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3章:紹介の儀
紹介の儀 その後 4-1
しおりを挟む「……それ、本当の話なの……?」
青ざめた表情でアナベルが聞くと、メイドは小さくうなずいた。
「私も最初に聞いた時は自分の耳を疑いました……。ですが、王妃殿下のメイドたちがころころと入れ替わっているのは事実です」
「そう……、そうなのね……。これは……、確かめてみるしか、ないわよね……」
ぐっと拳を握って真剣な目でそう呟くアナベルに、メイドたちは自分の手を重ねた。
「……我々も協力します。お力になれることがあれば、何でも仰ってください」
「……ありがとう。それじゃあまずは、紙とペンを用意してくれる?」
アナベルの言葉に、彼女たちは目を丸くし、それから「すぐにお持ちします!」とパタパタと出ていった。傍に残ったのは年長のメイドだけ。
「……王女殿下と争うのですね」
「まずは、いろいろな証拠集めからしないといけないわねぇ……」
肩をすくめるアナベルに、「本当に無理は禁物ですよ?」と心配するような声色で注意するメイドに、アナベルは「うん」と返事をした。
舞踏会のテーマも決まっていない。やることは山積みだ。
「……ここで働いていて、あなたたちの身は大丈夫?」
気になることを口にすると、メイドは「はい」と断言した。
「王妃殿下が危害を加えるなら、外ではなく中の者です。あそこでは、王妃殿下が無茶を言っても許されますが、ここは陛下が管轄しておりますから、手が出せないのです」
アナベルは首を傾げる。では、どうやってイレインは寵姫たちを亡き者にしたのだろうか、と。
「……宮殿に住んでいた寵姫たちは、王妃殿下の主催するお茶会の帰りに……。それも、わざわざホテルを貸し切って行ったお茶会ですので、寵姫たちは街で倒れ、金目の物は盗まれ散々な姿で発見されたと聞いております」
「……やることがえげつないわね……」
イヤそうに眉間に皺を刻むアナベルに、メイドは「本当に」と同意した。
そんな会話をしていると、ペンと紙とインクを持ったメイドたちが戻ってきた。
アナベルは静かにベッドから降りる。
(――大丈夫、動ける)
とはいえ、歩くのにかなり時間が掛かってしまうが、なんとか歩き出す。
「ありがとう。ちょっと椅子とテーブルを借りるわね」
椅子に座り、紙を広げた。インクの蓋を開け、ペン先をつける。
「――とりあえず、情報を整理しましょう。王妃イレインの噂話をなんでも良いから話してちょうだい」
「かしこまりました、アナベル様」
メイドたちも椅子に座らせ、アナベルは彼女たちから聞いた話を書きこんでいく。
「……そういえば、アナベル様はどこで字を習ったのですか?」
「ミシェルさんたちが教えてくれたの。文字が読めるのと書けるのでは世界が違うのよって」
当時を思い出して、アナベルの心がほんのりと温かくなった。大切なミシェルとの記憶だ。
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