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知りたくなかった真実。 2話
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そんなわたくしを、レグルスさまがそっと抱きしめる。そして、慰めるようにぽんぽんと優しく背中を叩く。
マティス殿下と同じ動きなのに、どうして、こんなにも――……温かさを感じるのだろう。
「俺が認める。俺が、きみのことを愛する。――それでは、足りない?」
そっと身体を離して、レグルスさまはわたくしを見た。じっと見つめられて、歪んだ視界がさらに歪む。
手を伸ばしてわたくしの目元の涙を拭い、そっと頬に触れた。
「俺がきみに惹かれたのは、公爵令嬢だからではない。真っ直ぐに背筋を伸ばして、己の道を切り開こうとする姿に惹かれたんだ。だからどうか――俺がきみを愛することを、許してほしい」
「――……わたくし、地に落ちますのよ?」
「……きみは、どうなりたい?」
わたくしが、どうなりたいか? ……わたくしの、本当の願い。ぎゅっと胸元で拳を握りしめて願うのは――……
「愛されたい……!」
ずっと、ずっと……家族からの愛も、婚約者からの愛も感じたことがなかった。
ただの便利な道具のようなもので、いてもいなくても、誰も困らない存在。それがわたくしだった。ポロポロと涙を流しながら、そう懇願する。
「ずっと、ずっと……誰かに愛されたかったの……ッ」
「約束する。俺がきみのことをずっと愛するって。ずっと傍にいるから……いつか、俺のことも愛して?」
物心ついたときから、家族はわたくしに冷たかった。一人だけ、公爵家の顔じゃないと言われ続けてきた。髪色も、面立ちも、瞳の色も……どこを見ても、公爵家の人間ではない、と。
両親に会うことも、兄に会うことも少なかった。兄は、わたくしのことを汚らわしいものを見るような目で、いつも睨んでいた。優しくしてくれたのは、侍女だけ。
家族ではないから、そういう扱いを受けていたの?
もしも、もしも本来のマーセルとして、男爵家で育っていたら、わたくしは家族に愛されていたの?
「……わたくしを、望んでくださるの?」
「そう言っているだろう? カミラ嬢なら大歓迎だ。それに、リンブルグは良い国だよ。暖かいし、食べ物は美味しいし、俺の両親はきっときみのことを気に入って可愛がると思う。妃になるということは、俺と一緒に国を背負ってもらうことになるけどね」
もう一度ハンカチでわたくしの目元を拭い、レグルスさまは立ち上がった。
すっとわたくしに手を差し伸べるのを見て、震える手で彼の手を取り、立ち上がる。
「取り乱してしまい、申し訳ありません」
「いいや。可愛い姿が見られたよ。次に泣くときは、カミラ嬢の姿で……うれし涙なことを願おう」
「ふふ、なんですか、それは」
明るい口調のレグルスさまに、わたくしの心が楽になったような気がする。手を離して、彼に頭を下げてから顔を上げて微笑む。
「わたくしを望んでくださってありがとうございます。『カミラ』に戻ったあと、あなたのもとへ参ります」
わたくしの言葉に、レグルスさまは嬉しそうに破顔した。
マティス殿下と同じ動きなのに、どうして、こんなにも――……温かさを感じるのだろう。
「俺が認める。俺が、きみのことを愛する。――それでは、足りない?」
そっと身体を離して、レグルスさまはわたくしを見た。じっと見つめられて、歪んだ視界がさらに歪む。
手を伸ばしてわたくしの目元の涙を拭い、そっと頬に触れた。
「俺がきみに惹かれたのは、公爵令嬢だからではない。真っ直ぐに背筋を伸ばして、己の道を切り開こうとする姿に惹かれたんだ。だからどうか――俺がきみを愛することを、許してほしい」
「――……わたくし、地に落ちますのよ?」
「……きみは、どうなりたい?」
わたくしが、どうなりたいか? ……わたくしの、本当の願い。ぎゅっと胸元で拳を握りしめて願うのは――……
「愛されたい……!」
ずっと、ずっと……家族からの愛も、婚約者からの愛も感じたことがなかった。
ただの便利な道具のようなもので、いてもいなくても、誰も困らない存在。それがわたくしだった。ポロポロと涙を流しながら、そう懇願する。
「ずっと、ずっと……誰かに愛されたかったの……ッ」
「約束する。俺がきみのことをずっと愛するって。ずっと傍にいるから……いつか、俺のことも愛して?」
物心ついたときから、家族はわたくしに冷たかった。一人だけ、公爵家の顔じゃないと言われ続けてきた。髪色も、面立ちも、瞳の色も……どこを見ても、公爵家の人間ではない、と。
両親に会うことも、兄に会うことも少なかった。兄は、わたくしのことを汚らわしいものを見るような目で、いつも睨んでいた。優しくしてくれたのは、侍女だけ。
家族ではないから、そういう扱いを受けていたの?
もしも、もしも本来のマーセルとして、男爵家で育っていたら、わたくしは家族に愛されていたの?
「……わたくしを、望んでくださるの?」
「そう言っているだろう? カミラ嬢なら大歓迎だ。それに、リンブルグは良い国だよ。暖かいし、食べ物は美味しいし、俺の両親はきっときみのことを気に入って可愛がると思う。妃になるということは、俺と一緒に国を背負ってもらうことになるけどね」
もう一度ハンカチでわたくしの目元を拭い、レグルスさまは立ち上がった。
すっとわたくしに手を差し伸べるのを見て、震える手で彼の手を取り、立ち上がる。
「取り乱してしまい、申し訳ありません」
「いいや。可愛い姿が見られたよ。次に泣くときは、カミラ嬢の姿で……うれし涙なことを願おう」
「ふふ、なんですか、それは」
明るい口調のレグルスさまに、わたくしの心が楽になったような気がする。手を離して、彼に頭を下げてから顔を上げて微笑む。
「わたくしを望んでくださってありがとうございます。『カミラ』に戻ったあと、あなたのもとへ参ります」
わたくしの言葉に、レグルスさまは嬉しそうに破顔した。
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