして妹は私に近付いて来て、
「シオンお姉さま、何だか甘い香りがします。それに、ナイツが持っているのは何ですか?」
と、聞いて来ました。
「ああ、今日はカイト様にお誘いを受けて、珍しいお菓子を食べてきたのですよ。なので、甘い香りがついてしまったのかも知れないですね。」
「カイト様のお誘い?シオンお姉さまはカイト様とお外へお出かけもしたのですか?」
「はい。おすすめのお店があるからと、誘われたのです。そのお店、実は東の国のお菓子を販売していたのですよ。ナイツに渡したのは、お土産に買ってきた東の国のお菓子です。」
「まあ!本当に?東の国のお菓子だなんて久しく食べていないわ。嬉しい。」
一瞬目を丸くした母でしたが、直ぐに満面の笑みを浮かべて喜んでいます。
「ふふ、良かったです。ただこのお土産も、お店の飲食もザイール家にお支払していただいたのです。なので……」
「そうね。次にカイト様とお会いする時はお礼をしないとね?」
「はい。実はまたカイト様からお誘いを受けているのでその時に。」
「あらっ、カイト様って意外に積極的なのね?以前拝見した時は、とても綺麗な子だけどちょっと冷たそうな印象だったから少し心配だったの。」
「えぇと、確かに外見はそうかも知れませんが、とても気を使っていただいていますよ?」
「そう。それなら良かったわ。」
母はほっとしたように言いました。
それから、あら?と何かに気づいた様子の母は、
「ところでフィリア?さっきからどうしたの?黙っているなんて珍しいじゃない?」
と、言ってきました。
そう言えばさっきからフィリアの声が聞こえませんね?
「フィリアちゃん?どうしたの?」
「……なんて、」
「え?」
「カイト様なんて、嫌いです!」
「!?」
キッと顔を上げたフィリアは、急にそんな事を言ってきました。
「ど、どうしたの?急にそんな事を言うなんて。」
「急にではありません!シオンお姉さまを長い間独り占めする人なんて、嫌いです!」
「フィリアちゃん……。」
「シオンお姉さまを取られるのは嫌ですっ。……お父さまはお仕事だし、お母さまだって忙しいからずっとは一緒には居られないし、エクスお兄さまもマリーお姉さまも居ないのに、シオンお姉さままで居ないなんて、フィリアは、フィリアは寂しいです……。」
とフィリアは言って、抱きついてきました。
(確かに最近はカイト様へばかり気を回してしまって、フィリアをあまり構ってあげられなかったかも知れません。私は駄目な姉ですね……)
「ごめんね、フィリアちゃん。寂しい思いをさせてしまって。」
私は、抱き付いてきたフィリアの頭を撫でながら言いました。
「……。」
「あのね、フィリアちゃん。私は確かにカイト様の婚約者になったけど、まず先にフィリアちゃんのお姉ちゃんです。」
「……。」
「だから、取られるなんて事はないですよ?ずっとずっと変わらずフィリアちゃんのお姉ちゃんです。」
「っ、はい!……シオンお姉さま、大好きです!」
「私もですよ、フィリアちゃん。」
フィリアはようやく気持ちも落ち着いたのか、笑顔を見せてくれました。
「ふふっ。相思相愛ねぇ、うちの子たちは。」
「そうでございますねぇ、奥様。」
母とナイツはそんな私達を見て、クスクスと笑っています。
そして、そんな和やかな雰囲気の中で、私も交えたティータイムが再び始まったのでした。
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