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クロエの興味の対象。 2話
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「みんな元気そうね」
「平民たちは元気ですね。地方がどうなっているかはわかりませんが……」
「そう。地方の人たちも元気だと良いわね」
楽し気に走り回る子どもたち。それを見守っている親や兄弟。なにかを話している人たち。
知らなかった。こんなに笑顔で溢れている王都だったとは。
「陛下の努力のたまものですね」
「陛下というよりは、臣下の人たちでしょうか。有能な方々ががんばっていらっしゃいます」
肩をすくめて話すクロエに、わたくしは陛下の顔を思い出して小さく息を吐いた。
わたくしとマティス殿下の婚約を決めたのはお父さまと陛下。
なぜそんなことを決めたのかわからないけれど……そもそも、陛下はわたくしが本当の公爵令嬢ではないことを、ご存知なのかしら?
「雑貨はお好きですか?」
「雑貨? ……あまり、見たことがありません」
「それなら、女性が好きそうな雑貨店を見つけたので、行ってみませんか?」
「詳しいのですね……」
ブレンさまが自作のパンフレットを広げて、「ここなんですが」と教えてくれた。本当によくできている。彼は絵の才能もあるのよねぇ……とぼんやり思っていると、ぐっと腕を引かれた。
「きゃっ」
「すまない、人にぶつかりそうだったから」
腕を引いたのはレグルスさまだった。確かに人が多く行き交う王都。たくさんの人が歩いている。
こんなふうに庇われるのも初めてで、なんだか本当にわたくしとマティス殿下って、形だけの婚約者だったのね。
いや、そもそもこんなふうに彼と歩いたことさえないわ。『デート』なんてしたことないし、誘ったことも誘われたこともない。
ただ、パーティーで一緒に踊る……くらいの関係だもの。
……婚約者とは……?
「どうかした?」
「いえ、なんというか……振り返ってみて、やっぱり無理だな、と」
「それは……どういう意味?」
ひっそりと言葉を続けた。誰にも聞かれないように。
「マティス殿下とこんなふうに歩いたことがなかったので……やはりわたくしには、殿下との婚約は無理だな、と」
「……そうか。俺と婚約したら、たくさんデートしようね」
え? と目を丸くすると、レグルスさまは悪戯っぽく笑って、わたくしの腕から手を離した。
顔が熱いわ。赤くなっていそう。
冷まそうと思って、手の甲を頬に押し付けた。ぽん、とクロエがわたくしの肩に手を置いて、微笑む。
「行きましょう、雑貨店」
「え、ええ……そうね」
なんだかドキドキさせられているような気がする。
公爵令嬢ではないかもしれないわたくしに、どうしてそこまで優しくしてくれるの……?
「平民たちは元気ですね。地方がどうなっているかはわかりませんが……」
「そう。地方の人たちも元気だと良いわね」
楽し気に走り回る子どもたち。それを見守っている親や兄弟。なにかを話している人たち。
知らなかった。こんなに笑顔で溢れている王都だったとは。
「陛下の努力のたまものですね」
「陛下というよりは、臣下の人たちでしょうか。有能な方々ががんばっていらっしゃいます」
肩をすくめて話すクロエに、わたくしは陛下の顔を思い出して小さく息を吐いた。
わたくしとマティス殿下の婚約を決めたのはお父さまと陛下。
なぜそんなことを決めたのかわからないけれど……そもそも、陛下はわたくしが本当の公爵令嬢ではないことを、ご存知なのかしら?
「雑貨はお好きですか?」
「雑貨? ……あまり、見たことがありません」
「それなら、女性が好きそうな雑貨店を見つけたので、行ってみませんか?」
「詳しいのですね……」
ブレンさまが自作のパンフレットを広げて、「ここなんですが」と教えてくれた。本当によくできている。彼は絵の才能もあるのよねぇ……とぼんやり思っていると、ぐっと腕を引かれた。
「きゃっ」
「すまない、人にぶつかりそうだったから」
腕を引いたのはレグルスさまだった。確かに人が多く行き交う王都。たくさんの人が歩いている。
こんなふうに庇われるのも初めてで、なんだか本当にわたくしとマティス殿下って、形だけの婚約者だったのね。
いや、そもそもこんなふうに彼と歩いたことさえないわ。『デート』なんてしたことないし、誘ったことも誘われたこともない。
ただ、パーティーで一緒に踊る……くらいの関係だもの。
……婚約者とは……?
「どうかした?」
「いえ、なんというか……振り返ってみて、やっぱり無理だな、と」
「それは……どういう意味?」
ひっそりと言葉を続けた。誰にも聞かれないように。
「マティス殿下とこんなふうに歩いたことがなかったので……やはりわたくしには、殿下との婚約は無理だな、と」
「……そうか。俺と婚約したら、たくさんデートしようね」
え? と目を丸くすると、レグルスさまは悪戯っぽく笑って、わたくしの腕から手を離した。
顔が熱いわ。赤くなっていそう。
冷まそうと思って、手の甲を頬に押し付けた。ぽん、とクロエがわたくしの肩に手を置いて、微笑む。
「行きましょう、雑貨店」
「え、ええ……そうね」
なんだかドキドキさせられているような気がする。
公爵令嬢ではないかもしれないわたくしに、どうしてそこまで優しくしてくれるの……?
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