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2章:新たな知識
約束 3話
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「桜綾さん! 朝です! 起きてください!」
「んんー……」
起きる気配のない桜綾を揺すり、起こそうとがんばっているが、彼女はなかなか起きない。それでもめげずに揺すり続ける。
桜綾と一緒に過ごした時間は、村で住んでいた頃よりも短いけれど、朝に弱いことは知っていた。とはいえさすがにこんなに朝が弱いとは、最初に会ったときは思わなかった。辛抱強く揺すり続けて、ようやく彼女の目がゆっくりと開いた。
「……もうあさ……?」
「はい、朝ですよ。桜綾さん。起きてください、蘭玲さんが水を持ってきてくれますよ」
布団にもぐろうとする桜綾の手を慌てて掴み、ぐいっと引っ張る。渋々というように起き上がる彼女を見て、ほっと息を吐いて手を離す。
それでもまだうとうとしているようで、このまま寝台に倒れそうだ。
「胡貴妃、お水を持ってきましたよ」
「あ、蘭玲さんです!」
朱亞は素早く扉に移動して、開けた。桶を持っているだろうから、開けづらいだろうと考えて。その考えを読んでいたのかのように、蘭玲は優しいまなざしを彼女に向けている。
「胡貴妃、朝に弱いのですね……」
「そうみたいです」
ひそひそと内緒話をするように顔を寄せ合う二人を見て、ようやく桜綾の眠気も落ち着いたようだ。ゆっくりと寝台から抜け出して、蘭玲に近付いた。
「わざわざ持ってきてくれたのね、ありがとう。あと、おはよう」
「おはようございます。胡貴妃」
「おはようございます。じゃあ私はごはんをもらってきますね」
宮女がいるとはいえ、この後宮内に女性は少ない。なので、人数が安定するまでは自分たちでなんとかしないといけない。
後宮までの旅の途中で皇帝――飛龍に伝えられていたことを思い返しながら、朱亞は厨房まで歩いていく。
朝食をもらって、桜綾の部屋まで運んで……今日は早速調査をしてみようとやることを数えていった。
考え事をしていると、あっという間に厨房についた。朱亞が「朝ごはんをいただきにきました」と声をかけると、桜綾の分の料理を渡される。
(ええと、桜綾さんが先に食べて、私と蘭玲さんはあと、でいいんだよね)
昨日は始まりの日だったので、一緒に食事を摂っていたが、本来なら桜綾と朱亞は一緒に食べてはいけないのだろうと肩をすくめた。
桜綾の分はともかくとして、侍女である朱亞と蘭玲はどこで食べるのだろう? と首を傾げながら自分が仕える桜綾の部屋に、料理を運ぶ。
「朝食を持ってきました」
朱亞の声に蘭玲が扉を開けてくれた。中に入り、桜綾の前に料理を置く。彼女はもう着替えていて、すっかりいつもの様子になっていた。
「んんー……」
起きる気配のない桜綾を揺すり、起こそうとがんばっているが、彼女はなかなか起きない。それでもめげずに揺すり続ける。
桜綾と一緒に過ごした時間は、村で住んでいた頃よりも短いけれど、朝に弱いことは知っていた。とはいえさすがにこんなに朝が弱いとは、最初に会ったときは思わなかった。辛抱強く揺すり続けて、ようやく彼女の目がゆっくりと開いた。
「……もうあさ……?」
「はい、朝ですよ。桜綾さん。起きてください、蘭玲さんが水を持ってきてくれますよ」
布団にもぐろうとする桜綾の手を慌てて掴み、ぐいっと引っ張る。渋々というように起き上がる彼女を見て、ほっと息を吐いて手を離す。
それでもまだうとうとしているようで、このまま寝台に倒れそうだ。
「胡貴妃、お水を持ってきましたよ」
「あ、蘭玲さんです!」
朱亞は素早く扉に移動して、開けた。桶を持っているだろうから、開けづらいだろうと考えて。その考えを読んでいたのかのように、蘭玲は優しいまなざしを彼女に向けている。
「胡貴妃、朝に弱いのですね……」
「そうみたいです」
ひそひそと内緒話をするように顔を寄せ合う二人を見て、ようやく桜綾の眠気も落ち着いたようだ。ゆっくりと寝台から抜け出して、蘭玲に近付いた。
「わざわざ持ってきてくれたのね、ありがとう。あと、おはよう」
「おはようございます。胡貴妃」
「おはようございます。じゃあ私はごはんをもらってきますね」
宮女がいるとはいえ、この後宮内に女性は少ない。なので、人数が安定するまでは自分たちでなんとかしないといけない。
後宮までの旅の途中で皇帝――飛龍に伝えられていたことを思い返しながら、朱亞は厨房まで歩いていく。
朝食をもらって、桜綾の部屋まで運んで……今日は早速調査をしてみようとやることを数えていった。
考え事をしていると、あっという間に厨房についた。朱亞が「朝ごはんをいただきにきました」と声をかけると、桜綾の分の料理を渡される。
(ええと、桜綾さんが先に食べて、私と蘭玲さんはあと、でいいんだよね)
昨日は始まりの日だったので、一緒に食事を摂っていたが、本来なら桜綾と朱亞は一緒に食べてはいけないのだろうと肩をすくめた。
桜綾の分はともかくとして、侍女である朱亞と蘭玲はどこで食べるのだろう? と首を傾げながら自分が仕える桜綾の部屋に、料理を運ぶ。
「朝食を持ってきました」
朱亞の声に蘭玲が扉を開けてくれた。中に入り、桜綾の前に料理を置く。彼女はもう着替えていて、すっかりいつもの様子になっていた。
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