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2章:寵姫になるために
寵姫になるために 4-1
しおりを挟むそしてそれからは慌ただしかった。クレマンたちを探し出し、パーティーの余興を依頼し、アナベルの剣舞に合わせた衣装を用意し、……と。
バタバタと過ごしていたが、準備が整っていくにつれてアナベルの気分は高揚して来た。
――家族や村人たちの復讐が出来る――……。
そう考えて、アナベルは目元をすぅっと細めた。そして頬に手を添える。――パーティーは明日だ。
ダヴィドに『ゆっくり休んで』と言われた。部屋はたくさんあるから、好きな部屋を使ってよいと言われて、アナベルはありがたく、その提案を受けた。
宿屋に泊まろうとしていたクレマンたちも、このデュナン邸で泊まることになり、あまりにも早い再会にクレマンはもちろん、アドリーヌも「あらぁ?」と笑っていた。
「本当にあたしと同じ部屋で良かったのぉ?」
ふわふわと柔らかいベッドの上で、ごろんと寝転びながらアドリーヌが尋ねた。
「え、どうして?」
「だぁって、陛下と一緒のほうがいいんじゃないかしらぁ? って」
「陛下は今、王城に戻っているそうよ? 明日パーティーのサプライズゲストってことにしたいみたいだから」
「ふぅん、そうなのぉ? まあ、そっちのほうがドラマチックよねぇ。見初められたのは間違いじゃないんだしぃ~……」
キラキラと目を輝かせるアドリーヌに、アナベルは小さく笑った。
アドリーヌの言葉が、アナベルの気持ちを落ち着かせるためだと考えて、アナベルは彼女の寝転んでいるベッドに座った。
顔を上げるアドリーヌに、アナベルは彼女と視線を合わせた。
「みんなと一緒にいられるのは嬉しいわ。だって、これからは会えなくなるでしょう?」
「そうねぇ、あたしだって嬉しいわよぉ? アナベルと一緒にいられるのは。でもねぇ、ここにあたしがいたら、お邪魔虫じゃないかしらって思ったのよねぇ」
うつ伏せの状態でパタパタと両足を動かすアドリーヌにアナベルは小さく首を横に振った。
「陛下とはこれからたーーーーっくさん、いられるもの。それに、明日が本番だから、ちょっと緊張しているの」
アドリーヌはむくりと起き上がり、アナベルの頬に両手を添えた。そして、こつんと額と額を当てる。
「大丈夫よぉ。アナベルなら……あなた、本番にはものすっごく! 強いんだからぁ」
そう言って笑うアドリーヌ。彼女の紅の瞳がアナベルを映す。アナベルは緊張のためか冷えた手をアドリーヌの手に重ねた。
「……ありがとう、アドリーヌさん」
「うふふ、こちらこそ。こんなに良い部屋で寝泊まり出来るなんて幸せだわぁ」
弾むような声に、アナベルはふふっと表情を緩ませた。
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