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いったい、なにをしたの……? 2話

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「きゃぁあああっ!」
「いやぁぁああっ!」

 そんな声が教室中に響き渡り、その騒ぎを聞きつけた先生たちが「なんの騒ぎですか!?」と教室に入ってきた。そして、顔が真っ黒に塗りつぶされた令嬢や、馬鹿だのブスだの罵詈雑言ばりぞうごんが顔に書かれた令嬢が先生に泣きつく。

「レグルスさま、いったいなにをしたんですか?」
「おいおい、先生。彼女たちは身から出たさびだぜ? 俺はただ、このテキストやノートをきれいにしてやっただけ」

 テキストとノートを手にして振る姿を見て、先生たちは困惑したように顔を見合わせていた。

「どうだい、呪いが返ってきた気分は。あまりおいたが過ぎると、身を滅ぼすぜ?」
「……もしかして、テキストやノートに嫌がらせをした人に、返しましたの?」
「そういうこと。今度また汚れたら俺に教えてくれよ。今度はきつめに返すから」
「……そうならないことを、祈るわ」

 難なくやってみせたけど、レグルスさまのやったことは人間離れしているわね……。先生たちが令嬢を慰めているあいだに、わたくしはきれいになったテキストやノートを鞄にしまって教室から出る。

「マーセルさん!」
「なんでしょうか、先生」
「あの、その……、大丈夫、ですか……?」

 なにについて聞いているのかしら、この先生。

 もしかして『マーセル』が嫌がらせを受けていることに、今気付いたの? ……いえ、もしかしたら、前から気付いていた可能性もあるわよね。
 ……先生たちの考えていることがわからないわ。

「――ごきげんよう、先生。わたくし、用事があるので失礼しますわね。行きましょう、レグルスさま」
「もう少し、頼りがいのある先生になってほしいところだな」

 ぽつりと彼がつぶやいた。心の中で、わたくしも賛同する。並んで歩く彼に視線を向けると、ぱちっと視線が交わった。そして、「災難だったなぁ」と声をかけられた。

「そうね」
「他人事のように聞こえるなぁ」
「それは、もう少しすればわかると思いますわ」

 くすりと笑みを浮かべてみせると、彼は小さくうなずいた。屋上へ足を進め、クロエを待った。屋上はあまり人がこないから、待ち合わせにぴったりだと思うわ。

「すみません、お待たせしました」

 クロエにも、昼休みに『放課後、屋上で』と伝えていたから、ここまで来てくれた。

 わたくし、レグルスさま、クロエの三人を囲うように魔法を発動させた。念には念を、とよく言うでしょう? この魔法は防音の効果がある魔法だ。内緒話をするのに、ぴったりなのよね。

「さて、レグルスさま。わたくしに興味がありまして?」
「……ああ。きみの身体と、魂が釣り合っていないように見えたから」

 ――この人、そういうことも見えるのね。クロエが息をんでわたくしを見た。わたくしは彼女に向けて微笑みを浮かべ、レグルスさまを真っ直ぐに見据えて口を開く。

「階段から落ちた『マーセル』とぶつかったら、中身が入れ替わってしまったの」
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