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2話 確定申告するの?

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大学図書館の本棚を探す私。

「税金・・・ 税法・・・ これかな」

緑色の表紙に「租税法」と書かたその本は手に取るとずっしり重たいです。
厚さは10センチくらいでしょうか。

なんでこんな本を読むのか、ですって?

ウーバーからメールが来たんです。
「配達パートナーの方は個人事業主として所得税の確定申告の義務があります」って。

税金の申告とかやったことないです。
青色申告ってのがいいんでしたっけ。
この本、緑色だけどいいのかな。
青信号も緑色だから、緑も青なのかな。

「金子宏著」
「かねこ・・・なんて読むだろう」

ページを適当にめくり、
「租税法律主義は、近代法治主義の、租税の賦課・徴収の面において現れるのである。法治主義とは、権力の分立を前提として・・・・」(※1)

「なにこれ・・・」
全然意味不明なんですけど。

びっしり詰まった細かい文字を見つめながら呆然とする私。
諦めて本を閉じようとします。
その時、隣から

「横、失礼しますね」

「あ、はい。私、もう行くんで」

立ち上がろうとすると、隣に座ったのは本庄先輩です。

「えっ、本庄先輩・・・?」

「はい、本庄茜です。初めまして」

どうしてここに?
ドキドキしながら、

「は、初めまして。中村叶音なかむらかのんです」

「中村さんもウーバーの仕事やってますよね。
自転車で頑張ってる姿、よく見ますよ」

「はい・・・」

本庄先輩にお近づきになるためにウーバーの仕事を始めたとは言えなくて。

「ふーん、税法の勉強をしてるんですね」

「確定申告やらなきゃいけないって聞いて・・・
でも難しくて私には無理です」

「うふふ、この本は初心者向きじゃないですね」

「そうなんですか。やっぱり。
全然意味が分からなくて」

私、本庄先輩とお話してる!
私がウーバーの仕事しているの見ててくれてたんだ!

「本庄先輩は確定申告ってどうやってるんですか」

「私はね・・・」

そこに図書館の職員が来て

「図書館ではお静かにお願いします」

注意されてしまいました。

「すみません」

もっと本庄先輩とお話したいのに。
どこか別の場所で・・・
そう思っていると本庄先輩が顔を近づけます。

えっ・・・

先輩は耳元で小さな声で

「私の家に来ませんか。いろいろ教えてあげる」

「い、いいんですか」

「えぇ、大学の近くよ」

先輩の家にだなんて。
緊張しながら二人で駐輪場へ。
私は自転車にまたがり、先輩はスクーターに。

「ゆっくり走るからついて来て」

「はい!」

ドゥルルルル ドゥルルルルル ガチャッ ドクルルルルルルッルルルッ

先輩は左足のペダルを踏み込み発進します。

カッコいいなぁ。
私、バイクのことはよく分からないけど、先輩のスクーターは他の人のとちょっと違います。

スクーターって、ハンドルの右手のところを回すのがアクセルですよね。
ブレーキは自転車と同じで左右のハンドルのレバーですよね。
じゃあ、左足のところにあるペダルはなんでしょう。

先輩が踏むたびにガチャッって音がします。
ひょっとしてギアチェンジってやつ?

ヘルメット姿の先輩の後を、ペダルをこいで走ります。

レトロで可愛い赤のスクーターを颯爽と乗りこなす先輩。
つい見とれてしまいます。



※1:金子宏「租税法14版」66ページより引用

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