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君だけでも。

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 がらがら。

 ぴたっと、静まり返って嫌な視線を浴びながら教室にはいる。
 必ずいつも何か書かれる私の机。今日は「死ね」「消えろ」とオーソドックスな言葉だ。
 これが、私の日常。
 これが、当たり前。
 これが始まったのは数ヶ月前。
 ただただ女子のボスと意見が別れただけ。
 今思えばホントくだらない。高校生にもなって。
 そんな理不尽な理由だけど、いじめ系を題材にした漫画のような救世主が現れるわけでもなく、だらだらとこの生活を過ごしてた。
 ただ、そんな漫画と同じような事もある。
 被害者が助けを求めないこと。 
 理由は対人恐怖症だとか、誰に助けを求めても無駄、とかそんな複雑なことじゃない。
 ただただ面倒臭いだけ。
 他の生徒は自分が巻き込まれたくない、先生達は仕事めんどうごとを嫌う。
 だったら相談したり、助けを求めたりするのは向こうからしたら鬱陶しい訳であって、こちらとしてもそんな目を向けられるのも怠い訳であって。
 そんな私を悲劇のヒロインだとか見下す奴は勝手にしとけばいい。
 だけどこっち側になってみ。
 あぁ、確かに怠いわ、って思うから。
 なんてことを考えていてもとりあえず机の落書きは消しとく。
 油性マジックでいつも書かれるのは分かってるから常備しておいてる、油性マジック用の濡れティッシュでふく。
 そんで、ゴミ箱に捨てる。
 あ、私の教科書。
 隣にあったゴミ箱の中身に気付く。
 なんだ今日は資源ごみの箱にはいってんじゃん。
 汚れずにすんだ。ラッキー。
 燃やすごみとかだと汚れて面倒だから嫌なんだよね。
 そんなこんなで朝の日課は終わる。
 チャイムが鳴ってホームルームが始まると皆席に着く。
 先生たちもわかってるけどクラスの奴達はとりあえずここホームルームと授業中は静かに良い子でいる。
 私をいじめてるのを知らんぷりするのは生徒と先生の間の暗黙の了解。
 まぁそのお陰で楽だからいいんだけど。
 ホームルームは基本自習。
 筆箱はずっと持ってるしノート類は教室移動の時も必ず最後に出るからとりあえずは無事。
 教科書は重いから後ろのロッカーに入れてる。
 だからたまに犠牲になるけど。
 まぁ被害は最小限な訳だし、普通のいじめより物がなくなんなくていい。
 そこは私の運と対策に感謝だ。
 キーンコーンカーンコーン。
 終わりのチャイムが鳴る。
 ホームルームの十五分なんて早いものであって、なんか考え事をしてればすぐ終わる。
 先生の号令、っていう合図で今日の日直が起立と言って皆立つ。
 その後四十二人の声が重なる。
 終わったら着席、と日直が言う。
 それで皆席に着く。
 その後日直は連絡事項を伝えて、朝学活は終わる。
 朝学活はほんの五分だからまたまたチャイムが鳴る。
 一限目までの休み時間を知らせる。
 生徒が一斉に席から立つ。
 まではまあまあいつも通りで変わらない日常だった。
 ただ、休み時間に入った瞬間、いじめの元凶がこっちにきた。
 「あ、元凶だ。」
 私は思ったことをすぐ口に出してしまった。
 当然、元凶は私に言う。
 「元凶はあんた自身でしょう?(笑)」
 「あんたが意見を出すのははオーケーで私が意見を出すのが駄目ならあんたの中の人権っていう概念はどうなってんの」
 「はぁ?身分わきまえろよ!!」
 流石に声が大きかったからクラスの皆がこっちに注目する。
 くだらな。
 「身分だとか、カーストだとか古くさい考え捨ててみたら?ここは鎌倉時代でもなければ昔のインドでもないよ。どんだけ地位に取り付かれてんのさ。面倒臭くない?」
 「はぁ?!あんたたち!!」
 漫画でもありがちな合図で元凶の金魚の糞たちが私を窓側に追い詰める。
 「あんた状況分かってんの?」
 「ん?あぁ、確かに窓も空いてるし四階だし、危ないね」
 「やめろのよ、桐先。」
 お、ここにきて救世主ご登場?なわけないな。
 大方、目の前で万が一私が落とされでもしたら共犯扱いされるのが嫌なんだろう。
 「なに?ヒーロー気分?」
 「嫌、そうじゃなくてそれ以上はシャレになんねぇだろって事。」
 「あぁ。」
 不機嫌そうに答えてたが、今止めてきた男子は辻村といって桐先 優の好きな人だからあまり強く言えなかったんだろう。
 簡単な奴だ。
 それで桐先は少し私を押さえつけてた手を緩めた。だから万が一の事態は逃れると思ってた。
 ただ、桐先が手を緩めたと同時に私も窓の縁を掴んでた手を緩めてしまった。
 そしてバランスを崩して窓から落下。
 その時、辻村が私の手を掴もうとしたが少し遅く辻村も一緒に落ちてしまった。
 私はその時、怠、と思っただけだった。
 朝の教室に悲鳴が響いた。
 
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