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4章:アシュリンと魔法の絵本
アシュリンと魔法の絵本。 5話
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毎回、メイソンとロッティの家に行けばこうしてたんまりと『お土産』をもらうことが多い。
母のホイットニーは「助かるわぁ」と喜んでいたことを思い出し、ほんの少しだけ家族に会いたくなった。
もちろん、会おうと思えばいつでも会える。
だけど、アシュリンは旅立つときに決めていた。
――旅立ったエレノアと、出会うまで帰らない。
エレノアはまだ五歳。もしも自分と同じ十歳で旅立ったとすれば、アシュリンは十五歳になる。もしかしたら、アンディと同じように十二歳で旅立つかもしれないが、それはそれで自分の成長した姿を見せることができると考えていた。
「とりあえず、ご飯を食べよ!」
「そうだね。まだまだ先は長いんだから」
ラルフはいつの間にかやかんに水を入れ、お湯を沸かしていた。どうやらロッティからもらったハーブティーをいれようとしているみたいだ。
「それ、おばあちゃんのハーブティー?」
「うん。せっかくいただいたから、早速飲んでみようかなって」
沸いたお湯をティーポットとティーカップに入れて温め、ティーポットのお湯を捨て、ドライハーブをティースプーン山盛りで二杯入れる。
お湯を入れてふたをして五分待ち、ティーカップのお湯を捨てて、ハーブティーを注ぐ。カップを持ち、「熱いから気を付けて」と言いながら、アシュリンに渡した。
「ラルフ、いつの間にハーブティーのいれ方を習ったの?」
「アシュリンが寝たあとに、ちょっとね」
アシュリンの寝る時間は早い。日中元気に遊んでいたから、眠くなるのも早くてご飯を食べて、お風呂に入ったらすぐに眠くなってしまう。
「へぇー。知らなかった」
ふーふーと息を吹きかけて冷まし、こくりと飲む。
「……はちみつある?」
「はい。ごめん、入れてなかった」
カバンからはちみつを取り出してアシュリンに渡すと、「ありがとー」と受け取ってふたを開け、スプーンを使いはちみつを入れた。
くるくるとかき混ぜて、もう一度飲んだ。今度は甘くて飲みやすくなった。
「むぅ、ハーブティーをそのまま飲むのは、わたしにはまだ早いみたい」
「そのうち飲めるようになるだろうけどね」
ラルフは牛肉のローストをぱくりと食べた。これにもロッティお手製のハーブが使われている。
ベイリーフ、タイム、ローズマリー、ウインターセボリー、オレガノ、バジルなどを刻んで混ぜたものだ。
牛肉のローストの付け合わせの野菜はパプリカ、ミニトマト、マッシュルーム、小タマネギ、カリフラワー、ゆでたジャガイモなど。
塩コショウを振って焼いてある。ハーブの香りは食欲を刺激する。
「ロッティさんはハーブが好きなんだね」
「そうみたい。わたし、三歳くらいに初めておばあちゃん家に行ったんだけど、その頃からずっとだよ」
「趣味なのかな……?」
「んーと、おばあちゃん、育てたハーブでお仕事もしているよ」
意外そうに目を瞬かせるラルフに、アシュリンはリーリクルでロッティがどんなことをしていたかを教えた。
母のホイットニーは「助かるわぁ」と喜んでいたことを思い出し、ほんの少しだけ家族に会いたくなった。
もちろん、会おうと思えばいつでも会える。
だけど、アシュリンは旅立つときに決めていた。
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「とりあえず、ご飯を食べよ!」
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「それ、おばあちゃんのハーブティー?」
「うん。せっかくいただいたから、早速飲んでみようかなって」
沸いたお湯をティーポットとティーカップに入れて温め、ティーポットのお湯を捨て、ドライハーブをティースプーン山盛りで二杯入れる。
お湯を入れてふたをして五分待ち、ティーカップのお湯を捨てて、ハーブティーを注ぐ。カップを持ち、「熱いから気を付けて」と言いながら、アシュリンに渡した。
「ラルフ、いつの間にハーブティーのいれ方を習ったの?」
「アシュリンが寝たあとに、ちょっとね」
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「へぇー。知らなかった」
ふーふーと息を吹きかけて冷まし、こくりと飲む。
「……はちみつある?」
「はい。ごめん、入れてなかった」
カバンからはちみつを取り出してアシュリンに渡すと、「ありがとー」と受け取ってふたを開け、スプーンを使いはちみつを入れた。
くるくるとかき混ぜて、もう一度飲んだ。今度は甘くて飲みやすくなった。
「むぅ、ハーブティーをそのまま飲むのは、わたしにはまだ早いみたい」
「そのうち飲めるようになるだろうけどね」
ラルフは牛肉のローストをぱくりと食べた。これにもロッティお手製のハーブが使われている。
ベイリーフ、タイム、ローズマリー、ウインターセボリー、オレガノ、バジルなどを刻んで混ぜたものだ。
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「んーと、おばあちゃん、育てたハーブでお仕事もしているよ」
意外そうに目を瞬かせるラルフに、アシュリンはリーリクルでロッティがどんなことをしていたかを教えた。
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