【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

文字の大きさ
上 下
99 / 116

パーティー当日。 1話

しおりを挟む
 ――そして、それからパーティーまでのあいだはとても忙しく過ごした。

 わたくしはマーセルに様々なことを教え込んだ。彼女は素直にそれを吸収し、身につけていった。よくがんばったと思うわ。

 召使学科で学んだことを彼女に話すと、不安そうに「私にできるでしょうか」と弱音を吐いたこともあったけれど、彼女は目標のためにがんばれる人だった。

 わたくしも魔術師学科の先生にあるお願いをして、了承していただいた。召使学科にいたことで遅れてしまった授業に、少し不安を抱えていたけれど……基礎ができれば応用ができる、とはよく言ったものね。

 基礎を叩きこんでくれた家庭教師に感謝する日がくるとは……

 授業の遅れはすぐに取り戻せそうで安心したわ。

 バタバタと慌ただしく過ごしていたけれど、パーティーまでのあいだにやるべきことはすべて終えたわ。あとは――レグルスさまとマティス殿下の一騎打ちが、どうなるか――……

「カミラさま、大丈夫ですか?」
「わたくしは平気よ。貴女あなたこそ、大丈夫なの?」
「平気です。……それにしても、私たちが一緒にいても、もう誰も関心がないようですね」

 あの日、マーセルと一緒に馬車から降りたときから、ずっとわたくしたちの仲がどうなったのかを好奇の目で見られていた。

 それは別に構わないの。残りの休日を使い、マーセルと二人きりで彼女に教え込み、魔術師学科のテストも無事にクリアした。ちなみにマーセルをいじめていた人たちは、彼女の後ろにわたくしがいると気付くと、なにもしなくなったみたい。

 マティス殿下ではなく、わたくしがいることでいじめがなくなるなんて、変な話よね。

 とはいえ、召使学科にいるのは伯爵家までの令嬢や令息だから、さすがに王族と公爵家の令嬢を相手にするのは不利だと思ったのかもしれないわ。

「さて、それでは……行きましょうか、マーセル」
「はい、カミラさま」

 これから学園のパーティーが始まる。

 わたくしとマーセルはこれから、ともにパーティー会場にいく。きっといろんな人たちの目を引くことになるでしょう。

 マーセルのドレスの色はクリームイエロー。彼女の髪色にぴったりだと思う。

 一騎打ちがあるけれど、おそらくマティス殿下もお揃いの色で登場するはず。これは、事前にマーセルに頼んでいたこと。

 婚約者であるわたくしではなく、マーセルとお揃いの色の服を着て、彼女の隣に並ぶでしょう。

 きっと、とても絵になる光景だわ。

 わたくしのドレスは髪色と正反対のラピスラズリの色。アクセサリーもラピスラズリのネックレスとイヤリングを身につけている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

【完結】うちのお嬢様が婚約者の第2王子から溺愛されているのに真実の愛を求めて婚約破棄しそうです。

みやこ嬢
恋愛
★2024年2月21日余話追加更新 【2022年2月18日完結、全69話】 「わたくし、婚約破棄しようと思うの」 侯爵家令嬢のフィーリアは第2王子との婚約に不満がある様子。突然の婚約破棄発言の裏には様々な原因があった。 これは一時的な気の迷いか、それとも…… 高位貴族の結婚事情。 周りとの温度差。 婚約者とのすれ違い。 お嬢様の幸せを誰より願う専属メイドの2人が婚約破棄回避のために尽力する。 *** 2021年3月11日完結しました 2024年2月21日余話追加しました

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

処理中です...