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秋のごちそう
栗拾い 1話
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――とある晴れの休日。
恵子、美咲、芽衣は山に来ていた。
「栗いっぱい落ちてるー!」
きゃあきゃあとはしゃぐのは芽衣だ。山栗が落ちている場所は、熊谷家の山で、「栗拾いに行きませんか?」と美咲が恵子を誘ったのだ。
「本当に私も良いの?」
「はい。これだけあると、うちだけでは消費できないし……熊に気をつけて、栗拾いしましょう!」
熊除けの鈴はしっかりと持っているし、歩くたびに鳴るので芽衣が楽しそうに走り回っている。
「栗ちっちゃーい!」
「芽衣がよく見ているのは里の栗だろうからねぇ。でもね、このちっちゃい栗の中に旨味がぎゅーっと詰まっていて美味しいんだよ」
「そうそう。今度食べ比べしてみましょ」
栗を拾った芽衣が、見てみて! とばかりに両手に栗を乗せて美咲に見せる。その様子を微笑ましそうに恵子が眺め、美咲は芽衣の頭に手を伸ばしてくしゃりと撫でた。
「たっぷり採ってたっぷり食べようー!」
「山栗は貴重だから、うれしいわぁ」
山栗は熊の好物でもある。幸い、今のところ食べられてはいないようだが、いつ現れるかわからないので素早く栗を拾っていく。
芽衣は美咲が靴を使ってイガを開いたのを見て、真似してみたがなかなかうまくいかないようでむぅっと頬を膨らませていた。
その様子に気付いて、美咲が芽衣に栗のイガをどうやって開くのかを教えているのを眺めながら、恵子はひょいひょいと栗を拾っていく。
里の栗の三分の一ほどの大きさだが、とにかく味が良い。ただし、小さいだけあって、鬼皮を剥くのも渋皮を剥くのも苦労するのだが、その分余計美味しく感じるのかもしれない。
(……栗まんじゅうでも作ろうかね)
恵子の作る栗まんじゅうの中身は、茹でて鬼皮ごと包丁で真っ二つにし、スプーンで栗の中身をくり抜いたものだ。これにあんこを混ぜる人もいるが、恵子が育った地域では栗だけだったので、今でも栗だけのまんじゅうを作ってしまう。
(勇さんにも結構好評だったのよね)
毎年彼岸の時期になれば作っていたまんじゅうを思い出して、小さく笑う。
五キロの小麦粉をほとんど使うので、大量のまんじゅうが出来上がるが、冷凍できるので便利でもあるのだ。
小腹が空いたときや、まんじゅうが食べたいときに。
(……とはいえ、今の子っておまんじゅう、食べるのかしら?)
こればかりは好みだ。恵子の子どもにだって、まんじゅうを好まない子もいた。
逆にそれを好む子もいるので、人それぞれだ。
「そういえば、どうして急に栗拾い? ありがたいけれど」
「いやー、この前行ったときにね、久しぶりに栗拾いしたら楽しくて! それに、今の気候ならけーこばあばも芽衣も歩きやすいかなって」
夏が過ぎたのでだいぶ楽にはなったが、最近の暑さで少しバテていたことがバレていたようだ。そのことに気付いて、恵子は眉を下げる。
「確かにこのくらいの気温なら、歩きやすいねぇ」
日が高くなればどうかわからないが、午前中はだいぶ涼しくなってきた。
恵子、美咲、芽衣は山に来ていた。
「栗いっぱい落ちてるー!」
きゃあきゃあとはしゃぐのは芽衣だ。山栗が落ちている場所は、熊谷家の山で、「栗拾いに行きませんか?」と美咲が恵子を誘ったのだ。
「本当に私も良いの?」
「はい。これだけあると、うちだけでは消費できないし……熊に気をつけて、栗拾いしましょう!」
熊除けの鈴はしっかりと持っているし、歩くたびに鳴るので芽衣が楽しそうに走り回っている。
「栗ちっちゃーい!」
「芽衣がよく見ているのは里の栗だろうからねぇ。でもね、このちっちゃい栗の中に旨味がぎゅーっと詰まっていて美味しいんだよ」
「そうそう。今度食べ比べしてみましょ」
栗を拾った芽衣が、見てみて! とばかりに両手に栗を乗せて美咲に見せる。その様子を微笑ましそうに恵子が眺め、美咲は芽衣の頭に手を伸ばしてくしゃりと撫でた。
「たっぷり採ってたっぷり食べようー!」
「山栗は貴重だから、うれしいわぁ」
山栗は熊の好物でもある。幸い、今のところ食べられてはいないようだが、いつ現れるかわからないので素早く栗を拾っていく。
芽衣は美咲が靴を使ってイガを開いたのを見て、真似してみたがなかなかうまくいかないようでむぅっと頬を膨らませていた。
その様子に気付いて、美咲が芽衣に栗のイガをどうやって開くのかを教えているのを眺めながら、恵子はひょいひょいと栗を拾っていく。
里の栗の三分の一ほどの大きさだが、とにかく味が良い。ただし、小さいだけあって、鬼皮を剥くのも渋皮を剥くのも苦労するのだが、その分余計美味しく感じるのかもしれない。
(……栗まんじゅうでも作ろうかね)
恵子の作る栗まんじゅうの中身は、茹でて鬼皮ごと包丁で真っ二つにし、スプーンで栗の中身をくり抜いたものだ。これにあんこを混ぜる人もいるが、恵子が育った地域では栗だけだったので、今でも栗だけのまんじゅうを作ってしまう。
(勇さんにも結構好評だったのよね)
毎年彼岸の時期になれば作っていたまんじゅうを思い出して、小さく笑う。
五キロの小麦粉をほとんど使うので、大量のまんじゅうが出来上がるが、冷凍できるので便利でもあるのだ。
小腹が空いたときや、まんじゅうが食べたいときに。
(……とはいえ、今の子っておまんじゅう、食べるのかしら?)
こればかりは好みだ。恵子の子どもにだって、まんじゅうを好まない子もいた。
逆にそれを好む子もいるので、人それぞれだ。
「そういえば、どうして急に栗拾い? ありがたいけれど」
「いやー、この前行ったときにね、久しぶりに栗拾いしたら楽しくて! それに、今の気候ならけーこばあばも芽衣も歩きやすいかなって」
夏が過ぎたのでだいぶ楽にはなったが、最近の暑さで少しバテていたことがバレていたようだ。そのことに気付いて、恵子は眉を下げる。
「確かにこのくらいの気温なら、歩きやすいねぇ」
日が高くなればどうかわからないが、午前中はだいぶ涼しくなってきた。
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